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侵略者は突然にZ



立ち込める爆煙。
破壊と再生を繰り返す目の前のバトルは、一見優劣つけがたいものと思えたが勝敗は目に見えていた。

「ねぇねぇ日々也。今から言うプログラムって作れる?」

緑の少年は防衛に精一杯なのに対しサイケは余裕で俺に話し掛けてくる。
質のよい駒を手に入れた。
小さく笑いながら褒める様に頭を撫でながらどんなものを作ればいいのかと問う。
そうすれば今までよりずっと無邪気で、そして残酷なものを要求してきた。

「唄ロイドを強制停止、初期化するプログラムなんだけどさ?」

今は俺の支配下に置かれているとは言え元仲間になんてモノを使用しようとしているんだ。
予想外な事に驚き、想像以上な事に笑みを深めた。
あぁ、楽しい。仲間とつるみ合っているからこんなことになるんです。裏切られるんですよ。

「5分ほどで完成させましょう。」
「うん、お願いね?」

無邪気に無邪気に笑うサイケ。少しだけ不気味に思いながらもこの駒は俺の手の中にある。本来の残虐性が俺の駒となったことで表に出てきたのだろう。
何処か違和感を感じながらも確実にこの駒は俺の手に堕ちた自信から気にしないことにする。仮に堕ちきっていないからといって俺にどうにか出来る器じゃない。
しかしもしものことを考え、唄ロイド破壊プログラムを組み立てつつ、そのワクチンも組み立てる。
俺が信じているのはデリックだけだから…。
出来上がり警戒しながらそのプログラムをサイケに渡すと変わらない笑顔で受け取る。するとそれを一度何かの膜に包み込んだ。何をするつもりなのでしょうか…。様子を見守っているとサイケは何かを構築し始めた。

「派手に暴れるつもりだから日々也はここから動かないでね?大丈夫、俺が防御壁を作って守ってあげるから!」

いうや否や俺の周りを囲うように構築される透明な壁。サイケが何を考えているかよく分からない。しかしこの空間が汚染されているわけでもなさそうだし、そもそもウィルスは俺には効かない。

「じゃぁ、日々也。バイバイ?」
「…?」
「弓矢(アーチェリィ)!」

バイバイとは何に対してなのだろうか。問う前にサイケは俺に背中を向けて新しく何かを構築する。それは大きな弓矢で、先には先ほど渡したプログラムの入った膜がついている。それであの少年のところへ飛ばすということか。
サイケの行動が何となく読め始めてきた時、視界が一瞬陰った。
え…?
ノイズが混じり始め、視界も乱れていく。立ってもいられなくなってくれば俺はその場に座り込んだ。
身体に力が入らない…。何がどうなっているのか…足元の感覚を失い気付く。

「…じょう…か…いや、初期化か…サイケデリック臨也!」

電子となり、消えていく身体。
俺の怒鳴り声で振り向いたサイケは先ほどから変わらぬ笑顔。無邪気に、無垢に、残酷な。

「うん、自分で作ったプログラムに侵される気分はどう?あぁ、でも正確には元は君が作ったもので、今君を侵しているのは臨也が手を加えたウィルス入りのプログラムだけどね。だから、ワクチンとか用意していたとしても無駄だよ。」

饒舌に種明かしをしていくサイケ。
しかしどうして…彼の指令プログラムは俺の手に堕ちたはずだ。それなのにどうして俺の命令を無視できるのですか?!

「あ、その顔はどうして俺が自分の意識で動けるかわからないって言った顔だね。もうすぐいなくなっちゃうし、特別に教えてあげるよ。臨也はこういうプログラミングは得意なんだ。だから俺をカスタムするにあたってバグとかウィルスとかよほどしつこかったり複雑なものじゃないかぎり対処できるんだよね。だから君のウィルスは俺には効かないんだ。残念だったね。」

目線を合わせるように屈むサイケに俺はただ睨み付けることしか出来ない。睨むことすらできているのか疑問ですが。
防御壁と言っていて張っていた壁を解くと、サイケは俺の頭に手を置いた。
この壁も俺にそのウィルスを感染させるためだったのだろう。外に漏らさない様に、俺に気付かせない様に。
……悔しい…こんな子供に足元を掬われるなんて…。

「一つだけ残念なことがあるんだよね…自動プログラムだと完了するまでに時間が掛かるんだ。その間に君がこのウィルスの抗体を持っちゃうのかが不安だけど…自動の場合は、だからさ?」

つまり手動に切り替えその処理スピードを上げるつもりですか。
頭に置かれた手を残っている力でふり払う。一気に体力を奪われた後は進行が遅くて助かる。つまりこれは時間との戦いということ。
こんなことならばデリックを行かせるんじゃなかったか…。
ふり払えたとしても一瞬で、再び伸びてくる手を今度はふり払う力が残されていない。確実に体中の感覚を失いながら唯一信じている人物を浮かべた。
デリック、デリック…君はきっと来てくれますよね?

「津軽を苦しめ、リンダを泣かせた罰は…その身でちゃんと償いな……・・!」

信じ、目を閉じたところで目の前に大きな音がしてゆっくりと瞼を上げた。
すると目の前には大きな黒い鎌と見慣れた真っ白なステレオ。

「手前ら全員ぶっ殺す!」

聞きなれた、待ち望んだ声を聞き、薄れゆく意識の中で俺は君だけは裏切らなかったことに安堵して頬を緩めた。

デリック、君は最高の俺の駒(恋人)だ。









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かれこれこの話の発端の次に一番書きたかったシーン!サイケたんの反撃!サイケたんまじ悪魔!天使どこ行った!?捜索願で足りるかってほど行方不明。むしろログアウトw
実はこのまま終わり予定だっただぜ。大丈夫、登場キャラが多くなるにあたり何故かいろいろ書くことが増えたからorz
あと少なくて2話で終わる。



あきゅろす。
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