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「・・・・どうしたんだよ、それ」

「・・・・・」

「旦那・・・暑くないんですかい?」

「うんにゃ〜別に暑くねぇよ」

「・・・・・・(怒)」




自分たちの試合が終わった竜と青が
仲間であり古くからの友である陽と、陽を通じて知り合った、蓮の元に遊びに来ていた。


それはいい。別に俺もあいつらは嫌いじゃないし、むしろ好感だって持っている。

だが、今は正直遠慮願いたかった・・・・






早朝に起きたちょっとした騒動の後、もう部屋を出て行かないと、言ったのに、
陽は不安そうな顔で俺を見て、中々腕の力を抜いてくれなかった。

俺はしょうがねぇな、っと思いながらも、今日位いいか、と
無理に陽の腕の中から出る事は止めて好きにさせていた。




・・・・そうだ


こんな辱めを受けるなら、あの時、やっぱり無理にでも腕の中から出たら良かったんだ・・・・




何時もの陽を考えれば、こうなる事位、簡単に分かる事だってのに(怒)・・・・・









ノックもなし、遠慮の欠片もなく部屋に入ってきた竜と青の第一声に、
蓮はどうしようもない脱力感と怒りに襲われた。


原因である陽は、相変わらずのほほんとしており、
それが一層蓮の怒りを増長させている事に本人は気が付いていない。

気づく所か、陽は更に手の力を強くさせた。



まるで、絶対に離さない・・・とでもいうように・・・・





そんな陽に、
蓮は元から長くない堪忍袋の緒を、真っ二つにしてしまった。




「俺は暑いんだよッ!!!いい加減離れんか!!」

「ぃってぇ〜〜〜〜っ蓮!今本気で入れただろ」

「本気だしたら、お前は今頃壁と友達になってるだろうよ!」



朝の騒動からずっと、トイレ以外蓮にひっついて離れようとしなくなった陽



今までだって、結構鬱陶しいと思う時もあったが
今回はそれとは比べ物にもならなかった・・・・




今の時間は、丁度昼前

良く何時間も我慢出来たもんだと、蓮は自分の精神の成長ぶりを嬉しく思いながら

朝食後に読みさしの本を読もうと座ってからずっと、後ろから抱きついて離れようとしない陽に
肘鉄を入れて無理やり離れさす事にやっと成功した事に安堵していた。




実は一度青達が来る前に、やったのだが、ビクともしなかった・・・・


一体こいつの何処に、こんな力がっていう位
本当に首に回っている腕はびくともしなかったんだ・・・・


こいつに、力では負けてる事を、何だか思い知らされた気分になった俺は
明日からトレーニングを増やす事を固く誓った。




涙目でこちらを見てくる陽に、一瞬やりすぎたかとは思ったが、
そんな甘い事を言ったら直ぐに調子に乗る事は分かっている。


現に今がそうだ。
あの時、やっぱり無理にでも離れておけば、ここまで調子に乗ってはいなかっただろう・・・・





そして俺は、今までのこいつとの付き合いで、
こんな時、どうすれば有効にこいつを反省させれるかを、俺はこいつと出あって経ったの3日で知っていた。







「なぁ〜ごめんよ蓮・・・」

「どうだったんだ?試合は」

「ぁ・・あぁ、楽勝だったぜ。今回は相性も抜群でさ。直ぐに倒せたぜ」

「なぁ〜蓮〜」

「お、俺は少し苦戦したな。三回戦目でここまでレベルが違う奴が出てくるなんてな・・・・」

「れ〜ん〜・・・蓮、蓮、蓮、蓮、れーん」

「そうだな。試合が始まってからもう三週間位になるからな。
 一日で多くて6試合進めてるから、そろそろ強い奴らと戦っても不思議じゃないだろ」

「確かになぁ・・・・と、所でさ・・・いいのか?」

「あ?何がだ?」



満面の笑みで言い切った蓮


その顔は、爽やか


まさにこの一言以外当てはまらない程の効力があるそれは
隣にいた竜が一瞬で石になる程の冷気と鬼を背負っていて


なんてバカな事を聞いたんだ俺は、っと青はその名の通り顔色を青くさせた。








「頼むから無視しないでくれよ〜〜蓮〜〜〜〜」




情けない声音での必死の懇願だけが
凍りついてしまった部屋中に響いた。













*  *  *




「蓮の試合って明日だよな?」

「あぁ。そうだ。」

「そいつは是非見に行かねぇと!ね、旦那!」

「おう。絶対見に行くかんな!」

「・・・・・」


先程から陽に、無視というお仕置き中の蓮


かれこれもう1時間はこうして陽の話に答える事も目を合わす事もしていない。



青も最初は驚いていたが、こいつは順応性が高い。
即空気にも慣れ、特に口を出す事なく今日の試合の話を語りだした。


竜は、元より陽を慕っていて、
頑張って陽を元気づけようと、陽や俺に話を振ってくる。



仲が良い陽達三人

でも時折、会話の節々やその表情に、こいつらも昔辛い何かがあった事を知った。


何があったのかは聞いてない。
聞く必要なんてない。



だが、もし言いたくなったら・・・

その時は静かに聞こうと決めている。




「なぁ・・・蓮・・・」


元より、陽はどちらかといえば、女顔だ。
しかも童顔


下手な女よりも可愛いのを、本人も自覚しているって、前に言ってた。


その顔を泣きそうに歪め、上目遣いで潤んだ瞳を向けてくる陽



これで、きちんと女の恰好をしたら、化粧なんかしなくても
そこらの男ならイチコロ何だろうな〜と思うが


俺から言わせてもらえば、犬にしか見えない・・・・・




意図してやってるかどうかは知らない。
まぁこれで無意識なら少し怖いものがあるが、
それでも俺には全く効果がない事にこいつは何時になったら気がつくのだろうか。



だが、気がつけば、今回のお仕置きは今までで最高記録を更新していて、
そろそろ許してやるか、という気持ちになっているのもまた事実




「分かったよ。だけど、只でさえ暑いんだから、あんまりひっつくんじゃねぇぞ」

「っ〜〜〜〜蓮〜〜〜!!!」

「だからひっつくなって言っただろうが!!!」(怒)


許した途端抱きついてきた陽に
本当に分かってんのか、と言いたくなるが





こいつがあんまり嬉しそうに笑うから・・・・




一発お見舞いするのは止めてやった。








こんな光景・・・・


1か月前の自分じゃ考える事すらできなかった・・・




家の奴らが見たら、阿吽絶叫しそうだ。ってか絶対するだろうし
椿達が見たら、喜びそうだ。


こういうのを、普通の友達っていうのかな・・・・



今までも友達はいるにはいた


けど、それは動物だったり、霊のようなこの世のものではないものだったりで
戦友とか仲間はいるけど、こんな普通の友達ってのはいなかった・・・・



作ろうなんて考えた事もなかったし、作ったとしても
俺みたいな危険野郎と一緒にいたら直ぐに死んでしまう。


俺には守り通せる力があると自負しているけど、
でも俺なんかよりも強い奴なんて、それこそ探せばいくらでもいるのだ。






竜に青、そして陽・・・・





彼らは自分とは違う国、日本の名家で産まれた。
そして自分と同じように、超越した能力を持ち、それを武器に戦える。




頼もしい・・・・初めてできた友達・・・・







失くしたくないと強く、深く思う・・・・





知らないうちに、蓮は抱きついている陽の服をギュッと握った。
陽だけが気づいていたが、陽は何も言わず、嬉しそうな笑みを浮かべて更に腕に力をこめた。











[2013/9/19]


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