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全てを見せて!(静正)



発端は、あの人の言葉だった。

『君はシズちゃんの寝顔を見たことあるかい?』

そう言って差し出された一枚の写真にはまさしく今話題に上がった恋人の安らかな寝顔が写っていた。普段の二人なら考えられない瞬間を、目の前の人物は写真に納めている。逆に俺は…こんな恋人の姿を今まで見たことない。家に泊まり行ったことも何度もある。だけどその何度も俺は恋人の安らかな寝顔は見たことない。

『臨也さん…』
『?』

臨也さんを強く睨む。どうしてそんな写真を持っているのか。どうして寝顔を見れたのか。聞きたいことは沢山あるけれど一先ず、

『その写真、幾らで売ってくれますか?あと出来れば高校時代のも。』


♂♀


「珍しいな。土日でもねーのに泊まりたいなんて。」
「いきなりすみません。迷惑すか?」
「いや、そんなことはねぇよ。ゆっくりしていけ。」
「ありがとうございます!」

俺は一つの野望を抱え静雄さんの家に押しかけた。ポケットに入っている臨也さんから買った静雄さんの写真を手探りで触りながら誓う。
今日こそ静雄さんの寝顔を見る!
今まで特別気にしたことはなかった。一緒に居られるだけで、触れ合えるだけで満足だった。だけど、俺の知らない表情を他人が知っているのは少しだけ腑に落ちない。まだ幽さんみたいに家族なら分かる。俺よりも何倍も一緒の時間を過ごしているのだから。確かに臨也さんだって高校時代からの犬猿の仲だ。俺よりは長い付き合いだ。分かる、俺よりも色んな静雄さんを知っているだろうって分かる。が、分かっても腑に落ちないのだ。それが寝顔なら尚更。寝顔とは本来安心しきっていないと傍にいる相手を信頼していないとあぁまで安らかな寝顔になんてならない。つまり、俺は見たことない安らかな寝顔をいつも喧嘩ばっかりで仲の悪い臨也さんは見たことあることが正直ムカつくのだ。…まぁ、何で一緒に寝たりしているのに見たことないかというと…あれ、だ。恋人同士が一つ屋根の下、夜を明かすならまぁ、そういうことで俺が疲れきって先に寝て起きるのも遅いのが原因とも言えるのだが…だから今日はシない!

「紀田?何さっきからブツブツ言ってんだ?」
「へ、いや、何もないっすよ。あー静雄さん、ご飯何か作りましょうか?」

俺が密かに決意をしていると静雄さんに声を掛けられ慌てて笑顔を作り話題を変えた。


それから一緒にご飯を食べて一緒にお風呂に入り、リビングのソファに並んで座りTVを見ている。恋愛ドラマを見ながらこれからをどうするか考える。きっと今日もするのだろう。お風呂でもうやたらめったら触られ実はその気になっていたりするのだが…今日は目的があるから易々とは寝ない。

「紀田」
「はい?」

ベッドにインしたらそのまま召し上がれ、になる前にどうしようかを考えていると不意に静雄さんに呼ばれ振り向けば振り向き様にキスをされた。キョトンとしていると触れるだけのそれは深まっていく。

「ふぅ…ん…」

唇を舐められれば静雄さんを迎入れるように口を開く。熱い舌が侵入してきて口内を動き回り身体が熱くなるのを感じた。歯列をなぞられ舌を吸われれば背筋がゾクリとする。あぁ、やばい。流される。そう思った頃には俺は、静雄さんを求めていた。



「ん…」
「どうした?今日はすぐ寝ねぇのか?」
「…しだけ静雄…さんと…」

愛を確かめ合い、至福に満たされ疲労が身体を襲う。酷い睡魔だが諦め切れない目的。今寝たら昼過ぎまで起きない自信がある。だから眠たい目を擦りながら静雄さんの温もりに抱かれて起きている。

「眠いなら寝ろ。寝てる間にどっか行ったりしねぇからな?」

ポンポンと寝かしつけるように頭を撫でられ検討違いなことを言われふるふると首を左右に降る。静雄さんが傍に居てくれることは信じてる。俺はただ見たいだけなんだ。

「しず…ぉ…さんの…ね…が、ぉ…」

寝顔が見たいだけなんだ。頭の中が睡魔でぐちゃぐちゃになって何を口走っているか分からない。俺はごにょごにょ口を動かしながら眠りへと落ちていった。




翌朝、思ったよりも早く起きれた俺はそっと横を見る。思ったよりは早い起床だが普通ならば遅い時間。いつもなら隣に静雄さんは居ない(朝ご飯の準備してくれてるから)か起きて俺のことを抱きしめたり撫でていたりするのだが、今日は違った。すやすやと聞こえる安らかな寝息。子供のようなあどけない寝顔。静雄さんが今日は珍しく俺よりお寝坊さんだった。
目的である恋人の寝顔を間近にし俺は驚きと喜びでジッと静雄さんの寝顔を見入った。今日はどうしたのだろう。少しだけ疑問に思うが答えを出す前に考えるのを止めた。だって愚問だろ?恋人が寄り添い寝ている。何ら可笑しいことなどないのだから。

「ヘヘッ。やっと見れた。」

静雄さんの寝顔を見て俺は小さく笑った。





【全てを見せて!】





あ、そうだ。記念に写真撮っとこ。携帯は何処だったっけ…。
脱ぎ散らかされたままの俺と静雄さんの服。手探りに俺の服を持ち上げるとパサリとポケットから『何か』が落ちた。その『何か』は静雄さんの顔を直撃してしまい、無防備な寝顔が歪む。小さな声を零しながら目を覚ます静雄さんに俺はどうしようもない冷や汗が頬を伝う。寝顔を勝手に撮ろうとしていたことも静雄さんの機嫌を損なうことだろうが今直面している問題はそこじゃない。

「…なぁ、紀田。この写真のこと。詳しく教えてくれねぇか?くれるよな?」

落とした『写真』に問題がある。それは静雄さん家に来ることの要因となった写真と、一緒に臨也さんから貰った静雄さんの高校生の時の写真。

「…あ、えっと、静雄さん愛してますよ?」

俺は苦笑を浮かべるしかなかった。

その後?その後は勿論ちゃんと説明するまで静雄さんの尋問が続いたよ。お陰で足腰立たね…。






‐‐‐‐‐‐
…うん、思った以上に恥ずかしい(苦笑)甘い…甘い、ね、うん。正臣の暴走は書いていて楽しかった☆
さてはて、こんな作品を相互お礼として、『Altruista』の折原朔夜様に押し付k…捧げます+
リクは静正だけであとは自由だったんですがはい、自由にし過ぎましたw
朔くんのみお持ち帰り、書き直し、苦情受け付けてるよ!
ではこれからも宜しくお願いします!







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