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晴天の色鮮やかな紅葉(来良)

蒼く澄み渡る空。暖かい陽射しの中に見え隠れする冬の気配。山は彩り賑やかさと淋しさを醸し出す。

「そうだ、紅葉狩りに行こう!」

秋もそろそろ終わりの十月の最後の日曜日。いきなり正臣に呼び出された僕と園原さんは待ち合わせ場所のいけふくろうの前でそう言い切られた。また突拍子もない思い付きを…と思いながらも正臣の行動力には感謝することが多い。僕も園原さんも先陣切って行動するようなタイプじゃないから何かなければ大体休みは家に引きこもりがちだ。まぁこれがナンパとかだったら一人で行って貰うのだが紅葉狩りとは正臣には珍しい単語だと言い出しっぺを見る。

「ん、どうした帝人?俺の素晴らしい提案に惚れ惚れしたか?」

ニカッとまるで太陽の様に温かい笑みを浮かべる友人に僕は一つ溜息を付きながらも笑みを返した。

「惚れはしないけどいい提案だと思うよ。それで、どこ行くの?」
「うにゃ、決めてない。要は紅葉という可憐な女の子を拝むぎゅっ」

紅葉狩りに行く事自体は園原さんも異論はないようで僕達のやり取りを微笑ましげに見ている。
この辺りに紅葉狩りの名所などあっただろうかと考えているとやはりと言うか、想像の中に有った一言を言われた。花見の時も似たような事を言っていなかっただろうか…相変わらずの減らず口を塞ぎながら近場で紅葉が綺麗な場所は無かったかと考え、ある場所を思い出す。

「ねぇ、あそこは?少し時間掛かるけど…園原さんにも教えてあげたいと思うんだ。」
「んー?あそこ?」
「うん、正臣が小学生の頃教えてくれた」
「あーあそこか。んなら、そこで決定!」
「?」

小さい頃の思い出の場所。二人だけの秘密でも良いのだけれど、園原さんには知って貰いたいと思う。正臣との会話の内容が分からない園原さんははてなを浮かべながら小さく首を傾げていた。そんな彼女に「着いてからのお楽しみだ」と正臣が笑っていうのだから、僕もあの頃の気持ちを思い出し同じ様に「素敵な場所だよ。」とだけ伝えて二人で手を引いて切符を買って改札をくぐった。
僕は今年の盆以来、正臣はもう小学生ぶりになるだろう地元を目指し。




電車に揺られること数十分。正臣の呆れる程の寒いギャグを交えたトークを聞きつつ目的の駅で降りる。園原さんに僕らの地元だと伝えると「温かい街ですね。」と感想をくれた。確かに近所同士仲が良かったりする。池袋も冷たいわけではないが地元程温かくもない。地元を褒められ照れ臭そうにしながら正臣が先導してあの場所を目指した。
道中コンビニでお昼にとおにぎりやサンドイッチ、飲み物を買い準備も整え、小学生の足では結構歩いた記憶のある道。あの頃は結構走った気がするけど三人お喋りをしながらだとあっという間だった。

「この山、有名とかじゃないけどさ…秋になると紅葉とか綺麗だからどうかなって」

山道を歩き、ちょっと獣道に入り行き着く場所。あの時夕陽を見た場所ではないが周りには広葉樹が繁り葉々を色付かせている。

「綺麗ですね。」

空を見上げ空の蒼と木々の赤や黄色などのコントラストを見つめて微笑む園原さん。釣られて笑顔を作っていれば上から落ち葉が降ってきた。自然にひらひらと落ちてくるのじゃなく無造作に大量に。

「正臣!」
「いやー帝人君が自分の世界にトリップしてるからさー」

振り向けば正臣が悪戯成功といった笑みを浮かべている。だけど何処か拗ねた様な口ぶりに全く…と溜息をつく。構って欲しいの?まるで子供みたいだ。

「はいはい、なら正臣もおいで?」

ちょいちょいと動物を呼ぶように手招きすれば正臣は満面の笑顔で抱き着いてきた。支え切れずにそのまま転んでしまえば二人して落ち葉まるけだ。

「…プッ…」
「アハハハハッ」

昔みたいに馬鹿やって小さな子供のような姿に二人して見合い声を上げて笑う。頭上ではクスクスと園原さんの笑いも聞こえた。
そのまま見上げれば高く蒼く澄み渡る空と冬に向けて、次の春に向けて色付く赤と黄色の葉が見えた。






【晴天の色鮮やかな紅葉】







僕はアルバムをめくり懐かしさに頬を緩める。去年の今頃に行った紅葉狩りの写真を見つめ。

「こんな頃もあったんだな。」

この頃は何も疑わなかった日常。数ヶ月前までの非日常を思い浮かべて自嘲する。ここ半年は色々あった、正臣が学校辞めて居なくなったりダラーズが暴走したりそれを止めようとしたり…まだ全ては解決していない。だけど、

「みーかど♪何見てるんだ?」

後ろから抱き着いて来る正臣に去年の紅葉狩りの、と伝えると懐かしそうに笑い机の向かい側に居た園原さんへと見せに行く。

…日常は取り戻した。

二人で懐かしそうに話している姿をこっそりと写真に収め、僕もその会話に加わった。

「また紅葉狩り行かない?」
「そうですね、」
「今度は落ち葉まるけになるなよ?」
「正臣、君がそれを言う?」








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『異常気性』のなろ様への誕生日プレゼント!ま、間に合った!(現在10/27 7:20)
リクエストは来良でしたので誕生日の時期にも合わせて彼らには紅葉狩りに出掛けて貰いました。話的には1巻から2巻の間がメインでラストは8巻以降…10月には全部解決しなくていいから正臣、帝人、杏里ちゃん三人仲良く揃っていて欲しいという願望。仄かに帝正小説の【おもいでの場所で】と関連していたりしますが多分読んでなくても大丈夫。

そういうわけでなーちゃん誕生日おめでとう!






あきゅろす。
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