小説
その笑顔は反則だから
「…何があったんだっけ」
そう、目を覚ますとツッコまずにはいられない状況だった。
部屋は散らかっていて電気がついていないせいか少し薄暗い。時計を見ると午前4時と表示されている。そして頭が異常に痛い。
まあそんなことはべつにどうでもいい。俺が今一番突っ込みたいのは、メイコ姉やカイ兄、ミク姉は床で無造作に転がって寝てるのに、なんで俺はリンを押し倒して寝ていたのかだ。
目が覚めたらリンの顔がすぐ横にあって、腕を伸ばして上半身を起こすとリンを良い感じに見下ろせた。
…ってそうじゃなくて!!!
「…可愛い」
でも俺の下で寝てるリンは上から見下ろしてるせいかいつも以上に可愛くみえてしょうがない。
「やべ、襲いたくなってきた」
もしこの部屋に俺たちだけしか居なかったらもう躊躇せず襲ってる。
いや、居ても寝てるから俺はべつに構わないけど、リンが嫌がるからな。二人だけでも嫌がるけど。
とりあえずここから動かなきゃまじで襲っちまう。どこうとしたとき、俺の下にいるリンが目を覚ました。
「ん…、あれー…れん、おきたのぉ…」
「…リン?大丈夫か?」
「ふぇー…?だぁいじょーぶだよー」
全然大丈夫じゃない。
それに、なんでこんなふらふらしてんだ?
「…なぁ、昨日何やってたんだっけ?」
「きのおー?…みんなでおさけのんでたんだよぉ」
「さ、酒?」
「でねぇー、れんがさいしょに、めいこねぇにのまされて、れん、ねちゃったのぉ」
だからこんなに酒臭いのか。頭がこんなにガンガンしてる理由がやっとわかった。
にしても、一杯飲んだだけでダウンするとか…俺って情けねぇ。
…ということはカイ兄もミク姉も、ああなってるのはメイコ姉の仕業か。
んで、酔っ払って寝たとして…なんでこの状態になったんだ?
まだ聞きたいことはたくさんあるけど…。
「…ってかリン、酔っ払ってるよな?」
「んにゅ?よってなんかないよぉー」
いや完璧酔ってる。とりあえずこの状況をなんとかしなきゃ。
そう思った瞬間、下から手が伸びてきて首に絡み付いた。
「なっ…リン、駄目だって!!」
そんなことされたら俺、まじで―…。
「なんでぇ?れん、りんのこときらい?」
「き、嫌いじゃないっ、むしろ好きだけど…って違う!!」
何一人でボケてツッコんでるんだ。あんまし大きな声出すとみんな起きるし…俺が今言いたいのはこの体勢で…。
「りんもれんのことすきー」
そう、頬を染めて笑った顔が酔ってるせいもあって余計に可愛い…いや、色っぽく見えてしょうがない。
今このときだけメイコ姉に感謝しないと。
俺だけに向けるその笑顔。俺まじで理性切れそう。
「…リン。俺以外にその笑った顔見せた?特にカイ兄に」
「う?…しらなぁい」
にへーと笑う顔に理性も何も無くなった。
「…リン、俺の部屋行こうか」
「なんでぇ?」
「リンが悪いんだからな」
散らばって寝ている3人を無視して、未だ俺の首に絡み付いたままのリンをお姫様抱っこで抱き上げて自室に向かった。
その笑顔は反則だから
君は知らないと思うけど
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