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夫婦喧嘩は犬も食わぬ(静正)

パンッと渇いた音が60階通に響き渡った。道行く人は何事だというように足を止め音がした方へ自然と視線を向ける。将又、誰かが向ける視線に何事かと音に気付かなかった者も同じ様に視線を向けた。
彼等の視線を集める先に居たのは2人の男性。
片方はまだ高校生。来良学園の制服と私服を着合わせた茶髪の少年。
もう片方は池袋に住む人間ならもぐりじゃない以上知っているであろう、バーテン服にサングラスの男性。
…紀田正臣と平和島静雄の姿があった。正臣は何処か気が立っているのか興奮したように静雄を睨み、静雄は正臣に頬を殴られたままじっと正臣を見ている。
誰もが核心した。「あの少年は馬鹿だ」と、「殺されるな」と。
しかし傍観者の心配を余所に静雄からの動きはない。代わりに正臣が言葉を続ける。

「静雄さんの馬鹿!やっぱり俺より臨也さんなんですね!」

睨み、叫び、正臣の目尻にはうっすら涙が浮かんでいる。
何故こんなことになったかというと事態は数時間前へと遡る。

学校帰りの正臣は仕事中だった静雄に出くわした。仕事中だからと遠慮して挨拶だけでその場を去ろうとした正臣だったが静雄は気にするなと引き止めた。
それならばと久しぶりに会った恋人、正臣は冗談半分に「デートしましょう?」と声を掛けすんなりOKと返ってきた。
しかしそのデートの最中、静雄の殺したい程憎んでいる折原臨也と遭遇してしまったのだ。勿論怒りが先立った静雄は正臣を置いて臨也を追い掛けてしまう。残された正臣はただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
それから数十分後、今回も臨也を殺しそびれた静雄は正臣の事を思い出し合流するのだが…会って直ぐに頬に平手打ちを貰うのだった。

「いつも俺を置いて臨也さん、臨也さんって…本当は」

過去に何度も合ったのだろう。興奮仕切った正臣は自分が何を言っているか半分ほども理解していない。
そっと、いや、いきなり伸びてきた手に肩を掴まれ引き寄せられた所で正臣はやっと自分が何を言っていたのかと理解し、子供じみた我が儘にも似たそれに相手が呆れてしまっただろうと今度は別の意味で泣きたくなった。
華奢ではあるが小柄とは言い難い正臣だが、静雄にとっては小柄で、そんな正臣はすっぽりと静雄の腕の中に収まっていた。強く強く、下手をすればこのまま抱き潰されてしまうかというほど強く抱きしめられ正臣は小さく苦しげな表情を見せたが横目に見える静雄の不安と後悔などが入り混じる表情を見ては直ぐにそれを隠した。

「すまねぇー…。」
「…俺も、すみません。でも置いて行かないで下さい。」

そっと腕を背中に回し正臣は抱き着き目を閉じた。
分かったと返事をするように口づけ、離れ、そしてまた深く口づけた。
いつの間にか野次馬は散っており、通りで彼らの姿を見守る者は一部を覗き誰もいなかった。






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大通りでバカップルな二人ということで痴話喧嘩→ラブラブを目指し書いて見ましたが…なんだかバカップル加減が足りない気がする。
ピノ様、こんな感じのバカップルはNGですか?
とにかく5000ヒットありがとうございます!アンケ結果はこちらから。
ヒット御礼となりますので、フリー小説です。



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