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侵略者は突然に]




それは突然だった。

侵略者は突然に現れて全てをめちゃくちゃにして―………。





「そんなの…悲しいだろ…?」

津軽が目を覚まし、暴走の原因を聞いた時は津軽を苦しめたその『怒』でいっぱいだった。でも今俺の中にある感情は『哀』だ。ぽろぽろと涙がこぼれる。
こいつは津軽を苦しめた奴なのに。
こいつは俺らで遊んでいたのに。
でもこいつは淋しい奴なんだ。

「覚えて貰いたいから傷付けるなんて…哀しいだけじゃないか…」
「リンダ…」

聞こえてきたダイ羅との会話。
こいつにはこいつなりの理由があった。確かにダメな事には変わりないし怒っていいことだ。
でも俺の中に浮かぶのは『怒』より『哀』で、感情が決壊したようにボロボロ涙が零れ落ちる。それに見兼ねた津軽が俺を抱きしめ慰めてくれる。
大丈夫だと頭を撫でる手を振り払い袖で涙を拭い、日々也を見る。
顔はサイケと同じ作りなのに、その瞳に浮かぶ感情は『淋』だ。

「君に俺の何が判ると言うのですか。」
「何にも判んねぇよ。俺はサイケや学天と違って演算能力に特化してねぇしツパチンやダイ羅達みたいに大人でもない。だから理解しようとして、俺なりに考えたらそれはすげぇ哀しいことじゃねーか。」

初期のプロトタイプみたいなモノである俺と津軽には基本的なモノしかない。唄う事だけを目的とされ創られた俺達は正反対に感情の起伏だけが他のロイド達より豊かなだけだ。
だから皆より馬鹿だし不器用。だから俺は理解するのが苦手。だから俺は俺なりに考えるんだ。

「それは結局何一つ解決してない。忘れられるのが嫌。独りぼっちになるのが嫌。だから思い出して貰う。忘れられないように。思い出を刻み込む。俺も嫌だ。忘れられるのも独りぼっちになるのも嫌、嫌だ。辛いし淋しい。」
「…支離滅裂ですよっ。」
「そんなの言われ無くても分かってるよ。俺は馬鹿なんだ。」

感情が高ぶり過ぎて言いたいことが上手く纏まらない。思い付いた事から言葉にしていくので精一杯だ。
俺なりに考えたんだ。
もし津軽やサイケ…学天に皆に忘れられた日を。独りぼっちになった俺を。淋しい辛い哀しい忘れないで思い出して。
独りは嫌だ。
思い出し止まる事のない涙が更に零れていく。

「だから覚えて貰いたいって言うのは判る。覚えて貰うように行動するのも。」
「なら何が悲しいと…」
「でもお前のやり方は結局独りぼっちじゃねぇか。傷付けて恨まれて憎まれて…確かに相手に深い印象を植え付ける。でも傍から結局は離れていっちまうじゃねぇか。」

歪み続ける視界の中で日々也の表情が暗くなった。
俯く日々也に近付き手を取るとはっと顔を上げるそいつに頑張って笑う。
傍でダイ羅が危ないとか津軽が離れろと言っているが気にするもんか。

「忘れられたくないなら嫌な記憶で縛るより楽しい記憶にしようぜ?そうしたらずっとずっと傍に居てくれる。独りぼっちじゃない。」
「楽しい記憶があっても結局は忘れられました…消えてしまったのです!なら、今度は今度こそは…」
「それで傷付けて支配して……お前は満足なのか?」
「は…満足だからそうして」
「違うな。だってお前今辛そうだ。俺もそれは悲しい。なぁ、忘れられたらそれで終わりなのか?」

記憶(想い出)は確かに大切なものだ。だから大事にするし時に語り浸り合う。繋がりというものだろう。
忘れられたら終わりかもしれない。でもそうじゃないかもしれない。
一からやり直す事は哀しくて淋しいけど、終わりだけじゃないはずだ。
一度出会い仲良くなったなら何度でも仲良くなれる。
違うか?なぁ、そこにいるデリック。
ずっと日々也を見守り続けるデリックを見る。こいつだけが日々也の味方だ。だから日々也はこいつのことを言ってる。

「お前は忘れられた奴とはもう縁を切られたのか?お前は今独りぼっちなのか?」
「………」

日々也はちらりとデリックを見て首を振る。
だよな、だってこいつ、お前のこと心配してたからな。

「なら、さ。お前の考え捨てろよ。繋がりたいなら支配とか傷じゃなく、絆とか想い出とか…楽しいもんにしようぜ!」
「…もう……遅いです、よ。俺は…君達に酷いことをしたんですよ…?」
「うし、なら今までの事は水に流す。……いいだろー?」

日々也の意見が変わった事が判ると嬉しくなって涙もいつの間にか止まっていた。我ながら相変わらず単純だと思いながらパンっと両手を叩いて皆を振り返る。
同意を願う様に見詰めると皆肩を竦め口々に「リンダがいうなら」と納得してくれた。俺って愛されてる?
今回一番の被害を被った津軽を見遣るとため息をつかれた。そして近付いてくると日々也の前に立ち、

「一発殴らせろ。」

と返事を聞く前に日々也を殴り飛ばした。
津軽…それ聞く意味なくね?
しかしそれ以降は俺を後ろから抱きしめ大人しい。本当にあれで済ませる様だ。

「…リンダに免じて許すが……今度泣かせたら殺す(壊す)。」
「あーそれは俺も。ここでの最大の禁忌(タブー)はね。『リンダを泣かすこと』だからね。泣かせたら今度こそアンインストールしてあげる!」
「僕もリンダを泣かせる人には手加減しませんからね?」
「学天くん、本気で俺を壊そうとしてたもんねえ。」
「サイケさんがあの人を庇うからですよ。」

津軽の言葉にサイケ、学天と賛同していく。
つか、え、いつからそんな掟みたいなん出来たの?
サイケの言っている事に目を丸くしていると周りが何か納得していた。
知らないの俺だけ?…ところでどうしてサイケは黒い紐みたいなので簀巻きにされているんだ?日々也に気を取られてて今気付いた。

「…皆さん……本当バカなんですね。頭悪いんですか?」

サイケを見ながら首を傾げていると吹き飛ばされた日々也が戻ってきた。
いやいや、皆許すってのにその態度はなくね?
聞こえた呟きに日々也を見ると凄く柔らかな笑顔で幸せそうで一瞬言葉を飲み込んだ。そしてフォローするようにデリックが「照れてんだ。」と耳打ちで教えてくれた。
素直じゃねーの。
そう思いながら笑みを零していると手を取られ何だと見ると日々也が笑っていた。

「ねえ、リンダ。俺の妃になりません?」

突然の申し込みに俺は津軽がいるから、と断る前に後ろから抱き着いていた津軽に本日二度目のパンチを貰っていた。
サイケの傍に転がった日々也に彼は「抜け掛け禁止だよー?」と笑っている。
抜け掛け以前に俺は津軽がいるからなー?

「さて…」
「?」

飛ばされた日々也を今度はデリックが心配そうに駆け付け、サイケの言葉に学天が突っ込んでいたりダイ羅とルージュが二人の世界に入りかけルージュさんに拒まれていたり時かけとツパチンがいつもと変わらない風景に苦笑や苦悶しているのに笑みを零し、振り返る。
背中から伝わる確かな温もりに幸せを感じながら俺は津軽にキスをした。




津軽が、日常が戻ってきて良かった。


新しい友達も増えて…これからも俺は『喜』と『楽』が増えて行くのを願う。







【侵略者は突然に  
    達になった】











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終わりました!【侵略者は突然に】本編が。このあと書きたいところ抜粋で後日談があったり過去話があったりそんな感じでまた書きたいなぁ。
サイケと学天の第一次天使大戦争とか津軽とリンダの馴れ初めとか時かけと罪歌の出会いとかツパチンと学天のセキュリティコンビとか…さーせん、後半に行くにつれその場の思いつきっす。
何故か連載したこの話を読んでくださりありがとうございます!その場のノリで後先考えず書いてるから……うん、色々終わりに近づくにつれ無茶苦茶してるけど気にしたら負けなんだ。盛大に笑ってやってくれ。




あきゅろす。
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