東の地「アンガロス」

「此処が・・・東の地」



遥か東に位置する異境の地「アンガロス」


特にこれといった事故や事件もなく、無事にこの地に着く事が出来た蓮は
案内地図をもう一度見ながらこの地の名前を心の中で復唱した。




(アンガロス・・・か)


アンガロス
確か小さい頃見た何かの文献に小さく記載されているのを、覚えている。



神のもとで使えていた古代人



一部の地域でそう呼ばれていた、と書かれていたと思う。
まぁ、遥か昔の話だから、詳しい由来とかは知らねぇけど


でもまさか
その大地にこうして自分が足を向ける事になるとは夢にも思わなかった。

文献では大地の殆んどが泉と森林で形成された
謂わば自然の宝庫、と書かれていたような気がするのだが・・・・・





「覚え間違いか?」



視界を覆うのは見るからに荒れ果てた大地ばかり
奥の方に緑豊かな森林が見えるが、それもほんの一角にすぎないだろう。


今自分が立っている所も、小枝程の雑草があちらこちらに生えている程度だ
それにここ等は、少しだけ地面が凹んでいて、色も周りの砂と違う事から、どうやら以前は泉だった事が伺える。






見晴らしのよい広大な土地で、ポツンと立ち尽くしていたら目立つのは当たり前。
案の定、前方の森から誰かが近づいてきた。


「やぁ。待っていたよ。君も参加者かい」



近づいてきたのは、俺に今大会の案内状を送ってきた者と全く同じ服装をしていた。
明らかにパッチ族だと分かるが、やはり術を通して見るのとは違って迫力がある。



「参加者・・って事は、やはり此処が?」

「あぁ。そうだよ。此処がサイキックバトルの開催地゛アンガロス″だ。
 ようこそ、僕たち・・・嫌、神は力ある者を歓迎しよう」


そう言って差し出された手を俺は一瞬戸惑うも取る事にした。


軽く握手を交わした後、俺はこのパッチ族に案内されながら
奥に見える森林の中へと入って行った・・・・・












*  *  *



「こ・・こは・・・」

「驚いたかい?初めてこの地に訪れる者は皆君と同じような顔をするよ」



そりゃそうだろうな
驚くなという方が無理だろ。こりゃ・・・





森を抜けた先には、
水平線まで広がっていた荒れ果てた大地がまるで嘘のように

至る所には草木が茂り、遠くには大きな泉が太陽の光を浴びてキラキラと輝きを放っている


目の前にずらりと立ち並んでいる日干し煉瓦の建物には、様々な人が行き交っていて
謂わば街のようになっている


その街奥にはどこか異色な
けれどしっかりと風景に馴染んでいる大きなドームのような建物があった。



もしかしなくても分かる

あれが・・・・・




「あれが大会場か」

「そうだよ。あのドームで君たちは能力者達と戦い
 力ある者が勝ち進んでいく危険な大会だ」


あれを見てなお、君は参加する覚悟はあるかい?



一切の笑みを消し、真剣な眼差しで問うてくるパッチ族

愚問すぎるその問い。けれど、相手は真剣だ。
だから俺も誠意を持って答えなければと思った。


「当たり前だ。神の力なんて欲しいとは思わないが、自分がどれほど世間でやっていけるのか試したいからな」


自分の本心を言い終えたが、
今から行なわれるだろう大会を思って、自然と顔には笑みが浮かんでしまった。

そんな俺の言葉にパッチ族は、心底以外そうに目を見開いた。



何だ?そんなに以外なのか?
結構俺と同じような奴もいるだろうと思ってたんだが



「驚いたよ。神の力が欲しくないなんて・・・・
 過去じゃ勿論そんな人も沢山いたけど、今では君の様に力試しが目的で来る人なんて数える位しかいないよ」


パッチ族の台詞に今度は俺の方が驚いた。


俺の予想はどうやら大きく外れてしまったようだ・・・・



欲に忠実な奴らばかりなのかと思うと、少し残念だが
それでもこの大会には数多くの実力者達が集まっている事は今この場所にいるだけでも分かる。


目を閉じて神経を集中さすだけで、ビシビシと伝わってくる気"



俺は、相手の気を感じ取るだけで、相手がどれ程の実力者なのかは大体分かる。
それでも中には気を感じ取れない者もいる


そんな奴が一番厄介なのだ。

なんたって、力ある者ならば、自分の実力を隠す事なんて造作もない事だからな・・・・






俺は心が躍るのを感じながら、
パッチ族に案内され、日干し煉瓦が並ぶ街の中へと入って行った・・・・・











[2013/8/16]


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あきゅろす。
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