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西行
2−13


パチュリー「はぁ、もう・・・」

おそらく先日白黒と撃ち合っていたと思われる紫色の多い服を着た
随分とほっそりとした女性を発見し、本棚の影に隠れていると妙なため息が聞こえた。
気づかれたかと思い消したばかりのマシェットを再度発生させる。
刃に少し触れて存在を確かめる。女性が左腕を動かし何かをする動作を脳が認識した瞬間に
先手必勝と本棚の影から飛び出した。こちらが切り込むより早く女性の方が動いた。
主のいなくなった椅子の背もたれを切断する。女性を視線で追うと、
かなり首が上向きに固定された。対象が空中に浮遊しているからだ。

神無「・・・・・・・・・」

飛ばれた状態ではこちらが不便なので降りてもらうことにする。
女性のまっすぐな視線をそのまま、まっすぐに受け止めながら、
女性の頭上に大量の刃物で出来たカーペットを引いて、落とす。
自分で設定したよりも遥かに多くの刃物が出現して内心首を傾げる。
刃物で出来た逆さまの大地の終わりが見えない。どこまでも続いている。
これをそのまま床まで落とすと相手を殺してしまう。それは目的に沿わないので
相手が刃物の発生と落下に対応し、急降下。床に足をつけた時点で刃物を空中に静止させた。
女性がこちらに視線を固定させる。マシェットを峰打ちの持ち方に変えやすいよう逆手に持ち、
突っ込む。床から両足を離して下がる女性の正面に一つ、大きな鋭い鉄の塊が出現した。
大きな鋭い鉄の塊が聞きなれない金属音を発しながら、
最初に発生した一本に続くように女性の前面を囲うように展開し、
刃先の向く方へと吹き飛ばされたように飛び出した。数えて十三。
正直な射線なので避けることは造作もなかったが、
後方で本棚や床などにぶつかると、執念深くも再度こちらへと噛み付いてきた。
速い。でも見える。見えるなら対応できる。実行した。
マシェットの刃渡りを若干短くして叩き落した。
最後の一本を強引に落とすと、少し腕が痺れた。
それを意識の外側において、女性に接近を再開する。
対応している間に取り出したのか、手にはスペルカード。

パチュリー「火符『アグニシャイン』!」

数えることも叶わないほどの数、火の玉が、時折重なり、一つの嵐となって
無秩序に吹き荒れる。マシェットの刃渡りを元に戻し、速度を緩めずに
嵐の中に飛び込んだ。嵐の内側とは外側と違い、存外静かなものだ。
これも例外ではない。が、あくまでも外側と比べればだ。
身体を滑り込ませることがかろうじて叶う程度の空間に、
肌や髪を焼く熱を無視しながら飛び込み、火の玉に短剣を撃ち込み、時に斬り捨てた。
速度は緩めない。緩めれば逆につらいことが分かっている。
だから速度は緩めない。体力も可能な限り温存したい。
火の玉の配置と動きが許す範囲を強引に広げながら、まっすぐに走った。
切り抜けた。と同時に上からそれだけで一財産築くことの出来そうな巨大な紫水晶の塊が降り注ぐ。

神無「・・・・・・・・・・・・」

一瞬速度を緩める。紫水晶が床に衝突し砕ける。全てが砕けるのを待つのは時間の無駄なので
いくつかが砕け始めると同時に走りこむ。短く、忙しない舞踏を踏んで、
走り抜けるも、ズボンやジャケット、ブーツまで、所々砕けて飛散した破片に斬られた。
・・・あの白黒と張り合えるような手練ならばここで攻撃が終わるとも考え難い。
一歩、大きく踏み込んだ瞬間に足に逆方向の力をかける。

神無「・・・・・・・・・ッ」

間一髪の緊急回避。一秒遅かったら足を折られたかもしれない。
それでも、完全に逃げ切ることは出来なかったので
床から噴出した翠玉(エメラルド)の塊の側面を軽く蹴って距離を取り直し、
マシェットを重くしながら再突入。体重を十分に乗せて叩き割った。
あまり血色のよくない顔から血の気が引いていくのを確認しながら、
マシェットの重さを戻して順手に持ち直し、峰の方を振り下ろす。
完全に間合いに捕らえた。後は本の回収だと順序を整理していると

?「転移『魔力置換』!」

見事に空を斬った。所謂空振り。床にへこみを残して弾かれた。
珍しく、本当に珍しく舌打ちを一つ。声の方向に接近を開始する。










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あきゅろす。
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