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医者の不養生(新正)



そういえば地味に同居を始めて半月になるんだな、と学校帰りに思い出す。あの人の事だからちゃんと覚えていてきっと家はパーティーをする時みたいに飾られていてご馳走が用意されているに違いない。付き合って一ヶ月とかそんな区切りが良いときも同じ事をしていた。相手の方が幾つも年上なのに、子供っぽさが抜けていない恋人を浮かべて俺は小さく笑う。
今日は俺からも何かしてやろう。

どんなサプライズが待っているだろうかと少しだけ楽しみにしながら家へと帰る。玄関のドアを開けてもいつも通りで拍子抜けだ。以前なら部屋と言う部屋、全部飾り付けられていたと言うに。それとも仕事に出掛けてしまったのだろうかと思ったが靴はある。それならば忘れてしまったのか…あの人らしくないと思いながらそれなら逆に俺がサプライズしてやろうと意気込みリビングに向かうと見慣れた人物が床に倒れていた。それは間違えなく、今考えていた恋人の姿で、

「新羅さん!」

俺は慌てて駆け寄った。


♂♀


「ん…」
『あぁ起きたか。具合はどうだ?』

空が闇に包まれ、今日と言う日が始まり数時間。正臣によってベッドに運ばれ寝かされていた新羅が目を覚ました。すると新羅は心配そうに自分を覗き込んでいる黒い影と腹辺りに感じる重みに気付いた。そっと重みに視線をやれば見えた茶髪に幼い寝顔。

『あぁ、正臣君か。さっきまでは起きていたんだけどな。寝てしまったようだ。』

新羅の視線に気付いたセルティがすかさず説明した。
正臣が倒れている新羅を発見して慌ててセルティに電話をしてきたこと。慌てた様子からただ事ではないと気付いたセルティがまず正臣を落ち着かせた後、一応医師免許を持つ森厳に連絡を入れ新羅の診察を頼んだ事。ただの風邪と聞いて安心した正臣だがずっと新羅の傍に居たこと。

『喋れない私に電話してきたぐらい慌てていたんだ。…大事にされているな。』
「迷惑掛けちゃったね。」

一通り話を聞き終えれば眼鏡を掛け上体を起こす。するとその振動で正臣から小さな声が漏れ聞こえ起こしてしまったかと見るが未だにスヤスヤと寝息を立てている。そんな正臣を愛おしげに見つめながら新羅は髪を梳くように撫でた。

『礼なら正臣君に言うんだな。眠っている間も濡れタオルを取り替えたりと世話をしていたんだからな。』
「うん。起きたら目一杯お礼をするとするよ。セルティもありがとう。」
『気にするな。』

新羅の体調もよさ気な様子を見てセルティは傍に置いてあったメットを取ると立ち上がり部屋を出て行こうとする。一度ドアを開けて暫く考えた素振りを見せた後、PDAに何かを打ち込み新羅に見せた。

『いつ正臣君は私の弟になるんだ?』
「…セルティ、正臣君はまだ16だよ。日本では男子は18になるまで結婚は出来ない法律なんだ。」
『そうか…まだ先の話か。残念だな。』

しょんぼりと肩を落とすセルティに小さく新羅は笑みを浮かべながら帰るらしい彼女に気をつけてと一言掛け見送る。
さて、と新羅は未だ眠り続ける恋人を見て額にキスを落とした。

「そんなに無防備だと狼さんに食べられちゃうよ。」

安心仕切って寝ている正臣を己の隣に寝かしつけると新羅もまた眠りに就く。風邪を移してしまうかと思ったがそれなら今度は自分が面倒を見てやればいいと考え直すと正臣を抱きしめる。


【医者の不養生】



(…こんなにも心配されるとは僕は愛されてる!)






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…あれ、正臣の出番が少ない…だと?!物凄く設定殺しだとヒシヒシ感じますがゆーらん様のリク『新正。同棲ネタ。』になります。同棲…ネタになってない気がしてなりません(汗)
ゆーらん様のみお持ち帰り、書き直し、苦情等受け付けております、企画参加ありがとうございました!

ちなみにセルティは新羅のお姉さん的ポジションです。





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