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10日で愛を、育もう






 蕩ける助の吐息を肌で感じて、ハクはゆっくり瞳を開いた。

 太ももに伝う精液をティッシュで拭きながらも、助はハクを抱き寄せる。

「ハク」
「……助さん」

 呼び返したハクの声に、助は驚いてハクの顔がよく見えるまで距離を置いた。

「……これじゃ、ダメ?」
「嬉しいよ」

 不安なんかどこにもないように助が笑う。

 つられる、という感覚がそこで初めて分かったような気がした。
 雰囲気に引きこまれて、この人の隣以外はありえないのだと悟る。

「……ハク」

 愛おしそうに抱いてくれる助の肩の上、ハクも同時に笑顔を浮かべた。

 助の前で見せる、初めての笑顔だった。

 それから黙りこんだ助の胸の中、ハクは息を吸う。

「……泣いてる、ね」
「泣いてなんかないよ」

 鼻をすする音と共に、ハクの真っ白な額の上に水滴が落ちてきた。

「悲しいんじゃないぞ。悲しくなんか、全然、ない」

 本当に大切な人が自分の前で泣いてくれるときは、ただ黙って傍にいるのがいいのかもしれない。

 ハクは柔らかく目を細めた。
 
「──分かってるよ」

「その顔、ずっと大事にするな。俺がずっと、守る」

「……うん」

 カーテンの奥では雪が舞っていた。ハクはその中に昼間見た桜の花びらを飛ばせる。




 自分もいつか散ってしまうなら。

 そのときは助の傍で共に朽ちたい。

 それまでも、その瞬間も、愛し合っていたい。

 はじまりはたったの10日。

 それがいつしか積もって、果てしない山となっていく。



 春の桜の、夏の潮、秋の枯れ葉、冬の雪。
 まだ知らないことがある世界。
 自分一人ではきっと全て見きれないだろう。




 彼が笑ってくれるから。
 自分も新しい世界を見れる。

 彼が泣いてくれるから。
 自分もその傍でただ笑ってられる。






「僕もずっと、守りたい」






 彼が存在するから




 
 自分も

 
 




 完.

 Thank you for reading till the end.

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