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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

 ジンはテーブルに置いていた一冊の本を鈴に手渡した。小早川家の【天音鈴】の部屋にも同じ物が置いてある。その本は里桜が絶対に触らせてくれなかったのだ。表紙は上条貴博の顔が大きく載っている。確かこの俳優は、昔隠し子が事件に巻き込まれて亡くなったのが、マスコミに知られて、自主引退し海外へ行ったのではなかったか。鈴が生まれる前だから、かれこれ40年は前になる。
「これ……」
「開けてみろ」
 云われて鈴は表紙を捲った。そこには口紅を宣伝する2人の男女の姿が在り、上条と少女が楽しげにしていた。ロングヘアの綺麗な少女。ケーキを食べているプライベートまである。鈴の眼にはいつしか涙が浮かんでいた。
「僕はこの写真を知ってる? 里桜伯父さんに隠れて見たのかな……? あれ?」
「それは生前の鈴だ」
 鈴は目尻を指で拭いながらジンを見る。
「私が撮影した」
「……え?」
「まだ信じられないだろうな。だが、その本は私が撮影して世に出した物だ」
「でも、でも! 変だよ、これは40年は前の物だ、あんたはどう見ても30前後にしか見えないしっ」
「時を留めているんだ」
「……は?」
「紀元前の時代から」
「……」
 ガタリと鈴は立ち上がった。鈴は身体の震えを覚えた。
「夢で、過去を見るだろう」
「…それは、僕があんたに話したから」
「では、話しをしようか。そのエジプトでは戦争が起きた。クレオパトラが生きていた時代だ。ローマが進軍してきて、私はルリを助ける為に連れ出そうと預けていた神殿に向かった。あの日を私は忘れない。ルリが私の目の前で殺されてしまったんだ。私はルリの亡骸を腕にナイルの女神にルリと私の魂を捧げた」
「捧げたって」
 夢の中に見た光景が、ジンの言葉で語られる。
 ―――ありえない。
「神聖な神の川に身を投げたと云ってもいい。当時は神は人に今より近い場所に在った。神の怒りは、ルリ、君をむざむざと喪ったことだ。神が作り出した命だ。私はナイルの神から呪いを掛けられた。人狼だ」
「そんなの信じられない、いくら昔だからって、そんなの僕があの時機内で話したから」
「話したか? 事細かく?」
 鈴は記憶を手繰り寄せた。
『はい! 子供の頃から夢にエジプトを見るんです。僕は小さな子供で、旅の途中で男の人に拾われて命拾いして。でも、その国で戦争が起きて僕は死んでしまうけど、違う国に生まれ変わって。そこで必ず不思議な人に出逢うんです』
 ―――そうだ、僕は簡単な説明しか云っていない。
 細かい内容なんて。ましてや、あんな変な夢の話し、周りにした処で頭がおかしな奴としか思われない。鈴はジンに話していない。そこまでは。あの隼人にだって、そこまで話していないのだ。
「鈴、私の姿を見ろ。そうすればきっと」
 そう云ってジンは立上がると、衣服を脱ぎ始めた。
「じ、ジン!?」
 鈴は狼狽した。ジンの裸体はこう在りたいと、男が1度は願う身体をしていた。下肢に至っては息を呑んで眼を逸らした。
 ―――でかっ。
 頬を染めた鈴の視界に、ジンの身体が変化していった。
「っ!?」
 鈴は驚愕で腰が抜けると、ぺたりと絨毯に座り込んだ。狼だ。テレビでしか観たことがない、あの狼だ。不思議な事に鈴は恐怖を感じなかった。ジンはマズルを鈴の肩に擦り寄せた。
「これは夢なんかじゃない。鈴。思い出せ、私を私の愛を」
 ドクンと大きく心臓が高鳴った。震える手が狼の背を撫でる。暖かい。鈴は昔から動物が大好きだった。飼っていた猫が死んだとき、眼が腫れるまで泣き続けた。でもこれはあの猫ではないし、可愛い犬でもない。目の前で変化したジンだ。不思議と怖くはなかった。
「あ、あのっ」
 真っ赤になった鈴がを、ジンは顔をあげて鈴の頬にマズルを擦り付ける。
「うわっ!」
 後方にペタンと倒れた鈴の胸に、ジンが前足を片方乗せ、首筋にスンスンと濡れた鼻を擦り寄せている。
「あ、あ、ダメっ」
 あらぬ場所がヒクンと疼いた。耳まで紅くした鈴がジンを睨む。
「何するんだよ、どいてよもうっ」
 ジンはにやりとして、Tシャツの上から鈴の乳輪を爪で引っ掻いた。
「やあぁっ!」
 ―――な、何今っ???
「感度がいいな」
 ジンはマズルで、鈴のTシャツを首元まで捲る。ピンク色の小さな乳首がツンと尖っている。鈴はパニックに陥った。まさかこのような展開が待っていようとは思わなかったのだ。ドクドクと早鐘のように高鳴る心音を、ジンはうっとりとして鈴の乳首をペロリと舐めた。
「はうっんん」

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