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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー(鈴編)

「っ」
 びっくりして振り返ると、キッチンからビールを片手に現れたのは上条で、ジーンズの上は裸だった。均整の取れた身体に、思わず眼を逸らす。
「あ、あの、僕…どうして…?」
「やっぱり覚えていないか」
 上条に苦笑いされて鈴は焦る。
「すみません迷惑掛けて、あの、なんで僕此処に」
「遅いから見に行てみたら、疲れて真っ裸で寝てたんだよ。バスルームで。」
「…すみません」
 恐縮して鈴は項垂れ、少し開いていた向かい側のベッドルームに気付いた。白い肩が見えて驚く。
「こら。人の部屋見ない」
「…え? え?」
 開いたドアに気付いた上条が、片手でドアを閉める。上条のプライベートを垣間見て、どうしたら良いのか焦った。
「鈴音も疲れてるから寝かせとけ。それより何か飲むか?」
 鈴は双眸を見開き、上条の姿を見る。シャワーを浴びたのか、髪がまだ濡れていて首にタオルを掛けている。今の2人の今の関係を知って、なんだか不思議な気分だ。
 上條に促されて、入ったリビングはまるでドラマのシーンみたいな家具で統一されていた。
「お茶で良いか?」
「あ、はい」
 ソファーに座るように云われて座る。上条が冷蔵庫からペットボトルを手に、鈴に手渡すと鈴の足許に腰を下ろした。ふかふかの絨毯が足の裏にあたって気持ちが良い。
「学校はどうだ?」
「楽しいです」
「そうか。今しか無い時間を楽しめ」
 上条が眼を細めて鈴を見上げた。
「上条さんは、その…鈴音さんとは」
「あ? あぁ。今はまだ恋人未満? みたいな? 微妙だな。それより鈴はどうなんだ? 居るのか? 彼女とか」
「……僕は…」
 胸を張って云えない。紹介も出来ない事に改めて鈴は、悲しさを噛み締めた。それでも隼人が好きだ。
「好きな人が居ます。傍に居るだけで胸が苦しくなるぐらい」
「なんだそうか。今度紹介しろよ?」
「え!?」
「…なんだ…その……云ってみただけだ」
 何も知らない上条が、耳を赤くして笑いながらビールを飲み干す。
「…なあ鈴」
「?」
「一緒に、俺と住む気はないか?」
「え…」
 鈴は上条を見詰める。
「俺に『家族』が居るんだと解った時、不思議な感じだった。ずっとひとりだと思ってたからな。だけどお前に逢えて思った『こいつが俺の子供だ』ってな」
 鈴は潤んだ双眸を瞬かせた。「悪いな急にこんな話をして」と、上条が謝る。鈴は「大丈夫」だと告げた。そして、上条の首の後ろに羽の痣が在るのを見付けた。
「まだもう少し寝ておけ。薫の方には電話しておいたから、明日は俺が学校へ送ってやるよ」
「はい」
 そういえば失念していたけど、隼人に連絡をしていない。
「おやすみなさい」
「おやすみ」
 上条は鈴音が眠る寝室へ消えていった。
 鈴は自分のカバンから、携帯を取り出して着信歴を確認した。


 ベッドに眠る鈴音の隣にそっと腰を下ろした。
 少しやつれた頬を指の背で撫でると、擽ったそうに肩を竦めて丸くなる。
 昨日、中々戻らない鈴を心配した上条が、様子を見に隣の客室へ行くと腰にタオルを巻いた鈴が、脱衣所で倒れていたのにはさすがの上条でも驚いたが。
 高校生にしては華奢な体躯は、まだ大人に為りきれない儚さがあって、親として心配だ。
「親…か。そうだよな俺父親か」
 顔がニヤケそうだ。
 ふと、鈴音のバッグから携帯の着信音が鳴る。ベッドの下に在ったカバンを拾い上げ、携帯の音を消す。鈴音は余程疲れていたのか、目覚めずにぐっすり眠っている。そして携帯をカバンに戻した。
「つっ…」
 突然の痛みに首の後ろを撫でる。生まれつき在るこの痣は最近痛みを感じるのだか。鈴の腕にも同じ痣が在ったのは気付いていた。
 この痣はいったい……?


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