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侵略者は突然にV



突然俺を包んだ闇。エラーメッセージが目の前に表示された頃には俺は隣で一緒に唄っていたリンダに殴り掛かっていた。
やめろ、やめろ…俺はこんなことしたくない。やめてくれ!!
何度も何度もリンダに殴り掛かり、傷を増やしていく度に俺は自分の無力さを呪った。
力こそあれど、自分ではどうにも出来ない。
自分の体なのに言うことを聞いてくれない。
倒れたリンダにトドメを刺そうとする俺の体。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…なんでこんなことをしないといけないんだ。どうしてリンダを壊せと思うんだ。

「つが…だいじょ…ぶ…」

一方的に殴り掛かっているのに恨まれても仕方がないのに、リンダは笑う。いつもと変わらない優しい笑顔で。
笑う笑う笑う笑う笑う。

「愛の、パワー…で…」

いい、そんなこと言うな考えるな。俺を憎めよ恨めよ

「コワシテ」

こんな俺はいらない。
傷付けることしか出来ない俺は要らない。

だから


「津軽!」

言うことを聞かない体から伝わる痛み。
いつの間にか緩んでいた足の下からはい出たらしいリンダが俺の頬を叩いていた。
壊せと攻撃しろという命令に思考が侵されながらも我慢してリンダを見ているとリンダから溢れる涙。

「そんなこと言うなよ、諦めるなよ!俺は津軽が望んでやっているとは思ってない!だから…助けるからそんな悲しいこと……言わないでくれ…っ!」

縋るように抱き着くリンダ。
俺は幸せものだ。
こんなにも愛されている。
だからこそ、もう傷付けたくない。

「りん…だ、愛し…て……r………………………」
「つが…る?」

エラーメッセージと意志に反した命令、それに従う体を止める為に俺は強制シャットダウンをして、動きも意識も全て放棄した。






♂♀





「あれ?」

これからが楽しくなるころなのにいきなり駒の一つが動きを止めた。
外部から彼の意識にハッキングをしてみるも拒絶され介入が出来ない。
凍結。
これ以上暴れたくないからと自分の殻に篭りましたか。

「デリック。作戦は変更です。」
「どういう風にだ?」
「そうですね……今となってはこの駒を使うのは捨てる様なものですし。……ん?」

如何に面白く楽しく残虐に非道にこの世界を侵すかを考えているとマントを引っ張られた。馬の足元を見遣れば先程手に入れたばかりの俺と同じ顔をした駒が笑顔で俺を見ていた。

「日々也。俺にいい考えがあるよ?リンダの友達はまだ沢山いてね、その人達の記憶を書き換えたらどうかな?忘却、対峙、仇…偽りの記憶に失くなる記憶。思い出も想いも全て奪ってしまえばいいよ。日々也なら出来るでしょ?津軽に暴走プログラムを植え付けたのだから。」

無邪気に笑う…サイケといったか。デリックと同モデルの曲ロイド。
記憶を無くす、つまりデリックの様になるのか…。
ちらりとデリックを見て俺は黄色い子供を見つめた。
独りになる気分はどんなに辛いか…彼は知っているのだろうでしょうか。

「ねぇねぇ日々也。どうする?やるなら俺も協力するよ?」

くいくいとマントを引っ張るサイケは無邪気に無邪気に笑いながら答えを急かしてくる。
ぞわりと背筋を這うこの嫌な予感は何でしょう。これはもう俺の手に堕ちているはずなのに、言葉にしがたい不安は。
本能が警告する。
誰にも心を許すなと。
裏切られたくなければ誰も信じるなと。

「日々―!」
「煩い!愚民が俺に意見するな!」

規則正しくマントを引っ張り続けるサイケを払い落とす。
俺は俺の考えにしか従わない。
俺は俺のしたいことしかしない。

俺の望みは…


「デリック。あの二人を壊せ。」



デリックにもう二度と忘れられないこと。



そのためなら俺は何でもしよう。



「了解。」







‐‐‐‐‐‐
地味に楽しくなっちゃったんだぜ、こんにゃろー!
このあとは学天とサイケの電脳天使大戦争。ハッキング機能を使い電子空間に様々な物質を再構築させて戦います。嘘です。多分。





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