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小さな優しさで恋は始まる(静←正)
どうしてこうなったのだろうか。と正臣は考える。
現在、池袋西口公園入口にて、ベンチに腰を掛けて以前彼が友人に危険人物と諭した平和島静雄の話…いや、愚痴を聞いている。事の始まりは何だっただろうか。確かと少年は数十分前を思い出す。
正臣は現在の雇い主に当たる折原臨也のお使いにと池袋に訪れ、そして用を済ました為その帰り道だった。公園で暴れる静雄を見掛けては被害を食わぬ様にと退散しようとした刹那、それは阻まれた。否、人が正臣に飛んできてその下敷きになった、といったほうが無難だろう。臨也に雑用頼まれ静雄の喧嘩に巻き込まれ、正臣は厄日だと感じつつ起き上がろうと体を起こすと目の前に差し出された大きくしっかりした手の平。何だろうかと視線を上昇させその主を見ればバーテン服にサングラス。今、正に正臣を人間で下敷きにした張本人に差し出していたのだ。ここで断れば今己の上に伸びる人間と同じ目に遇うと直感した正臣は「すみません。」と謝罪にも似た礼を述べてからその手を取った。瞬間手を引かれて起こされた。力強いその動きに憧れと別の何かを感じつつ、再び礼を言い立ち去ろうとする正臣を静雄は引き止めた。

「悪い、…詫び、させてくれるか?」
「え、いや。本当大丈夫ですよ。怪我と言う怪我もしてませんし…。」

これ以上厄介事に巻き込まれたくない。それが正臣の本心。しかし下手に断る事も出来ず当たり障りない言葉を紡ぐしか出来ない。
断ろうとする意図が汲み取ったのか、はたまた別の感情が浮かんだのか…静雄はそれ以上紡がず正臣に背を向けた。ホッとすると同時に正臣には違和感を感じた。何処か淋しげな背中、何処か孤独を背負う姿に正臣は無意識に声を掛けた。

「なら、そこの自販機でジュース奢って下さい。」

口を開いて正臣は何を言っているんだと慌てて己の口を塞ぐが全ては終わった後。殴られる、そう感じて覚悟を決めるように身構えるがそんな衝撃は訪れない。恐る恐る静雄を見ればぽかんと振り返り正臣を見ていた。そして小さく口端が釣り上がり、

「何がいい?」

優しい声音で問い返された。
そしていつの間にか話し込んでいたのだ。

抜け出すタイミングが見付からないこともそうだが正臣はこの時間が苦ではなかった。寧ろもっと静雄の話を聞きたいとも思うようになっていた。そんな時ふと数週間前の事を思い出した。関連してあまり思い出したくない友人たちとのことも思い出したがそれは記憶の底へと押しやり、言葉を選びながら純粋な疑問をぶつけた。

「静雄さん、…以前黄巾賊の内部抗争で姿見掛けましたが…どうし」

てですか、と疑問をぶつけようとしたことで当時を思い返す。あの時静雄は法螺田に撃たれていなかったか。それの御礼と訪れていてもおかしくない。

「もしかして」
「手前をぶん殴りに。」

可能性を口にする前に静雄の口から真実を聞かされ正臣はあぁ、やっぱりと、自然と逃げようとは思わなかった。あれは自分の責任だ。一度は離れていたとしてもチームを纏めるなり解散させるなり、ケジメをつけ切れずにあんな奴をチームに引き入れた自分の責任だと腹を括ったのだ。
だがさらりと言われた事実以外、見受けられる行動がない。不思議に思った正臣は静雄の方を見遣る。

「けど、やめた。」
「へ…なん、で?」

自分でもマヌケなことを言っていると思った。殴られないならそれはそれで儲けもの。けど拳銃で撃たれたのだ。下手をすれば死んでいたことだ。簡単に許せられるわけない。

「撃ったやつらはぶん殴ったし…命令した、つーう手前も殴ってやろうかとも思ったが手前の顔見て止めた。」
「?」
「手前がそんなこと命令する汚ねえ奴じゃねえだろ。顔見りゃわかる。」

ぽんっと頭に置かれた大きな手の平。正臣は大きく目を見開いた後そっと顔を背けて俯いた。
何故だか心が温かくなる。冷めていた訳ではない。けれど友人と離れてから空いていた穴が少しだけ塞がった、そんな感覚がしたのだ。
それから正臣は小さく「すみません、それとありがとうございます。」と呟いたがそれは静雄の耳に届いたかは不明だ。同時期に流れた携帯の着信音に静雄は気を取られ、電話に出ていたから。会話が済んだらしい静雄は正臣に一声掛けてから公園を後にした。
その後ろ姿を見つめながら正臣は密かに呟いた。

「    。」




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1000ヒット御礼アンケでは2位だった静正。だからヒット御礼の中に加えたかったのだけどなかなかネタが見付からず四苦八苦でした。
これも…静正とも静←正とも静→正とも静→←正とも言い切れない産物。だけど静←正と言い張ります!
4000ヒット御礼になります+





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