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竜ヶ峰帝人の災難(静正)




「いいえ、俺の方が静雄さんの何十倍も好きです!」
「いいや、俺の方が手前のずっとずっと愛してんだよ!」

正臣と静雄さんがお互いを好きだと言い始めてかれこれ30分が経とうとしている。もうそろそろ止めてくれないかな…。始めは僕らにしか聞こえない声量だったから周りも何をしているかなんて気付いていなかったけど中々両者が折れないものだから今では半分叫び声となっている。そもそもこの言い合いの発端と言うのが実に下らない。いや、僕が発端と言えば発端なのかな…。

『正臣と静雄さんって本当仲がいいよね。』

学校帰りに僕と正臣は静雄さんと遭遇して暫く立ち話をしていた。正臣と静雄さんで休みの予定を話しているのを聞きながら当たり障りない呟きのつもりで二人の様子を言葉にしただけだった。まぁ、それ自体に問題がある訳じゃない。

『当たり前だろ、俺と静雄さんはラブラブなんだからな!』

そのあとの正臣の返答もただの自慢で惚気だ。

『紀田のこと愛しているからな。』

それに対する静雄さんの返答もまぁ恋人なら普通なんだよね。場所とか諸々は考えて欲しいけど。
その一つ一つは別に問題はない。ただこのあと正臣が『俺の方が愛してます!』とどこの馬鹿ップルだ言わんばかりの事を言い、ムキになった静雄さんが『俺の方が』と言い争いになった。
ねぇ二人とも、ここ外なんだけど。往来のど真ん中なんだけど。学校帰りの学生や仕事帰りのサラリーマンとか一番人が多い時間帯なんだけど。
分かってる?僕に突き刺さるこの痛い視線。分かってないよね、自分達の愛の告白大会で頭いっぱいだもんね。
終わる気配を全く見せない二人の言い合いにはぁと溜息をついた。周りから「痴話喧嘩?」、「三角関係?」とか間違った呟きが聞こえてくる。周りから見れば愛してる相手は僕に見えるのかな…はた迷惑な。

「だぁから!」

どうやって止めようかな、寧ろ放置して帰ろうかなと考えていたら静雄さんの手が伸びた。まさかこんな端から見れば痴話喧嘩にもならない言い合いで喧嘩?!そう思って流石にそれは行き過ぎだと止めようと声を掛けようとした。しかし既に遅くて静雄さんの手は正臣の胸倉を掴み引き寄せている。正臣もそれは予想していなかった様で驚いていた。

「ま」

正臣が殴られる。制止の声も届かず正臣は

「………」
「こんくらい好きなんだよ!」

静雄さんにキスされた。

……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ねぇ僕の心配返して?






【竜ヶ峰帝人の災難】







「………静雄さん!俺だってそのくらい愛してます!」

固まっていた正臣が離れていく静雄さんの首に抱き着いたあたりで僕はもう放置することに決めた。この二人に付き合っていたら身が持たない、というか周りの視線が痛くて堪らない。

仲がよろしいことで。






‐‐‐‐‐‐‐
五萬打フリリク、こたつ様リクエスト、『静正。好き好き主張中。』でした。お互いに好き好き言い合いっこしててもいいかなぁと思ったのですが第三者からのほうが面白いかなと生贄に正臣と仲良い帝人視点からとなりました。帝人が黒いよ、ゴメンね、帝人。
どうでもいい設定だけどこの話の帝人は臨也と付き合っていたりいなかったり…、帝臨だぉ。







あきゅろす。
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