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頂き物(小説)
桐城里科様から相互小説





「毎度あなたの心に活心エイドスタンプ、ラピードです。」

「………………は?」

大学の研究室
扉を開けると胡散臭い笑顔の男。
パティシエである事を象徴する衣装と、箱を手にリタを出迎える。

「間違えたわ。」

「んな訳ねえだろ。」

出ていこうとしたリタの首をガシッと抱えると引きずり込む。
仕方なく適当に椅子に座ると、胡散臭い笑顔から一転して鋭い眼光がリタを捉える。

「…例のものは?」

「あるわ。あんたの言った通りよ。」

ファイルから書類を取り出すと男に渡す。
数週間前に起こった連続殺人。
その調査と残った犯人情報の鑑定を任されていたのだ。

「サンキュー。やっぱリタは最高だぜ。」

「煽てたって何も無いわよ。」

証拠の掴めて上機嫌な男は普段あまり口にしない言葉をさらりと言う
いつもの事なのでリタも反応は鈍い。

「じゃあ、サンキューな。」

「はいはい。ボスによろしくね。」

「おお。ついでにお前の姉ちゃんにもな。」

「あんなの姉じゃないわ。」

キッと睨みつけるリタにわざとらしく肩を竦めるとひらひら手を振り研究室から去っていった
残された部屋で、箱を開くと、いくつかのケーキ。


「……こんなに食べれないわよ。」

適当にひとつ。
取り出して席を立つと先程の男が顔を覗かせた

「ちなみに俺の愛情たっぷ「さっさと行く!」

近くのビーカーを投げつけると見事キャッチされて今度こそ消える。
舌打ちすると、棚の中からティーパックを出す。アルコールランプに火を付けて、湯を沸騰させていると、今度は違う足音。

「ユーリが来てたんです?」

「ええ。さっき帰ったわ。」

カップをもう一つ。
毎日来ている彼女の好みは把握済みだ。
砂糖の入った入れ物を前に置いて、ケーキも食べるようにと前に差し出す。

「リタが羨ましいです…」

「…何で?」

「いつもユーリのケーキを食べれるなんて…」

「変な言い方しないで。金ないからこれで機嫌とってるだけでしょ。」

興味なさげに、紅茶を一口。
実際、そうなのだ。
リタは、この研究室の院生であり稀代の科学者である。
その裏では、「そのテの世界」では誰もが名を知っているという天才ハッカーである凄腕情報屋である。
しかし警察や他の所からも依頼があっても取ってはくれず、半分ユーリ達専用の職業になりつつあ
るが。もちろんこの事は、目の前の少女は知らない。
いつ自分の情報がバレて、危険な目に巻き込まれるか分からないから

「けれど凄いです。リタ、私にもその情報屋を手伝わせて下さい!」

なのだが

「………何のこと?」

「ジュディスから聞きました。ジュディスが働いている探偵ギルドの専用情報屋をしてるんです?」

「………………………………………あの…ッ」


喉まで出た怒りを無理矢理鎮める。
何で、何で言ったんだ
よりによって一番知られたくないひとに。
しかも勝手に、尾鰭まで付けて。

「……ああ、うんそうよ。けど、駄目。危ないわ。」

バレてしまったのなら仕方ない。彼女は、そう言う人間だ。
それでもやっぱり、巻き込めない。
でも彼女だって引き下がらない。一度決めたことだから、多分こっちが折れるまで何度だって食い下がる。
何時もだったら折れてしまうのだが、こればかりは、譲れないのだ。

「エステル、」


あのね、と口を開いたらパソコンから音が鳴った。

「どっ…どうしたんです!?」

「…あの馬鹿ども」

ダングレストのA級シークレット保管庫
世界最高のセキュリティーのそこに、誰かが侵入したのだ
そんな所に行くのは決まっている

「エステルそれ食べたら帰るのよ!ちょっと行ってくるッ」

「えっ…ちょっとリタぁ?」

後ろで彼女は何かを言っていたが聞く前に飛び出した。
近くでタクシーを止めて、知り合いの刑事に連絡。




「…世話の焼ける…」

「――へくしょいッ」

「あら、風邪かしら?」」

「…案外どっかの可愛いリタちゃんが俺の噂いやすまんジュディ」

大人数に囲まれていると言うのに、この会話。
真ん中に居る首領はもう脱魂しそうな勢いであるが。

「おい首領。何とかしろよ。」

「ゆゆゆゆゆゆユーリが勝手に突っ込んじゃうからでしょおぉおおぉお!!!」

「部下を上手に操作するのも首領の仕事でしょう?」

「ぐっ………!!」

「…で?ねえのかあんのか」

「………………………………………………………………強行突破ぁあぁああああぁああ!!!!!」

半ばヤケクソの絶叫と同時に三人は散る。首領と呼ばれた少年は身の丈以上の武器を振り回しながら敵陣へ突っ込む
ジュディスはひらりひらりと銃口で狙われる先を遊ぶように舞い飛び、翻弄し、槍で薙払う。
ユーリも実に楽しそうに一
人一人を相手にしている
しかし数が数である。

「皆、集まって!」

大分傷付いた身体を休めようと少年が二人を集める
その場に出現した淡い光で身体の疲れを取ると再び散る。

「ちょいシャレになんねえなぁ」

「そうね」

「余裕じゃないか二人とも!!」

「…そうでも、っ」

「ないのよ…!」

手に持つ得物の三人に対し、周りはすべて銃口を構えている
動く前に全方位から打たれて終わりだろう。

「…短い人生だったな。カロル先生」

「嫌だぁぁあぁああああぁああ」

くつくつ笑うユーリに本気で泣きそうな少年、カロル
覚悟を決めて目を閉じた。

「………そこまでだ。」

「…れ…シュヴァーン!?」

かつかつと靴音を響かせ入ってきたのは、見知った顔の刑事。辺りに倒れているガードマンや、銃口を向けているその人達を取り押さえるべく大量に人が流れ込んできた。

「…行け。」

「良いのか?あんたらの仕事じゃねえの?」

「私はリタからここで暴力事件があったと言うことしか聞いていない。
リタが情報を渡したのは貴殿達だ。」

「…あっそ。」
バタバタ流れ込んできた人に紛れ目的の場所まで駆け上がる。
豪奢な扉の向こうに目的の人物は居た。


「…ラゴウ。探したぜ。」

「……な…何だ貴様らは!」

「連続殺人事件、お前が黒幕だろう。調べはついてる。殺した人間からいつも内臓が取り出されていたのも、売るためだろ」

「…何のことかね」

「調べはついてるって言っただろ。証拠はこれさ」

「……………ぐッ」

ラゴウがよろめくように窓に背を凭れかけ、観念したとでも言いたげに床に座り込んだ。近寄るユーリ達に何かを呟いて
それから隠してあったのか杖を取り出し、先端のスイッチに指をかけ翳した

「その場所に立ったな小僧どもよ!!!」

「あ!?」

卑下た笑い声を響かせスイッチに指を置く
しかし押す前に杖はラゴウの手から弾きとばされていた。







「……不正売買、脱税、詐欺、不法占拠。及び連続殺人、」

まだまだやってきた罪の数々
手錠を掛けられたラゴウが屋敷から出てきた。
周りは沢山のパトカーで埋め尽くされている。


「また君たちに助けられたようだね。」
アレクセイが礼を言い敬礼をする
それに返すとカロルはアレクセイの元へ行く
ジュディスはいつの間にか消えていた
ユーリも
とりあえず適当に辺りを見回すと

「リタ?」

リタがいた。俯いて。
何となしに近寄り声をかけた

「……やっぱり怪我してる」

「いつもだろ」

「どうして何も言わなかったのよ」

「お前にゃ関係ねえからさ」

「あたしだって、協力してんじゃない」

「危ないだろ、普通」

「…じゃあ怪我なんかしないでよ」

「素直に言ってくれたらきくかもな」

「……滅茶苦茶、心配だったんだから。」

「…そりゃ悪かった」

「ちゃんと謝って」

「悪い。」

「これからはちゃんと行くって言って」

「分かった。」

「怪我されたら困るのよ。」

「…ああ。」

「どうして良いかわかんなくなるの」

「…ああ。」

「何かあったら許さないわ」

「…そらまた、怖いぜ。」

「だから」俯いたままのリタの頭に手を置く
宥めるようにくしゃりと撫でてやると、我慢していたのか涙が地面に吸い込まれていく


「泣くなよ、リタ」

「泣いてなんか、」

「そうだ。ケーキ作ってやんよ。クレープもつけるぜ。」

「なあ」と泣くリタを抱え上げると思い切り頭をしばかれた。


「ユーリの愛情たっぷりのやつね」


いつもからかって言っている言葉をそのまま返されたユーリが赤くなったのは誰も知らない。



◇◆◇◆◇◆


「このケーキ、いつもより美味しいです!」

エステルが目を輝かせる。それに何故か自信満々に胸をはるのはリタ。

「そりゃそうよ。これ特別だもの。」

「そうなんです?」

首を傾げたエステルに頷く。
それから、エステルが身を乗り出す

「それはそうとリタ!今日大丈夫です?」

「絵のモデルでしょ?悪いけど今日は駄目なの。約束あるから」

「…そうですか」

「ごめん、明日大丈夫だから」

「じゃあ明日、約束です!」

「ええ。」

荷物を纏めるリタに

「ユーリです?」

隠すこともなく頷かれた。心なしか顔が少し赤い。

「ちょっとね。じゃあ、明日!」

「ええ。お気をつけて。」

「ばいばい!」

「さようなら、リタ」


少し時間に遅れるかもしれない。時計を見てそう思ったが、時々はあいつも待たせてみよう。とわざとゆっくり歩いていく。
途中、恥ずかしくて一度も身に付けなかったプレゼントも付けておいて、驚かせてやろうと計画を練る。
いつもの仕返し、なのだ。…のだ。
そうしてユーリを見つけ側まで駆け寄るとわざとらしく手を大きく振る


「悪いわね、遅れちゃったわ」


「いや待ってねえ待てお前その場所反則だろう……………」





chain heart!
(行き先はあなたの心です)



桐城里科様から頂きました相互記念小説です!
お話しが深くてドキドキしながら読ませていただきました♪
特に最後のユーリを心配して甘えるリタがたまりませんっ…!(←黙れ
素敵な相互小説ありがとうございました!!


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