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甘いお菓子に悪戯を(静正)



「ほらよ」
「………なんすか?」
「ん、今日ハロウィンだべ。それつけて恋人にねだったらどうだ?」

仕事の終わりがけ、先輩であるトムさんに何か頭に乗せられた。手で触ってみると何かの耳みたいだ。外して良いだろうかと考えながらどういうつもりかトムさんに尋ねれば予想外な事を言われ思わず顔を赤くする。恋人…紀田とのことは良く相談していたりしていたので話題に持ち上がる事は不思議ではないがこんな提案してくるとは思わなかった。

「んなこと出来ないっすよ…」
「そうか?…ま、静雄の恋人ってイベント好きなんだろ?ならお菓子ぐらいは用意してやれよ。」

確かに紀田はイベント毎に色々仕掛けてくる。だから今回のハロウィンも仮装しているだろうし、仕事が終わったら紀田から家に呼ばれているからお菓子も用意している。
仕事が終わりトムさんに直帰して良いと言われ獣耳を持たされたまま紀田の家に向かう。いつも紀田ばかりで俺はそれに反応するだけだ。紀田はそれでも喜んでくれるが本当のところどうなのだろう。一緒に楽しみたいのだろうか…。しかしそんなガラでもないことをして紀田の気分を害さないだろうか。
紀田の家の玄関先で俺はどうするか迷いインターホンを押せずにいる。

「よし。」

そして俺は決めるとインターホンを押した。



♂♀




静雄さんから今から向かうとメールが入り30分。少し遅いなと思いながら俺はハロウィンの準備をする。今夜の俺は吸血鬼だぜ!静雄さんの血を吸い付くしてやる☆
今か今かと静雄さんの訪問を心待ちにしていると部屋中に鳴り響く電子音。待ち人の訪問を訪れる2度連続してなる音に俺は意気揚々とマントをはためかせて玄関へ向かう。鍵を開けてドアを開ける。同時に

「「Trick or Treat!」」

ハロウィンお決まりの台詞を言うと被った事に気付いた。え?と静雄さんを見ると頭の上にちょこんと乗る灰色の耳。え、もしかして静雄さんも仮装?
てっきり静雄さんはお菓子をくれるだけで仮装なんてしないと思っていた。キョトンと静雄さんを見ていると頬を赤らめてそっぽを向く。

「…悪ぃ…んなのガラじゃねぇよな。…今回は俺も積極的に参加して見ようかと思ったんだが…」

え…え…?

「紀田と一緒に楽しみたかったが…やっぱ変だよな。」

何この人可愛い。

「そんなことないっす!静雄さんが仮装してくるとは思わなくって…一緒に楽しもうしてくれて俺嬉しいです!」

俺がほうけていたことが静雄さんには俺が不快に思ったかそういう風に勘違いしたらしく照れながら謝るその姿は新鮮で、頭に乗ってる耳が垂れ下がっている幻覚が見えた。飼い主に叱られた犬の様にしゅんとする静雄さんに大慌てで否定すれぱぁっと明るくなるのが分かる。垂れ下がっていた尻尾も持ち上がり左右に揺れている幻覚すら見えるほどなのだから。

「そうか?」
「はい、だって静雄さん騒がしいの嫌いかな…って思ってて…俺に無理して付き合ってくれているんじゃないのかって思ってたんですよ…ね。」

いつも思っていた。自分だけ楽しんで静雄さんはそうじゃないんじゃないかって。文句も何も言わずに付き合ってくれるのに甘えて、俺は楽しんいた。だから静雄さんから積極的な行動に出てくれることが嬉しくて俺は抱き着いた。

「でも、俺だけじゃないんだって分かってよかったです!」

ぎゅーっと抱き着いていれば静雄さんも抱き返してくれる。
すると静雄さんが思い出したようにほら、と小さな包みを渡してくれた。

「?」
「悪戯かお菓子か…だろ?」

それで俺は直ぐにハロウィンのお菓子だと気付く。そうだ、今は仮装中だった。お菓子を受け取り上機嫌な俺は静雄さんから離れて部屋に向かって歩き出す。いつまでも玄関先じゃ寒いしハロウィンパーティーを始めようと思って。静雄さんも早くと急かすように振り向くと静雄さんが凄く近くにいた。玄関先とリビングを繋ぐドアを背に、その両脇には静雄さんの腕。
あれ、何この状況。静雄さんの顔がキスされるかって程近いんですが。

「なぁ、紀田からのお菓子は?」
「え…」

射ぬかれる程真剣な視線で見つめられ鼓動が早くなる。何を言っているのか理解が遅れる。
さっきまでの明るい雰囲気はない。あるのは少しでも動けば何が起こるか分からない緊迫した雰囲気。どうしてこうなった?

「ほら、今俺は狼男だろ?」

必死で頭を働かせて理由を探る。狼男=仮装=ハロウィン=Trick or Treat。お菓子をくれないと悪戯するぞ。
ハロウィンお決まりの台詞。
つまりお菓子をあげないと悪戯されると言うことで、だけど俺は用意していない。

「ないのか?」

俺の反応を楽しむかの様にクツクツ笑う静雄さんはさっきまでの可愛いと思った静雄さんじゃなく、心臓が破裂するかと言うほどドキドキしてしまうカッコイイ静雄さん。付け加えるならこういう静雄さんはベッドの中じゃないとあまり見れない。

「な…あ…」

無いと言えばなんとなーく先が分かってしまい顔が赤くなる。嫌な訳じゃないし最終的にはそういうつもりだった。だけどいきなりの展開にはついて行けず、だけど静雄さんに答えようと俺は腕を伸ばした。首に絡ませ体を引き寄せかなり近いところにあった静雄さんに自らキスをする。

「お菓子…用意してなかったので…俺、…がお菓子…です。」

悪戯されるよりはマシだろうと思い静雄さんに食べて貰うことを選んだ。こういう台詞はやはり恥ずかしい。触れるだけで直ぐに離れて俺は視線を泳がせながら言うと静雄さんが笑う気配。上目遣いになっているだろうなと思いながら静雄さんを見ると楽しげに笑っている。

「美味しそうなお菓子だな。」
「美味しいですよ。」
「知っている。」

今度は静雄さんからキスをされ俺は瞼を下ろした。





【甘いお菓子に悪戯を】






その後はまぁ…ベッドの上で美味しく頂かれましたとも。何故か悪戯込みで。









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ハロウィンアンケート、ご協力ありがとうございました!104票中34票獲得し堂々1位になったのは静正でした。途中まで臨正だったのに静正の強さに笑いしかでないw
コメントにて『化け物(モンスター)といえばやっぱり静雄さんです!狼男な静雄に悪戯されてしまう正臣はすごく可愛いしお菓子を貰った場合、甘いもの好きの静雄は嬉しいだろうと思います。』と『静ちゃん吸血鬼で紀田くんをガブリとして下さい!!』というリクを頂き、今回は前者を採用させてもらいました!
静ちゃんより正臣が仮装するイメージが強すぎ難産…トムさんありがとう(笑)てか悪戯どこ行った?悪戯風景は皆様のお心の中に…。Trick or Treat!






話しの急展開に俺もついていけない(ボソッ)






あきゅろす。
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