両腕が欠落してる女の子
家に着いてから真っ直ぐレンの部屋に導かれ、部屋の戸が閉まった途端、レンは安堵の息を吐いた。
その息が先程の恐怖を思い出させ、涙が溢れ出る。
「…レ、レン…ごめんなさ―っ」
優しい、暖かい手で抱きしめられる。
触れる髪からはレンの臭いがする。
数分離れていただけなのに、すごく懐かしい臭いがした。
「だから言っただろ…」
レンの口から出た言葉は震えていた。顔は見えないけど、とても悲しそうな顔をしていると解る。
そこでやっと気付いた。
きっと、すごく心配してくれたんだ。
普通ならほっといて、私が自分で帰って来るのを待ってるはずなのに、こんな私を一生懸命捜して、見つけだして、助けてくれた。今だって、優しい手で私を抱きしめてくれる。
「ごめ…なさい…ごめんなさいっ…」
嬉しさと自分の愚かさに耐えられず瞳から大量の涙を流す私にレンは優しく囁く。
「ごめんな…もっと早くに見つけてあげたらよかったのに…、」
微かに、私を抱きしめる腕に力が入った。
身体の震えが止まらない。
どうしてレンはこんなに優しいの?
悪いのは、私なのに。
もっと、叱ってくれたっていいのに。
いつものように、怒ってよ。
弱々しい声で言うレンを抱きしめ返してあげたいのに、今の私には腕がない。
この憎しみを唇を噛み締めて和らげた。
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