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堕ちるところまで堕ちて(帝→←正)



『ようこそ、ダラーズへ。』

携帯に届いた登録完了のメール。俺は添付されたサイトアドレスからそのHPへ飛ぶ。少し前と変わっただろうか。創始者自身が変わってしまったのだからなくもないだろう。

「本当にやるんだ?」

携帯を弄りサイト状況を見ていると背後から掛かる声に俺は振り向いた。そこにはとても楽しそうな笑顔を浮かべた臨也さんが立っている。あぁ、殴りたい笑顔だ。この俺の行動すら予想済みなんだろう。これからどうするかもどうなるかも誤差はあれどある程度予想済みに違いない。盤上の駒を動かすように平気で人の背中を押して思い通りにゲームを進めていく。

「臨也さん、パソコン借りますよ。」
「どうぞ、どうぞ。この部屋のモノは好きなように使って構わない。パソコンも情報も俺自身すらね。」

臨也さんの言葉を無視して俺はいつも臨也さんが座っている椅子に腰を下ろすと既に電源の入っているパソコンを操作してダラーズのサイトを開き直す。掲示板の一つ一つを見ていたらいくつか鍵が掛かっていた。そういうのに対処するならパソコンの方がやりやすいし、臨也さんのパソコンなら後々の心配もない。
本当ダラーズはカラーギャングと言うよりはコミュニティーに近い。そのままコミュニティーでいてくれたらと思いながら鍵の掛かったスレッドに正規ではない入室の仕方をして内容を読んでいく。このスレッドは聖辺ルリのファンのスレッドだ。昨日の事がよく書かれている。帝人も…きっとこれを見たんだろう。

「……臨也さん。貴方の勘では次はどのスレッドが対処となりますか?」

それから幾つかのスレッドを見ていくがこれと言ってすぐに帝人が動きそうなものが分からない。聖辺ルリの時みたいなケースならわかりやすいのだが、親父狩りやカツアゲなどと言ったどれも動きそうなものばかりでどれに当てを付ければ分からないのだ。帝人の事だ。一人じゃないのだからどの悪事にもあいつらを使って止めてくるのだろう。正義の味方気取りで。

「俺の勘だとこれとこれ…かな?」
「…ありがとうございます。」
「いいよ。君と俺との仲だしね?」

後ろから覗き込む臨也さんの手が幾つかのスレッドを指差した。その内容に目を通した後サイトを閉じネットを切った。後は時間…。俺は本当、どうしようと言うんだろうな。

「あれ、もう帰っちゃうの?」
「はい。もう此処には用がないので。」
「また遊びにおいで?2年前みたいにさ。」
「お邪魔しました。」

立ち上がり玄関へ歩きながら一つの番号へと掛けていていると臨也さんの残念そうな声が聞こえた。ちらりと臨也さんを見ると彼の本性を知らない人から見れば縋りたくなるような、彼の本性を知る人から見れば胡散臭い爽やかな笑顔が浮かんでいた。
新しく面白い事を見付けたって言う顔だよな、あれって。
その表情に俺の行動もまたあの人の手の上で転がされているんだと思い知らされながらも、俺は家を後にした。そして数分前から繋がっていた電話相手に謝罪をしながら用件を伝えた。

「あぁ、見付かるんじゃねぇぞ。手出しも無用だ。あいつらの集会場所か、帝人の居場所が分かればいい。……頼んだ。」

相手の返事を聞くと電話を切る。
今度こそ間違わない。今度こそ守るんだ。

「帝人……」

だから待ってやることはしない。待ってなんかやらない。





【堕ちるところまで堕ちて】







いつものマンションの屋上でお願い事を終えた皆が事後報告をしてくれる。それに耳を傾けていると屋上と階段がある空間を隔てるドアが開いた。もう皆揃ったと思っていたけど、とそちらを見ると僕は息を飲んだ。

「やっと捕まえた。」

正臣がいた。いつもと変わらない優しい笑顔で。
いつもと変わらないはずなのに、僕は彼が僕の知らない彼に見えてしまう。

「帝人、お前一人では行かせない。」













‐‐‐‐‐
萌えが足りないからと何故シリアスなんだ、自分!
とりあえず8巻以降の話を書こうかなと考えて、帝人だけじゃなく正臣も帝人みたいになったら帝人も気付くんじゃないかなと正臣を病ませてみた。だけ。
正臣が臨也みたいにハッキングとか情報収集してたら萌えるというだけの前半。



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