小説
いまでもあなたが好きです(クオリン
用があって三ヶ月ぐらい遠出して帰ってきた。家は変わらない。いや、変わってたらおかしいか。人も、変わらない。
「ただいまー」
「カイト…覚悟出来てるわよね?」
「め、めーちゃんごめんなさ…、ぎゃあああっ!!」
いつもと同じ…というより、いつもより騒がしい。
人は時間が経てば変わると言うがその言葉は嘘だ。
二人の喧嘩を無視し、俺は自分の部屋に戻り荷物を置いて、ある人の部屋に向かった。
コンコンッ
戸をノックすると明るい声が返ってくる。
「はーい」
変わらない声。その声を聞いて少し安心する。
「ただいま」
「クオちゃん!おかえり!!」
部屋に入ればリンが嬉しそうに抱き着いてきた。
嗚呼、可愛い。
「リンだけだよ、俺におかえりって言ってくれたの」
抱きしめ返して寂しさを隠すためにリンの首に顔を埋める。
「そうなの?居間にメイコ姉とカイ兄が居たと思うんだけど…」
「痴話喧嘩してたから邪魔しちゃ悪いと思って」
全然痴話喧嘩じゃなかったけどね。でもいつものことだから。それに、割り込んだらいろいろ大変…めんどくさそうだし。
「そうだったんだー」
それならしょうがないね、と苦笑しているリンの顔をみていたら自然と口が開いた。
「…リンも変わらないね」
自分でもわかるくらい声が寂しそうだった。おかしいな、変わらないことが一番なのに、どうしたんだろう。
「クオちゃんは変わったね」
「…えっ」
予想もしない答えに思わず声が出る。
「変わった?…俺が?」
「うん!髪も伸びたし背もおっきくなったし、格好良くなった!!」
「…一番最後のはいいとして、最初の二つは当たり前だよ」
「え、あ、そっか」
えへへーと笑うその顔は天使のように愛らしい。
さっき人は時間が経つと変わると言ったけど、リンは変わらないほうがいい。
「クオちゃんが居なくなる前より格好良いよ!どうしたの?あ、もしかして好きな人でも出来たの?」
すごい興味深々に聞いてくる。
可愛過ぎて思わずニヤけが止まらなくなりそう。
「そうだな…好きな人はいるよ」
「え、いるの!?」
「ずっと前から。片想いだけどね」
リンはさっきより目を輝かせて聞いてくる。女の子は…いや人間はこういう話しに何かしら食いついてくるよな。
「ねえ、その人って誰ー?」
「それは秘密」
「えー、クオちゃんの意地悪」
「いずれわかるよ」
世界が俺に味方してくれたらね。
いまでもあなたが好きです
叶うことのない、恋
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