キスに祈りを乗せて(ろち正)
「千景さん。」
「ん?」
呼べば振り向いて笑顔をくれる俺の恋人。また誰かと喧嘩したのか顔には包帯や絆創膏が貼ってある。暴走族のリーダーなんだから仕方がないのだろうし千景さんが無闇に喧嘩するはずはないだろうから仕方がない理由なんだろうとは分かっている。だけど恋人としては怪我はして欲しくないのは事実。どうしたらいいかなと考えていると千景さんと目が合った。俺が千景さんを呼んだまま凝視してだんまりだからなのか千景さんは首を横に倒しキョトンとしていた。だんまりなのが不機嫌になっているとでも思ったのか頭を撫でられる。
「どうした正臣?」
「…何もないっすよ。呼んだだけ。名前を呼べるなんて幸せじゃないっすか。」
頭を撫でられるのが気持ち良くて、頬を緩ませ俺はまた千景さんを見る。ニッコリ笑って千景さんを追い越し走り出す。
「ほら千景さん、映画の時間に遅れちゃいますよ?」
今日は久しぶりのデートなんだ。怪我の心配もあるけれど千景さんが何も言わないなら平然としているなら敢えて突っ込まないでおこう。
そのかわり今日のデートを存分に楽しもう。
早く早くと俺は千景さんの手を握り軽く走り出した。多分まだ時間は大丈夫だろうけど、手を繋ぎたかったんだ、って言ったら千景さんは笑うかな?
「あ、」
階段を駆け上がった所で俺は繋いだ手を離し振り向いた。2段下にいて片足をその上の段に足を下ろしている千景さんを見下ろして俺は顔を近付けた。帽子を取り、そっと優しく包帯に口づける。
一瞬の行動だったが千景さんはびっくりして目を見開いている。
「おまじないです。怪我が早く治りますように。と千景さんが怪我しないように。って。」
してやったりと笑いながら俺は前を向き直る。歩きだそうとした瞬間腕を引かれて軽くバランスを崩しかけ千景さんの腕に収まった。危ないですよ、と注意しようと振り向くとそこには千景さんの顔が間近にあって、唇からは千景さんの体温。
「正臣にもおまじない。悪い虫が付かないように。」
離れた千景さんの表情はきっとさっきの俺と同じ様にしてやったりと笑っている。
「それ、千景さんにそのままそっくり返してあげましょうか?」
照れ隠しにムスッと睨み付けたが見通されているのか千景さんの笑顔は消えないし幸せそう。あぁもう、この人は!
【キスに祈りを乗せて】
「ほら、映画遅れるぞ?」
照れから暫し立ち往生していたら千景さんはいつの間にか先に進んだらしく目の前に立って俺に手を差し延べていた。その手を力強く握り締め
「分かってますよ。行きましょう?」
肩を並べて歩き出す。繋ぎ方は勿論恋人繋ぎ。
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五萬打フリリク、ゆーらん様リクエスト、『ろち正、甘々』でした。
身長差ならではのシチュ。正臣はろっちーにベタ惚れです。いや、ろっちーもだけどw
この二人は静正と同じか次ぐらいに甘いと思う。
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