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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

「鈴」
 ジンは明らかに興奮していた。ジンの前足が器用に、鈴のスラックスと肌着を足許へずり下ろし、脚から抜き取ってしまったのだ。
 ―――僕、なんでされ放題なの?
 なんだか悔しい。鈴はムッとなった。が、余裕が持てたのはそこまでだった。
 ジンはゆっくりと顔を下肢へ下げていったのだ。前脚で鈴の右脚をくいっと開く。ぷるんと陰茎が起ち上がっていた。透明の蜜がスリットから溢れ出す。ジンは脚の付け根を舐めた。
「いやぁっそれ」
「くすぐったいのか?」
 鈴は顔を横に振った。くすぐったいのではない。感じるのだ。ジンは鈴の涙目の相貌を見詰めながら、口を開いて陰茎をすっぽりと含んだ。
「ひぃぃっ!?」
 長い舌が陰茎に巻き付き、でこぼこした上顎に陰茎を摩る。鈴にとってそれは快楽の地獄だった。
「あぁぁっあんい、いやぁっダメっでちゃう、でちゃっ!」
 ぐちゅんぐちゅっと水音を立てながら、ジンは夢中になって頭を上下左右に動かす。
「イクッあっあっ!」
 ドクンと蜜がジンの喉奥に叩き付けられる。鈴は止まらない愉悦に腰の震えを留めることができなかった。ジンは陰茎から口を離すと旨そうに嚥下する。
「は、ぁんっじ、んっジン」
 身体が熱い。自分はどうなってしまったのか。今まで女性と何人か付き合ってはみたが、どれも長続きしなかった。自分は淡泊なのだと思っていた。が、そうではないらしい。
 ―――欲しい。
 そう感じた刹那、ジンを見詰める双眸は情欲に濡れていた。ジンがゴクリと息を呑む。
「うつ伏せになれ鈴」
 鈴は気怠い身体を起こして、云われるままに四つん這いになった。ヒクヒクと恥ずかしく蠢く秘孔にジンは息を呑む。ゴクリと唾を飲み込んで、「……ちっ」と舌打ちした。
 ジンは鈴をそっと抱き締めて、こちらを向かせた。ジンは狼から人に戻っていた。
「…ジン?」
「はぁ。……すまない、今すぐにお前を抱きたいが、駄目だ。お前の感情を無視できない」
「?」
 ―――僕を愛していない?
 鈴は真っ青になって涙を零した。いくら何でも待たせすぎたのだ。もうジンは鈴を愛してくれない。身体が熱くて、どうにかなりそうなのに。
「もしかして、もう僕を愛していないの?」
 ジンは相貌を見開いた。
「どうしてそうなる? 俺はお前の感情を無視できないと云ったんだ」
 ジンは眉間に皺を寄せた。が、鈴の視線がジンの下肢に向けられたのだ。臨戦状態である。あれが自分に入るのかと刹那目眩がした鈴は更に真っ青だ。
「男は初めてか?」
 低い声で問われた。心なしか殺気が漂っているかのようだ。
「当たり前だろ、こんな、こんなのっ!」
 再びジンの陰茎を見て、ボンと次は紅くなる。ジンは溜め息を吐いた。
「あのな鈴、狼の姿で事に及んだら、お前に怪我をさせてしまう」
「なら、今人間だろ? それでもできないのかよ?」
 ジンが唸る。鈴は悔しかったのだ。自分ばかり煽られて、胸がこんなにドキドキして。
「お前性格変わったな」
「? うわっ!?」
 ジンは鈴の手を掴んで、自分の陰茎を握らせた。熱くて大きくて堅かった。鈴は唾を飲み込んだ。興奮と恐怖が入り混じる。
「解るか? 俺は今すぐにでもお前に突っ込みたい。だが流されて遣るのは嫌なんだ。お前と繋がるなら、ちゃんとしたい。時間を置いて最初からちゃんとお前を抱きたいんだ。解ってくれ今は。だから俺を煽るな」
「ジン……」
 ―――好きだ。僕は……彼を。
「ジン、僕ジンの事好きだよ?」
 ジンがふっと笑った。
「なんで疑問形?」
「揚げ足取んなよ」
 鈴はジンの首に抱き付いた。愛しい。ジンが。
「愛してる、僕を待っていてくれてありがとう、ジン」
 鈴はぎこちなさ気にジンの唇に自分の唇を重ねる。触れるだけの幼い口付け。
「……鈴」
 ジンは鈴の華奢な身体を抱き締めた。重ねた心臓が命の音が奏でる。どちらからともなく顔を寄せ、唇を重ねた。舌を絡めて互いの舌を吸い合い……。絨毯に寝かされた鈴はいつまでもジンとキスをしていた。熱い息を吐きながら、離れていた時間を埋めるように抱き締めあった。


 翌朝鈴はジンのベッドで目を覚ました。ジンがベッドまで運んでくれたのだろう。結局ジンは鈴を抱かなかった。ぼんやりと壁掛け時計を見ると、既に9時を回っている。家にはジンから借りた携帯で、友人の家に泊まるからと、夜の内に電話をしておいた。里桜が電話の傍で何やら怒っていたが、まあそれは後だ。
「ん……」
 ジンが鈴の腰に腕を回して引き寄せる。結局あの後ジンは鈴を抱かなかった。男同士のセックスでどの様にするかは、なんとなく鈴は知っている。アメリカでは同性カップルを目にするのは珍しくはない。友人にもそういったカップルは居る。
「ジンはどうやって抜いたんだろう?」
 疑問が頭を過ぎる。鈴が眠った後に自身の後始末をしたのだろうか。想像したら頬が熱くなる。安心して眠るジンの寝顔が愛しくて、鼻にチュッとキスをした。
 ―――待てるかな? いつかジンが、僕を本当の意味で抱いてくれるその日まで。
 なんだかくすぐったくて、鈴はにやけてジンの胸に頬を擦り寄せた。
 ―――実は起きているんだが……どうしようか。
 ジンは困って固まっていた。







鬼畜狼と蜂蜜ハニー 第4部完


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あきゅろす。
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