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鍋奉行の御成り(臨正)




忘れ物を取りに臨也さんの家に訪れた俺は、目も当てられない程悲惨な光景を目にした。
視界に入れば思わず涙が出て来てしまうほど。

「臨也……さ、ん……」
「ねえ、何、その憐れむ様な目は……ってなんで泣いてるの?なんで『大丈夫』って言うような目で肩を叩くのさ?!」

臨也さんがぼっち鍋してました。


♂♀



「臨也さんお肉お肉ー。」
「はいはい…ってさ。どうして当たり前の様に食べているの?」
「いや、流石に鍋のぼっちは哀しいものがあるので付き合いますよ。丁度お腹空いてたんで。」
「ただの腹ごしらえだよね?」
「そうともいいます。」
「そうとしか言わないよ。まぁ、正臣君が珍しく一緒にご飯食べてくれるから良いけど。」

それから俺は当然の様にキッチンから椀と割り箸を拝借して臨也さんの隣に座る。
丁度鍋が食べたくなって波江さんに作ってもらって一人で食べていたとかなんとか…。てっきり俺は5月のことをまだ根に持っているのかと思ったよ。
まぁ、どうでもいいか。普通じゃ食えない高級な肉とかただで食えるんだし。
ちなみに今日はすき焼きだ。お肉が少なくなったから臨也さんに入れてほしいとせがみながら臨也さんの文句を聞き流す。文句っても口だけだし、寧ろなんか喜んでるからいいかとも思う。
肉が食べごろになるまで野菜を食おうと鍋に箸を突っ込み何食べようかなと探っていると解されずに塊のまま入っている肉に気付く。よく見ると野菜も葉野菜と根野菜が一緒にタイミングで入れられたのか葉野菜はもう歯ごたえを感じないほど萎れている。そして鍋の端に味のしみ込んだ麺。

「臨也さん!うどんはシメでしょ!?何入れてるんすか!!」
「え、食べたかったら。」
「最後までには伸びちゃうじゃないですか!」
「…正臣君って鍋奉行?」
「いいからもううどんは最後ですからね!」
「はーい」
「あと、なんで人参ばかり残っているんすか?」

色んな具材がごった煮されている中でつやつやと残るオレンジ色。これは素朴な疑問として臨也さんに聞くと気まずそうに視線を逸らされた。
え、まさかと思うけれど…え?

「嫌いなんすか?」
「人参が食べれなくても死なないよ。」
「嫌いなんですね。」
「…」

ちょ、この完璧装ってるこの人が好き嫌い!?意外過ぎる!
拗ねたようにそっぽを向いた臨也さんについつい浮かんでくる悪戯心。
箸で人参を一つ摘まむと臨也さんの口元に持っていく。

「はい、あーん。」
「…どういうつもり?」
「俺が食べさせてあげるってことですよ。」
「全部?」
「?…まぁいいすけど。」

嫌そうに眉を潜め、珍しい表情を浮かべる臨也さんが楽しくて口元が緩む。もっと見たい。
浮かぶ悪戯心に気を取られていたせいかいつもなら感じ警戒するであろう違和感もスルーしていた。
深く考えずに臨也さんの言葉を了承するとさっきから浮かべていた焦りを含んだ嫌そうな顔がいつもの憎たらしい笑みに変わっている。

「なら、食べようかな。」
「へ?」

さっきまで嫌がっていたとは思えないほどすんなり人参に食いつく臨也さん。そのままペロッと平らげてしまう。

「ほら、次はー?」

え…何だよ…どういうこと?
あーんと口を開けて待機している臨也さん。
もしかして、もしかしなくても俺ははめられた?

「は、食えるんすか!?嫌いじゃないんですか!?」
「誰も嫌いだなんていってないよ?」

は め ら れ た!
それでも、このくらいなら仕方がないかと思ってしまう自分は結構重症なんだろうか。



【鍋奉行の御成り】




「正臣君、正臣君。」
「はいはい。今度はこれで。」

ねだってくる臨也さんが可愛いと思ってしまうなんて。うん、重症だ。

「ちょ、ネギ縦は無理無理!」






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初ちゃん誕生日おめでとう!
リクエストの臨正で鍋か料理の話ということで鍋奉行な正臣とか楽しくね?から出来上がった物。うん、正直僕にもよくわからない。
いつも通りの迷走っぷりですがよかったらもらってくださいな。書き直しも受け付けてるから!



あきゅろす。
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