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甘い裏側(臨正)



―今すぐ事務所に来て。

10分前に送られてきた一通のメール。雇い主である折原臨也からの呼び出しだ。定時時間以外の呼び出しは録な事がない。以前に同じ様に呼び出された時は女装をさせられたり隣の県までお使いさせられたり…それが仕事だと言われてしまえば何も言えない。流石に女装は抗議するが。
今回は何だろうかと無視する方が後々怖いことになるので直ぐに返信して臨也さんの事務所兼自宅へ向かう。
仕事でもう来慣れた道を歩き、マンションに着くと部屋まで足を運ぶ。部屋の前で順調に歩いて来た足を一度止めた。
さぁ、これから何が起こる?
あの人の行動は予想がつかない。流石厨二病患者、人の斜め上を行くことには長けている。
意を決するとドアノブを回しお邪魔しますと声を掛けながら中へ入った。

「―っ!」
「いらっしゃい。待っていたよ?」

いつもの様に窓辺の机で仕事をしているとばかり思っていた俺は、目の前に立つ黒い影に驚き息を飲み込んだ。メールを送ってからずっと立っていたのだろうか、どうでもいい疑問を浮かべながら俺は臨也さんを睨み付ける様に見つめる。

「で、今日は何の用ですか?お使いとかなら構いませんが前みたいに女装とかは嫌っすからね…」

こう口で拒否したところで何も変わりないのだが、言うだけは言う。臨也さんの気まぐれが起きるかもだからな。
さぁ何が来るんだ、と身構えていると手を握られた。振り払えば直ぐに払えそうな弱い力で、こっちっと部屋の中に連れ込まれる。
なんだなんだと目を丸くしていると一段下がったところにあるソファーに連れて行かれ、臨也さんが座りそしてその隣に座らされた。目の前の机には白い箱が置いてあるが…今日の用事はこれか?
伺う様に箱と臨也さんを眺めていると彼はニッコリとした笑顔で言いのけた。

「ケーキが食べたくてさ、ワンホール買ったのは良いけど食べきれないから一緒に食べよ?」

はいっと言うように渡される小さなフォーク。反射的に受け取ってしまい、いそいそと机に置かれた箱を開ける臨也さん。楽しそうですね。

「…別に食うのは構いませんがもう少し後先考えたらどうっすか?」

これが初めてとかならまだ『馬鹿だこの人。』で済むんだけどかれこれ2〜3度目になるんじゃねぇか。
1度目はファミリーサイズのアイスクリームを買ったけど食べられないから半分食べて?
2度目はTV見ていたらバケツプリンって面白そうなもの作ったけど食べられないから食べて?
で、3度目がこれ。ケーキワンホール買いって何処のブルジョアだよ。一人で食えるつもりだっとか馬鹿か?馬鹿だろ?
この人の頭の中は砂糖で出来てんじゃねぇの?



♂♀




「そう思いながらも正臣はちゃんと臨也さんに付き合っちゃうんだよね。」
「…アイスやプリンやケーキには罪はないからな。」

帰ってから沙樹に今日あったことを話すとクスクス俺らしいと笑う。いやいや、何が俺らしいんだ?
確かに仕方がなく完食してきたし、タダで腹いっぱい甘いものが食えて嬉しいが。それは『俺らしい』となるのか?

「ねぇ正臣。」
「んー?」
「気付いてる?」
「何を。」

臨也さん、自分で買ったわりには半分も食いやしねぇから食い過ぎたかもしれねぇ。
少しキツイ腹を撫でながら横になると沙樹が覗き込む様に俺の顔を見る。垂れ下がる短い沙樹の髪が鼻先を擽り、視界いっぱい沙樹の笑顔が見える。

「アイスもプリンもケーキも……ぜーんぶ私と正臣の会話に出て来たものだって。」
「…………」

確かに、仕事をしながら沙樹とそんな話をしていた。子供の頃ファミリーサイズのアイスが食ってみたかっただのバケツプリンが憧れるだの有名洋菓子店のケーキが食べたいだの、沙樹と話していた。仕事中に話していたのだから勿論臨也さんも聞いていたわけで。

「正臣も覚えていると思うけど臨也さん、ブラックコーヒー派なんだよね。」

いつもコーヒーを煎れる時は砂糖もミルクも入れない臨也さん。甘党でもないあの人が過剰に甘いものを買うはずがない…てか。
今まで気付かぬフリをしていた事を沙樹は遠回しに教えてくれる。
俺の話を聞いていてくれた事。
俺の願いを叶えていてくれた事。
俺に合わせ付き合ってくれた事。

「あれ、正臣。何処か行くの?」

立ち上がる俺を見つめ沙樹は分かりきったことを聞く。

「おう、臨也さんのとこ以外。」

ニッと笑ってやれば沙樹も微笑んだ。「いってらっしゃい」と送り出され俺は来た道を引き返した。





【甘い裏側】






「あれ、正臣君。忘れ物?」
「えぇ…まぁ……」
「別に明日も来るんだし明日でも良かったんじゃない?」
「いや、明日だといつもみたいに波江さんもいるんで」
「?」

俺は目の前に立つ我が儘をきいてくれる恋人にそっと背伸びをした。

「お礼…言いに来ただけなんで。」
「…………そう、ならもっと頂戴?」

ニッコリ笑う恋人はきっとこうなることを予想していたに違いない。








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のこちゃーん!誕生日おめでとう!誕プレだから甘い臨正…甘い臨正?って悩んでたらきっちりちょっきりあげられなくてごめんなさい(涙)
かなり低クオリティーで更に申し訳ないけど良ければ貰ってください!







あきゅろす。
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