小説
幼さゆえの約束
「…遠い所に行くの」
そう言ったら、あなたはどんな表情をするだろう。どんな、気持ちになるだろう。
なんて…ほんとは言いたくない。だって、自分が言われる立場だったら、きっと、泣いてあなたを困らせるから。
でも、これは悲しいくらいに逆らえない真実。
「…遠い所に行くの」
「……えっ」
突然に告げた言葉。さすがのあなたも驚きを隠せないでいる。当たり前だ。今までが楽し過ぎて、そんなことなんか考えもしなかったはずだ。
だけど、あなたは素直に真実を受け止めた。
「…そっか、仕方ないよね」
その一言がガラスの破片のように鋭く胸に刺さった。
「…ごめん、ね、」
声が、震える。頑張って堪える。泣くのはあなたのほうなのに、なんであたしが泣いてるの…。
必死に笑おうとしたとき、優しく抱きしめられた。
「…いつか会いに行くよ。そして、会えたら…君を守りたい」
「えっ…」
耳元で囁かれた言葉。
「もう、君が居なくならないように、…君が悲しい思いをしないように、守るよ」
ただでさえ堪えるのに必死なのに、そんな言葉を聞くと溢れ出すってもんじゃない。あたしはただすがりながら泣きじゃくった。
「約束しよう」
差し出される右手。同じく右手を出してゆびきりをした。
「約束だ」
「約束だよ」
ニッと笑う、あなたの顔があたしの悲しみを消してくれる。あなたの笑顔につられて、あたしも笑った。
幼さゆえの約束
ずっと、待ってるから
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