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追いかけっこまであと、(臨正)



友人や知人と別れた深夜の公園。さっきまで一緒だった新羅さんとも別れてそろそろ家にでも帰ろうとした時、あの人は現れた。

公園を出ようと出入口に向かっていると闇より更に濃い黒い人影。見覚えがある姿に思わず嫌な表情を作る。こんな夜中に会いたくない人物だから仕方がない。(いや、寧ろどんな時間帯でもそうなんだけど。)

「ん?今の新羅の奴…?おや、あれは正臣くんじゃないか。」
「な……いざや、さん。」

折原臨也。過去に色々有ってからは大嫌いを通り越し嫌悪感を与えてくれる。
臨也さんは新羅さんと擦れ違ったらしく彼が去った方を一度見たかと思うとこちらに振り返り笑顔を浮かべて近付いてくる。当然俺は嫌な顔を浮かべたままだったが臨也さんには関係ないようでいきなりデートしようなんて馬鹿げた事を言ってきた。何を突拍子もなく…。本当この人の行動は理解出来ない。何故こんな真夜中に公園にいるのかも疑問だし第一仕事はどうしたんだよ。仕事は。そう思いながら尋ねてもはぐらかされるだけで、俺はそのまま引き返す形に公園内の適当なベンチへと連行された。
おいこら、俺の意志は無視か!
それからちょっと待って居ろと言うと何処かへ歩いて行ってしまう。いきなり連行の次は放置か。何様のつもりなんだよ。相手に付き合う理由もないし今のうちに逃げてやろうかとも思ったけれどそうすれば今度は逆に後々が怖い。臨也さんの事だ、平気で俺の大切なものを傷付けてくるに違いない。それならば、この時間を我慢するだけでそれらが守れるなら我慢した方が良い。
ベンチに腰を下ろして臨也さんが戻ってくるのを待っていると缶珈琲片手に戻ってきた本人の口から同じ事を問われた。
それにさっき考えていたことを伝えると意地の悪い笑みが浮かぶ。

「いや、賢明な判断だと思うよ?現に君が逃げたりしたら…いや、最初から逃げられはしないよね、大事なお友達が居るんだし?」

ほら、やっぱり。始めから選択肢は用意されているようでされていない。いや、されていたとしても結局選ぶ方は決められていると言うことだ。
俺は臨也さんが買ってきてくれた珈琲を受け取り、一気に飲み干すと相手がさっさと飽きることを願いながらトコトン付き合ってやることにした。

それから話をしようと言うことになり、臨也さんが学校のことを尋ねてくる。なんで大嫌いな奴と世間話を、と思いながらも付き合うと決めてしまった手前無視するわけにもいかず、ありのままの学校生活を語る。嘘を言っても仕方がないし理由もない。何よりこの人相手に嘘など通じるはずもない。すると話を聞いて羨ましいと笑う相手に何故と言う疑問が過ぎる。臨也さんだって人の子だ。一応俺と同じ時期が在ったはずだ、どうしてそんな顔をするのだと逆に問い返したとこで気付く。自分の失言を。良く考えてみろ、臨也さんの天敵、平和島静雄もこの人と同じ学校だったんだ。臨也さんのことならその中でもやはり楽しみは見出だすだろうが人並みの学生生活を送っているわけがない。いや、平和島静雄が居なくても人並みの学生生活を送っているとも思わないが。
自分の失態に後悔しながら振った話題を口にする臨也さんはやはりそのことを思い出したらしく表情が曇る。変なとばっちりはゴメンだ、慌てて話題を変えれば今度は墓穴を掘った。なんで大っ嫌いな相手を学園祭という大イベントに呼んでしまったんだ。しかし口から出てしまえば後の祭り。しかもなんか誘ったことになっている。もう知らねぇ!臨也さんに知られてしまったなら絶対日時とか調べて押しかけるに決まっている。だからこれはもう当日臨也さんに出くわさないことを願うだけだ。

「…正臣くんが誘ってくれるだなんて…次ぐらいはシズちゃんに殴られてもいいかもしれない…うん、正臣くんを見に行くよ。」

再び後悔していると聞こえる呟きに本当そのまま死んでくれないかなと思いながら、だけどこんな些細なことで喜ばれ、少しだけ嬉しくなって、その感情に気付かないフリをして、無視を決め込み、俺は臨也さんに記憶飛ばせと怒鳴る。
そうすれば俺の学生生活も安泰だ。そう、安泰なんだ。臨也さんが近付いてこなければ、大丈夫なんだ。

「こんな嬉しい記憶を消す程までは殴られたくないよ。」

満足げな臨也さんに髪を撫でられ、一瞬見とれてしまう。今までされてきたことを忘れてしまうぐらい、どうでもよくなってしまうぐらい、この人と学園祭を回っても良いかと思ってしまった。
一瞬の感情の膨らみに呆然としていると隣に居た影が動く。反射的にそちらを見れば立ち上がる臨也さんはぐいっと軽く伸びをしながら俺に帰ることを促した。それに公園内の時計に視線を向ければかなり遅い時間。流石にまだ明日も学校だ。若いからとは言え完徹は多少辛い。少しでも睡眠を取るかと呟いていると「子供は沢山眠って成長しなきゃ。」と言うガキ扱いの呟きが聞こえた。臨也さんから見れば確かにまだガキだろう。だけどガキ扱いされたくない歳でもあり、少しムッとしながら立ち上がると、送っていくという相手の言葉を無視して歩き始める。すると背後から聞こえるどこか弱々しさを感じる声。

「…またね、正臣くん。また、…話ししようね。」

その声が言葉がいつものムカつくものと少し違うのが何故だかムカついた。
折原臨也と言う人間は来るものは拒まず、逃げるものは引きずり込む、そんな最悪野郎だ。いつもなら、いくら邪険にしたってストーカーの様に送っていくとついてくる、そんな最低野郎だ。

「……なんすか…そのもう二度と会えないような言い方は?」
「…、!…そんなつもりは無いよ。また君を探すから、君が逃げようとしても。」

数歩歩いた所で立ち止まれば振り返りいつになく変な折原臨也を睨み付けた後、ゆっくり臨也さんに近付けばその胸倉を掴んで怒鳴りつけてやる。

「……ならさっさと捕まえに来ればいいじゃないすか。何度捕まったって逃げてやります。……あんたが追い掛けて来る限り逃げ続けてやる。だから、………追って来い。」

折原臨也と言う男は最悪野郎で最低野郎で俺がどんなに嫌だっても嫌いだって言ってもめげずに追い掛けて追い詰めて、最後には臨也さんのとこにしか逃げ場を残さない、そんな最低最悪野郎だ。
そうやって追って来てくれるから、俺は…。

「…熱烈だね。いいよ、どっちが先に脚を止めるかな…俺を本気にさせた…正臣くんも覚悟しなよ…」

臨也さんの言葉にはっと我に返る。俺は今何を考えていた?
混乱する頭、ふと耳元に感じた気配、甘く低く囁かれて呆然としていたら胸倉を掴む手を解かれた。声を上げる前に臨也さんは離れていって、いつの間にか並ぶ形に居れば帰るよう背中を押される。

「さて。ほら帰った帰った。明日から正臣くんとの追いかけっこが始まるんだから…体力回復の為にも家帰って寝なよ。」

もういつもの折原臨也だ。ヘラヘラ余裕たっぷりな笑みを浮かべたムカつく野郎で突き放したってまためげずに来る、俺の知る折原臨也だ。そんなことを頭の隅で思いながら小さく臨也さんに気付かれないよう笑って俺は歩きだした。




【追いかけっこまであと、】







「俺はアンタが追い掛けてくるから逃げていられるんだ。」

臨也さんが見えなくなると俺は小さく呟いた。その意味を理解しないまま、無意識に。









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8/7に行ったなり茶より、『Altruista』の折原朔夜様こと朔くんと仲良くなったということでコラボしました!(たしかそんな流れ)
臨也⇒朔くん
正臣⇒湊
でなりきりを進め、それぞれ操ったキャラ視点で書こうぜ☆な何とも湊らしい思い付きから出来上がりました。臨也視点は朔くんが書いてくれるんだぜ!楽しみだ!


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