虫よけは如何？(正帝)
今日の帝人は優しかったりツンツンしていたりする。が、まぁ何時も通りな訳で、一緒に風呂入ろうぜ、って誘っても断られた。別にいいじゃんかよ、恋人同士なんだしさぁ。チューもその先もやることはヤッてる仲なんだしよぉー。
ここで引き下がったら男じゃねぇってことでラブアタックしていると、ニッコリ笑顔の帝人と目が合い
「さっさとお風呂入ってこい！」
と追い出されました。ちゃっかり着替えとかを投げてくるあたり優しさも垣間見える。そう、帝人自身に優しい優しさが。
仕方がないので大人しく独り淋しく浴室へと向かった。
「帝人、風呂空いたぞ。」
「んー分かった。」
風呂上がり、部屋に戻るとベッドの上で寝転がり携帯を弄っている帝人に風呂が空いた事を伝える。半ば空返事で帰ってくると言うことはチャットか何かやってるのか？そっと近付いて覆いかぶさる様に跨がれば背後から画面を覗き込んだ。
文字までは読む気はないがやはりチャット画面だった。愛しい恋人といるってのにチャットですか、あーそうですかー。
少しだけ淋しくなればそのまま後ろからぎゅーと抱きしめる。別に俺といる時ぐらいチャット止めればいいのに。んだよ、そんなに俺といるのがつまらないっつーのか。
グリグリ顔を押し付けていると不意にふわりと香る匂い。柑橘系の匂いで、それは帝人からする。帝人が香水とか付けるとは思えないし、この微かに香る匂いからして移り香っぽい。
今まで気付かなかったが…どういうことだよ、帝人。
「あぁ、正臣。邪魔、重い。」
「なぁ帝人。今日誰かと会ったか？」
「はぁ？……会ったけど？」
「誰だ？！」
体を反転させて仰向けになる帝人にぐいっと顔を近付け直球に聞いてみる。ウジウジ悩むの男らしくねぇしな！…正直、怖い部分もあるが帝人を疑いたくない。
怪訝な顔をしながら頬を掻いた後紡がれる言葉。
「…君だけど？」
その内容にキョトンとしてしまう。
「いや、そうじゃなくて…」
確かに帝人の答えは間違ってないがそうじゃないだろ。天然、天然なのか？！
身構えていた分拍子抜けしてしまいはぁと帝人の肩に顔を埋める。やっぱり匂う香りにふと何処かで嗅いだ事があることに気が付いた。嗅いだ事があるとすれば可能性的に臨也さんだろうか。あの人スキンシップとか激しいから可能性は無くはない。でも前に嗅いだ香水の匂いとは違うしもっと極最近嗅いだ事のある匂いだ。
「…正臣、どうしたの？」
「もしかして」
そうだ、これは俺のお気に入りの香水の匂いだ。今日も付けていた。ってことはこれは俺の移り香…？
そう思うと嬉しくて帝人をぎゅーと抱きしめスリスリと顔を擦り寄せた。あぁそうか、ずっと抱き着いていたから匂いが移ったのか。今まで気付かなかったのは多分俺も同じ匂いがしたからで、俺だけ風呂入って匂いが取れたから帝人に移った匂いにやっと気付いたってところか。
「とりあえず退いて？」
一人納得していると状況を理解していない帝人からの冷たい言葉。やっとモヤモヤが解決したんだしやだーっと駄々をこねると足で腹辺りを蹴られた。軽くだから痛いってわけじゃねぇけどそれはなくね？
「ほらお風呂入ってくるからさ。」
シッシッと手払いされれば更に落ち込むぞ、帝人。ガクリとうなだれている隙に帝人はさっさと部屋を出て行ってしまった。
「本当に俺達恋人か？」
恋人にしては冷たい帝人に少々自信を無くしながら帝人の帰りを大人しく待つことにした。
そして30分程で帝人が風呂から上がってきた。湯で軽く紅潮している肌は何とも色気を放つもので、ベッドに腰を掛けた帝人に後ろから抱きしめた。
あぁ、やっぱり匂い取れている。残念だなと思いながら匂いが取れたならまた付ければいいと考えつく。ずっと傍にいて、俺の匂いを帝人に、他の奴の匂いが付かないように。
「…何か今日の正臣甘えん坊さんだね。」
「そうそう、だから帝人は俺に優しくしなきゃだめなんだぞ。」
「えーやだ。」
「即答かよ。ひでぇーの。」
まぁ、振り払わないだけでも優しさは感じるし、今はこれで我慢しよう。
チュッと無防備な首筋に吸い付き赤い痕を残す。帝人が直ぐに反応したけど遅い。服を着ても隠れる事のない場所に赤々と残された痕。
【虫よけは如何？】
「…の、バカ臣！」
帝人の叫び声と共に蹴り飛ばされた事は言うまでもない。
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『宙変地異の前触れか』の陽斗様に捧げます、サイトの１万Hitお祝い小説です。
この話は香水が発売されると知った時陽斗様とのメールでマーキングネタを話していて出来たものだったり。
そら様に捧げさせてもらった【つくづく甘い僕】の続編になっていたり。
サイト、２万Hitおめでとうございます！これからもstkさせてもらいますね！
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