[携帯モード] [URL送信]
弱いから逃げようとした。だけど、(沙+帝正)

「正臣、今日もチャット?」

臨也さんからの用事が終わり家に帰り一息。そろそろパソコンでも触ろうかと言うときに背後から優しい問いが掛かる。振り返ればそこには優しく微笑み立つ沙樹がいた。そうだよ、と答えながらパソコンを起動させていると背中に温もりを感じる。

「正臣、暇があるとすぐチャットだよね。…また彼のことを引きずっているの?」
「……そんなんじゃないよ。」
「嘘。だって正臣、チャットしてるときの方が楽しそう。特に、」

この子がいるとき。と起動され接続されたチャットルームを指さす彼女の指先は『田中太郎』のHNが。後ろから持たれ覗き込む彼女を横目に小さく息を呑んだ。そんなつもりはなかった。ただ、こうしているとあの時を思い出すなどと思っていただけ。2年くらい前、あいつと再会するまで話していたチャットのことを。

「正臣、いいんだよ。会いに行っても。…と言っても逃げてる正臣にはまだ無理かな?この前も会わずに帰ってきちゃったみたいだし。」
「沙樹はいつも直球だな。」

耳が痛い。真実を言い当てられ上手く笑えない。俺は逃げている。答えを出さないまま、真実が怖くて、俺はただただ逃げている。そんな俺に、沙樹はいつも背中を押してくれる。

「正臣、同じ後悔するなら行動した方がいいと思わない?」
「…沙樹はそんなにも俺と帝人を逢わせたいのか?」
「うん。私は正臣が幸せに笑ってるほうが好きだもん。」

横目で伺い取れる彼女の顔は笑顔。心からの笑顔に罪悪感と感謝が混じる。

「大切な…人なんでしょ。竜ヶ峰帝人って子。」

そっと伸びてきた手は俺の目の前にあるパソコンのキーボードに触れる。そしてチャットの機能の一つ。内緒モードを選択し

『帝人、話がある。今度会えるか?』

と打つ。打つだけ。書き込みはしなかった。

「決めるの正臣。大丈夫だよ。正臣が選んだ子だもん。」

それだけ言い残すと沙樹は離れ立ち上がる。何処かに行くようだ。何処に行くのだろうかと片隅で考えながら沙樹が書いた文字を消した。
そしてポケットから携帯を取り出し、ある人物へ電話する。

『…もしもし?』

会わなくなってまだ半年も経たってはいないけれど懐かしく思う声に決心が鈍る。

『…どちら様ですか?』
「帝人、今度の日曜暇か?」

多分、一瞬沙樹には頭が上がらないと思う。




‐‐‐‐‐‐
帝正というより正帝。寧ろ沙正(笑)
大丈夫、正沙じゃない(マテ)
【近くて遠い距離】と少し続きっぽいもの。アフターストーリー?
沙樹ちゃんと正臣の関係も良いんだよな。初めて沙樹ちゃん見た時は正臣を不幸にする子!とか認識しちゃったけど最後臨也を裏切り正臣を選んだ所であー正沙も良いと思った。
でも僕の中の沙樹ちゃんはなんだかお母さんっぽい(苦笑)






第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!