プレゼント-幸村精市-
朝目覚めると、愛しの愛しの彼女がベットの中にいた。驚いてまばたきを繰り返す俺に向けて彼女は言った。
「今日、精市の誕生日でしょ?プレゼント悩んだんだけど決まらなかったから、私でいい?」
寝起きの頭をフル回転させて、彼女の言葉を理解する。えっと、そう。今日は俺の誕生日で、これは、あれだよね。プレゼントは私ってやつ。恥ずかしそうに言う彼女は、本当に可愛い。
唇を合わせれば、嬉しそうに顔を綻ばせた。俺の胸に顔を埋めてくる彼女の体を抱き締めて、思う。俺って本当に幸せ者だなぁ。
「ってゆう夢を見たんだ」
「………」
「ゆまのあの笑顔、可愛かったな」
結局、朝のは夢オチだった。まぁ、普通に考えれば、あんなことをしてくれるほど、ゆまは積極的じゃない。いや、素直じゃないのか。
俺と付き合っていることもあまり皆に知られたくないらしい。だから、二人で話すときは、俺が蓮二に頼んで借りた生徒会室で。(しかし精市。こちらにも仕事というものが(頼むよ蓮二)(…わかった)というやりとりもあったような無かったような。
「精市って、普段そんなこと考えてるの?」
「いつも考えてるわけではないけど、朝起きて好きな人が目の前にいるのは、幸せだと思うよ。まぁ近い将来、ゆまも俺と同じベッドで一晩過ごすことに「精市っ!」
「ふふっ、冗談…でもないか」
少し意地悪をすれば、顔を赤くして俺を睨んでくるんだけど、その反応が俺のドストライクだったりする。
「ほんっっとに性格悪いね!」
「そんな俺と付き合ってるゆまは頭が悪いね」
「なっ…!もう、行く!」
拗ねてる顔も可愛いんだけど、今日は俺の誕生日だし、もう少し一緒にいても許されるよね。
「ゆま」
「何かないの?俺、今日誕生日だよ」
生徒会室を出ようとするゆまに声をかければ、ドアノブに置いた手を引っ込めて振り返った。俺を睨み付けながら近寄ってくる姿を微笑みながら見ていると、眉間の皺がさらに深くなった。
「精市」
「ん?」
「今日は、精市の誕生日だから特別にしてあげるだけ。絶対調子乗らないでね」
一息でそう言うと、深呼吸をして、俺のネクタイを引っ張った。
「いや、え?…っん」
───え、え、え?これは、夢?いや、違う。すぐに離れたけど、確かに唇は暖かかった。
「えっと…?」
「…っホント意地悪…」
…??いや、嬉しいんだけどね?嬉しいんだけど、キスの意味が理解できていないんだ。この様子じゃ、したいからしたって感じでもないみたいだし…
「え、何かないのって、キスのことじゃなかったの?事あるごとに私からキスしろって言うくせに!」
あぁ、なんだ。結構本気でキスしてって言っても、「はいはい」って流すから、あんまり意識してないんだと思ってたけど、ちゃんと考えてくれてたんだ。
去り際のあの言葉。本当は違ったけど、君の可愛さに免じてそういうことにしといてあげる。
「あぁ、もー…、大好きだよ、ゆまっ!」
「わっ!」
勢いよく抱きしめれば、ふわりと大好きなゆまの香りがした。
君のおかげで最高の誕生日になった。
「誕生日おめでとう」
「うん、ありがとう…」
腕の中で素直に紡がれたその言葉は、はっきりと耳に届いた。
「ところでゆま?俺ね、朝からあんな夢見ちゃった上に、ゆまからのキスも貰えてそろそろ限界なんだけど」
「せっ…精市のばか!やっぱりするんじゃなかった!」
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