[携帯モード] [URL送信]
真夜中の鬼ごっこ(臨正)


俺は走っていた。池袋の夜の街を走っていた。
人にぶつからないように気をつけながら、後ろから追ってくる黒い人影に追いつかれないように。
ちらりと後ろを振り返れば先程から一定の距離を保つように折原臨也がそこにはいた。


俺は、今、折原臨也に追い掛けられている。
俺は、今、折原臨也と鬼ごっこをしている。


事の始まりは30分前。

「ねえ、正臣君。鬼ごっこをしようか。」
「…は?」
「俺が鬼で君が逃げる。制限時間は一時間。範囲は池袋。そうだな、君が逃げ切れたら君の『お願い』を一つ叶えてあげよう。」

いきなり呼び出されたかと思ったらこれまたいきなりな提案。俺はうんざりとした表情でその話を聞いていた。どうせ断ることなんて出来ない。

「なんでも叶えてあげるよ。俺に『死ね』でも『消えろ』でもね。」

一方的に話を終えると臨也さんは時刻を確認し、日付変更と共に終了だね、と笑う。
本当、この人の考えはいつも分からない。『鬼ごっこ』に『お願い事』。何が望みで何が目的なんだ。

「じゃあ23時丁度に開始ね?俺はその10秒後に君を追い掛けるから。」

まぁ、いい。どうせいつもの気まぐれで暇潰しなんだ。それに付き合うだけで何か言うことを聞いてくれるらしい。
携帯を取り出してあと1分程で23時だと言うことを確認し、臨也さんに背中を向けた。その背後から開始のカウントダウンが聞こえ、零になると同時に俺は走りだす。



そしてかれこれ30分が過ぎた。その間臨也さんに追い付かれそうになったり、臨也さんを撒いたりしたが、殆どは一定の距離を保っている。殆ど30分走りっぱなしで体力もそろそろ底を尽きかけている。別に捕まったって俺にデメリットはないのだが、やはりメリットが頭をチラついて簡単にこれを終わらせるという選択肢がない。
しかし臨也さんの足なら俺に追いつくことなんて容易いんじゃないんだろうか?
平和島静雄との飽きない追い掛けっこでその脚力を発揮するように、俺との鬼ごっこでこうまで長引くなんて思えない。
臨也さんの様子を伺う様に軽く振り返れば息一つ乱していない余裕のあるムカつく顔と目が合い、何か笑われたので舌を出して前を向く。
やはり、臨也さんは本気じゃない。
そう核心すると何だか悔しくて淋しくて、俺は後ろの臨也さんに聞こえる様に声を張り上げた。

「臨也さん。臨也さんが勝った場合のご褒美がまだでしたよね。俺を捕まえられたら一生アンタのモノになってあげますよ。」

一度だけ振り返り、臨也さんを嘲笑するように笑った後、俺は体勢を直してスピードを上げた。
一瞬見えた臨也さんのぽかんとした拍子抜けの顔を思い出しクツクツ笑いを噛み殺しながら何処へ逃げるかを考えると同時にどう負けるかを考えた。
あの人は本当馬鹿だと思う。
こんな方法でしか確かめられないのだから。

時間も残り10分ぐらいか。道路を渡ろうと車が来ないか、信号が青かと車道を見ると運悪く信号は赤だし車の通りが多い。仕方がなく歩道橋を見つけたのでそれで渡ることにした。
さて、どうしようか。追い詰められてとかは格好悪いしな、と逃げるルートを頭に描きながら階段を上り切り下に車が通る橋を渡る。
相変わらず臨也さんとは一定の距離で、臨也さんは本当どうしたいのだろうかと思う。俺に好きだと何度も告白してきて、行動に移してきて、だけどこんな試すような真似をする。まぁ、俺が素直に成り切れずに嫌いだ死ねだ言うからなんだろうけど。だって実際うぜぇし。
道路を渡り切ると下りの階段を飛ばしで下りて行く。

「?!」

臨也さんの様子も伺いながら、考え事をしながらがいけなかったのか、中間程で階段を踏み外しバランスを崩した。不安定な足場ではバランスを取り直すこともままならず、そのまま階下まで落ちるのかと身構えた。
そんなとき珍しく焦った臨也さんの呼ぶ声が聞こえ、閉じていた目を開けると臨也さんに抱きしめられていた。完全に地面にたたき付けられる前に抱き止められたらしい。臨也さんの腕の中、温かくて安心するのが悔しい。

「全く…何してるのさ…」
「ありがとうございます。」

体勢を整え、解放されると臨也さんの向き直る。取り出した携帯で時間を確認し小さく笑って見せた。

「どうやら俺の勝ちみたいっすね。」
「…あぁ、そうだね。それで俺はこの場で消える?」

ディスプレイに映し出される時刻を臨也さんにも見える様にしながら勝ちの宣告をする。本当は負けようかと考えたけど最後になってなんかしゃくになったんで止めた。そうだろ?だってそれじゃ、

「そうっすね。一生俺について来て下さい。隣に居ないと怒りますからね?」

臨也さんだけの一方通行みたいじゃないか。一応俺だって、かなり嫌だけど腑に落ちないけど、臨也さんのことが好きなんだから。




【真夜中の鬼ごっこ】





「何…それ…」

あ、臨也さんのキョトンとした顔面白い。

「一生俺の奴隷ってことっすよ。」

悪戯っぽく笑うと臨也さんも笑顔になる。何だかんだでこの人が好きなんだと再認識してしまう瞬間だ。






‐‐‐‐‐‐‐
挿絵的な何か
白雪様ことしらのちゃんへの誕生日プレゼント!よし!間に合った!てか余裕だった、よかった!
臨正とのリクエストで、誕生日プレゼントなんだから殺伐、シリアスはなしだなぁ。でも臨正らしく…と思っていたらこんな意味不な話になりました(笑)あれー?(^p^)?
ちなみにこの逆、臨也が逃げて正臣が追いかける(同じ鬼ごっこ)ネタもあったけどラストがわざと捕まるだったからこうなった。
この正臣は臨也のこと好きだけどあの一件があるから素直に好きって言えない素直じゃないって感じだから臨也はいつも正臣にデレる場面を与えているんだけど正臣にはそれが臨也は確認しないと不安なんだと思っているというややこしい設定(だが今考えt←)

しらのちゃん、良かったら貰ってね!イラストも下手でゴメン!あ、もちろん書き直しとかOKだから!
これからもよろしく!



あきゅろす。
無料HPエムペ!