[携帯モード] [URL送信]
偶然と必然と時の悪戯(正臣総受け)

※設定は【誰が其の自衛生活】より。番外的な位置。




「ただいまーっと。れ、まだ誰も帰って来てないのか?」

学校を終えた正臣は委員会があるという帝人を置いて先に帰宅した。特別理由はなかったが今日はさっさと休みたい気分だったのだ。
リビングに入ると良くいつ仕事をしているんだという臨也の姿があるのだが今日は見当たらず、正臣はラッキーと言うようにリビングのソファーで寛ぎ始めた。いつもなら臨也に邪魔されさっさと部屋に入るのだが今日は仕事らしくその邪魔者は居ない。悠々とソファーに寝転びながら雑誌片手にTVを眺める。しかし夕方にはまだ目星番組は放送されていない。自然と意識は雑誌の方に集中していると玄関の扉が開く音に我に返った。

「お、帝人。お帰り。」
「ただいま…ってどんな格好なのさ。
「紀田正臣寛ぎモード」
「はいはい。」

リビングのドアから覗く姿は先程学校で別れた友人であり弟である少年。帝人の姿だと確認すると正臣はまたソファーに寝そべり寛ぎ始めた。仰向けで雑誌をパラパラめくる友人兼兄の姿に呆れながらリビングからキッチンに移動する。戸棚から普段自分が使っているコップを取り出し冷蔵庫の戸を開けるとリビングから声が掛かった。

「帝人ー俺もー。」
「…何がいいのさ。」
「んージュースならなんでも。」
「自分で取りに来たら?」
「なら何で聞いた?!」
「何となく。」
「おま…」

コップにお茶を注ぐとお茶の入った容器を元の場所に戻しながら冷蔵庫の中を見る。ジュースなどあっただろうかと見ていくと見知らぬ瓶が一本入っていた。見ため的にはジュースの様でそれを片手にお茶の飲み終えたコップを流しに置くと未使用のコップを取り出した。
怠け者の兄と話ながら帝人はその瓶を彼の顔へと置いた。

「はい。」
「サンキュー♪」





♂♀





「ねえ、帝人君。冷蔵庫にあった瓶知らない?」
「あぁそれなら正兄に上げましたよ。臨也兄さんのだったんですか?すみません、今、正兄に…」
「ふーん、アレを正臣君に、ね。」
「臨也…さん?」

今夜は帝人の料理当番だった。キッチンで夕食の準備をしていると二人目の兄である臨也が帰ってきた。臨也は帝人の邪魔にならないように移動しながら冷蔵庫まで行くとドアを開ける。中に目当てのモノがないと知ると臨也は何か知っているだろうかと帝人に問い掛けたのだった。そこから返ってくる返答に臨也は楽しげな笑みを浮かべそれに気付いた帝人が眉を潜めた。初日のことがある、この人はまた正臣に何かするのだろうかと警戒していると二階から物音が響いた。
二階には今、正臣しか居ない。正臣に何かあったのだろうかと帝人は料理の手を止めて廊下へと飛び出した。その後ろを臨也は何が起こっているか推察している表情で着いていく。

「正臣?!」

慌てて階段を駆け上がり帝人は正臣の部屋のドアを開け放つ。すると同時に間抜けた声で自分の名前を呼びながら正臣が抱き着いてくるではないか。帝人は驚き正臣を受け止めながら混乱する。部屋には何かあった様子は見当たらない。せいぜい正臣が持ち込んだ雑誌漫画類が散乱している程度だ。正臣の様子を見ても顔を紅葉させて上機嫌。

「って、え、お酒臭い…」
「みかどー」

ぎゅーっと抱き着いてくる正臣から仄かに香るアルコール臭。どういうことだろうかと首を傾げていると背後に立つ臨也が説明し始めた。

「帝人君が渡した瓶の中身はさ。お酒だったんだよ。まぁあんまりアルコール度数が高いものじゃないってかどっちかというとジュース感覚で飲めるお酒なんだけどね。仕事先で貰ってきたんだけど甘い酒は俺あまり好きじゃないからシズちゃんにでもあげようかなって思って冷蔵庫に入れていたんだけど…まさか正臣君が間違えて飲んじゃうなんてね。」

嘘だ。帝人は臨也の話の内容にすぐさまそう思った。仕事先でこの酒を貰ったことは本当だろう。もしかしたら本当に静雄にあげようとしていたかも知れない。しかし正臣が飲んでしまう可能性を考えていなかったことだけは嘘だ。正臣の性格なら酒だと分かっても飲んでいただろう。それがわからない男ではない。
しかし帝人は敢えて追求しなかった。
そうですかと返して目の前に酔う友人をどうしようかと考えた。
すると抱き着いてくる正臣の顔が近付いてくるではないか。え、っと帝人が呆然としていると唇に触れる感触。温かくて柔らかいそれが正臣のモノだと気付くと帝人の顔に一気に熱が集中する。後ろからはいいなという声まで聞こえ正臣からのキスと羞恥に頭が真っ白になる。
チュッとリップ音を響かせた後正臣は帝人から離れてしまい、そのまま上機嫌で帝人の時と同じ様に臨也にも抱き着いた。普段からは絶対に考えられない行動だ。

「ちなみに正臣君は、さ。酔うと甘えん坊のキス魔になっちゃうみたい。可愛いよね?」

初めから正臣が酔うとどうなるか知っているかのような口ぶり。帝人はこのためにわざわざ正臣の手の届くところにアルコールを置いたのかと臨也を睨み付けた。酔った正臣に興味があり追求はしなかったが臨也がそこまで考えていたことには腹が立つ。目の前で正臣が自分にしたように臨也にキスしようとしている姿が目に映り帝人は正臣を抱き寄せた。

「みきゃど?」

既に呂律も回らない正臣を後ろから抱きしめては牽制というように臨也を睨みつける帝人。そんな彼に臨也は楽しげに見つめながら臨也は正臣の顎を掬う様に持ち上げた。

「ねえ、正臣君。飴欲しい?」
「あめぇ?」
「うん、飴。」
「?」
「欲しいれす!」
「なら」

何をする気なのだろうか、帝人が力強く正臣を抱きしめながら様子を伺っていると臨也はポケットから一つの飴を取り出した。それを正臣に食べさせてあげるのかと思っていると臨也はそのまま自分の口内へ放り込んだ。口移し、そう帝人が気付くと同時に臨也から正臣にキスをする。しそうになった。しかし階下から聞こえてきた玄関の開く音と独り言のような帰宅の言葉に正臣が反応し、帝人を振りほどき臨也を無視して部屋を飛び出していく。

「…「?」」

予想外の行動に帝人も臨也も呆然として顔を見合わせた。暫くすると一階から静雄の驚く声が聞こえ、それから無音。
二人が慌てて一階に降りると玄関先でディープキスをする静雄と正臣の姿が目に映り、帝人は絶句、臨也は家中に響き渡る声量で叫びをあげた。

「な…」
「…ま…正臣君の純情返して!!」






【偶然と必然と時の悪戯】





それから数時間後、酔いが醒め寝ていた正臣がリビングのソファーの上で目を覚ますと床に正座をさせられている弟と兄の姿。

「…なにやってるんすか?」
「正臣、そいつらは気にするな。腹減ってるだろ?飯よそってやるから食え。」
「…は、はい。」

詳細を尋ねたところでもう一人の兄である静雄に声を掛けられ、それがどこと無く怒気を含んでいることに気付けば正臣は触らぬ神に祟りなしというように口を閉ざした。

臨也は正臣に酒を飲ませた元凶として、帝人はその連帯責任で静雄から罰を受けていたのだった。












‐‐‐‐‐‐‐
大分お待たせしました、弐萬打企画、神奈様リクエスト、『総受け。お酒ネタ。』でした。酔った正臣とのことでしたので甘えん坊のキス魔にさせてもらいましたが果たしてこれでいいのか…流れを考えているなかで臨也や静雄や帝人やそのほか大勢のいる前で正臣が飲酒はどんな場面だと煮詰まり放置に放置を重ねた結果11月だって?な状況に…本当すみませんorz
しかも拍手連載の番外的位置にしてしまいもう何と言っていいのやら…。

リクエストありがとうございました!





第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!