10日で愛を、育もう
3
蕩ける助の吐息を肌で感じて、ハクはゆっくり瞳を開いた。
太ももに伝う精液をティッシュで拭きながらも、助はハクを抱き寄せる。
「ハク」
「……助さん」
呼び返したハクの声に、助は驚いてハクの顔がよく見えるまで距離を置いた。
「……これじゃ、ダメ?」
「嬉しいよ」
不安なんかどこにもないように助が笑う。
つられる、という感覚がそこで初めて分かったような気がした。
雰囲気に引きこまれて、この人の隣以外はありえないのだと悟る。
「……ハク」
愛おしそうに抱いてくれる助の肩の上、ハクも同時に笑顔を浮かべた。
助の前で見せる、初めての笑顔だった。
それから黙りこんだ助の胸の中、ハクは息を吸う。
「……泣いてる、ね」
「泣いてなんかないよ」
鼻をすする音と共に、ハクの真っ白な額の上に水滴が落ちてきた。
「悲しいんじゃないぞ。悲しくなんか、全然、ない」
本当に大切な人が自分の前で泣いてくれるときは、ただ黙って傍にいるのがいいのかもしれない。
ハクは柔らかく目を細めた。
「──分かってるよ」
「その顔、ずっと大事にするな。俺がずっと、守る」
「……うん」
カーテンの奥では雪が舞っていた。ハクはその中に昼間見た桜の花びらを飛ばせる。
自分もいつか散ってしまうなら。
そのときは助の傍で共に朽ちたい。
それまでも、その瞬間も、愛し合っていたい。
はじまりはたったの10日。
それがいつしか積もって、果てしない山となっていく。
春の桜の、夏の潮、秋の枯れ葉、冬の雪。
まだ知らないことがある世界。
自分一人ではきっと全て見きれないだろう。
彼が笑ってくれるから。
自分も新しい世界を見れる。
彼が泣いてくれるから。
自分もその傍でただ笑ってられる。
「僕もずっと、守りたい」
彼が存在するから
自分も
完.
Thank you for reading till the end.
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