[携帯モード] [URL送信]
両腕が欠落してる女の子




目を開けるとそこはよく解らない世界だった。
異様な物が飛んでたり、みたことのない生き物が生息している。
ただひとつ解るのは何かが欠けている事。
何ひとつ完成してるものはなくて、必ずひとつだけ欠けている。機械で例えるならそう、部品。
機械はひとつでも部品がないと動かないし、例え動いたとしても人に危害を加えたり災難を引き起こす。

何故そんな欠けている世界に居るのか。
解らない。自分の意思で来たのか、それとも目を背けたい真実があったのか。

また、ひとつ何かが欠けた。何か、大切なモノが―…




















「…ン……レン…起きて!」




声と一緒に体を揺さぶられ現実へ戻される。重い瞼をゆっくり開くとそこにはもちろん両腕がなくて悲しんでたリンが今は溢れんばかりの笑顔をしていた。
上半身を起こしまだ完全に開いていない目を擦りながら問い掛ける。


「どうしたの…?」

「見て!腕が戻ってる!」

「……へ?」


そう言われてみると確かにリンの肩から両腕が2本生えていた。
突然の信じがたい光景に頭の中が混乱していると「ほら、レンの手も握れるよ!」と両手で俺の手を嬉しそうに包み込む。
その様子をみて俺はマヌケな顔をする。
……これは夢じゃないんだよな?


笑顔に満ち溢れた顔を見ていると感情が沸き上がって体が震える。

嗚呼、これが元の姿。無くなった腕が元に戻り、消えていた笑顔も返ってきた。
嬉し過ぎてどんな顔をしていいか解らない。だから、抱きしめて誤魔化す。

少し遅れて回される手。その手からは数え切れないほどの嬉しさが伝わってくる。


「リン…よかった…っ」

「レン…」


抱きしめて誤魔化したってきっと解ってるだろ?…声が震えてるから。
そんなリンも俺と同じ。だから、強く抱きしめ合って少しずつ解いていく。
それが今の精一杯の喜び方なんだ。言葉にしなくても俺達には伝わっている。これは俺達しか知らない表現方法。



「ありがとう、レン」



ゆっくりと離れて顔を合わせる。
優しい笑顔につられて俺も微笑んだ。

ぼすっとシーツに倒れ、今度は消えないようにとしっかり握り締める。
その後リンは少し照れ臭そうに握り返した。


無くしていた笑顔。
忘れていた温もり。
失っていた幸せ。


窓から差し込む太陽の光が俺達をそっと包み込んだ。










両腕が欠落してた女の子






end


 


あきゅろす。
無料HPエムペ!