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夏の日-白石蔵ノ介-

暑い。暑い。暑い。とにかく暑い。尋常じゃない暑さと夏休みぼけで、授業に集中できない。

大体、先生は残暑なめてない?7月、8月も暑いけど、9月も相当暑いんだよ。それなのに生徒に授業受けさせて、成績下げるなって。なら、教室にクーラー付けるか、夏休み長くするかどっちかして。

下敷きで扇いでいると「先生だって暑いんだからやめなさい」と注意するくせに、職員室はクーラーガンガンじゃん。私たちは、1日暑いんです。本当ふざけてる。

こんな愚痴ばっかりガキだなと思うけど、全ては暑さのせい。普段はこんなにイライラしないもん。暑さで頭がやられてるんだ。きっとそう。

そんなことを考えてるうちにも、授業は進んでいる。え、うそ、私そこ聞き逃した。こういうときに限って指されるのは、分かってる。だけど、大丈夫。私の後ろの席は、あの白石くんだから。

案の定指名されて、迷うことなく振り返る。苦笑いを浮かべる白石くんが指差す文を読み上げた。

ありがと、と口パクで伝えると、優しく微笑み返してくれた。

それからも、授業は適当に聞き流して終わった。

休み時間も、暑くて何もやる気がしない。唯一動いているのは下敷きで扇ぐ手だけ。なんで、こんな暑いのに髪結んでこなかったんだろ。後悔しながら手の甲で後ろ髪を上げ、下敷きで風を送る。んー、生温いけど無いよりはマシかな。その時、首筋に少し冷たい吐息が当たった。


………吐息?


「ぅわあっ!!」

色気のない声だと一瞬思ったけど、つっこむ所はそこじゃない。振り返ると、目を細めて私を見つめる白石くん。な、何その顔、すごいかっこいいんですけど。

「え、な、何っ!?」

「なんちゅーか、うなじってそそるなぁ」

「はっ!?」

いきなり何を言い出すかと思えば。白石くんまで暑さの被害者に?

「白石くん暑い?大丈夫?水飲む?」

「しかもな、下敷きで扇ぐ度にシャンプーのええ香りがすんねん」

「そ、そうなの?」

「好きな子にんな事されたらほんま危ないわ」

一瞬、時間と思考が止まった。白石くんの言葉を理解するのは、暑さにやられた頭では容易じゃない。

だけど、理解するより早く、私の心臓が速く動き出し全身の血が熱くなるのを感じた。どうやら私は頭のみならず体の隅々まで、暑さにやられてしまっているらしい。



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