SSまとめ





イン ザ・スノー(コウハン)
イン ザ・ベッド(ランラム)
イン ザ・レイン(デンオ)
イン ザ・ダーク(ミクダイ)
イン ザ・ワールド(spダイアカ)







イン ザ・スノー

ここは暑いから一先ず出よう。そう言った彼のコートに包まれた日に焼けた肌を、大粒の汗が伝ってゆくのをぼんやりと眺めていた。隣に立つ赤髪の少年に小突かれ漸く歩き始める。いつまでもポケモンをだいじにな。僕が本当にだいじにしたかった彼がそう言って笑った。降り止まない火山灰が雪に見えた。







イン ザ・ベッド

欠伸をした彼に寝不足かと問うと、暇、と言い切る前にまた大きく口 を開いた。その口が意外と大きいと思ったことを本人に告げると、お前を食べる為さとにやけ顔。獣の形を真似て指を曲げたその手を掴み、いつも食べられているのは貴方の方だと囁くと、耳まで赤くしたラムダさんに頬を抓られた。深爪。







イン ザ・レイン

「雨の日って、テンション下がるよなー…」
「そうか?」
「やっぱ炎タイプの使い手としてはなー。あと湿度で髪型が決まらねェ」
「お前の頭が決まってるとこなんざ見たことねぇよ。」
「うっせ。お前は良いよなー電気タイプだし。」
「そういえばただの水って、本当は全然電気通さねぇらしいぜ。昨日漫画で読んだ。」
「へー。」
「電気をよく通すには塩水が良いんだと。」
「へー。」
「…つまり涙は電気をよく通すんだな。」
「………詩人だな、」
「試してやろうか、」
「勘弁してくれ…」







イン ザ・ダーク

ころりと僕の手に転がった紙に包まれた小さな玉。これは、と問えば、仲直りのしるし、と柔らかく笑った。かさりと音をたて紙を開くと、丑三つ時よりも深い紫。
「ブリーの実の飴ってさ、」
天井の灯りに闇を翳す。
「闇の石に似てるよね」
「そう言うと思ったよ」
闇より深い。



「でもさ、ミロカロスの鱗も綺麗だけど、やっぱり、採りたての水の石の方が、綺麗だと僕は思うな。」
「振り出しに戻ってしまうから、空気を読んでくれないか」







イン ザ・ワールド

「お前には…壁という物は無いのか、」
目の前で大きな握り飯に齧(かぶ)り付く少年に問い掛ける。少年は全ての米粒を口に含むと顔を上げ不思議そうに首を傾げた。
「壁?どこに?」
きょろきょろと首を左右に振る。
「他人との間にだ。例えば、私とお前の間に、壁を感じたことは無いのか、」
腕を組み首を傾げる少年の眉間に皺が寄り、考える仕草を見せた。
「う〜ん、オイラには見えないな〜。バリアー?ひかりのかべ?」
少年が男の前に両手を伸ばし水を掻くように軽く振る。とん、と男の胸に少年の右手が触れた。
「……」
「無いよ〜。こっちかな?」
少年が立ち上がり男の背後に回る。先程と同じように手を伸ばした時、ぽつりと男の口から言葉が零れた。
「いや…」
「?」
男は右手をそっと自分の胸の少年の手が触れた場所に添えた。
「そうだな…壁など、最初から無かったのかもしれない……」
俯き呟く男の表情は、背後に立つ少年からは見えなかった。少年はそのまま男の隣に座り込むと、自分のリュックに入れておいた弁当箱からまた大きな握り飯を取り出すと、どうぞ、と男に差し出した。
男は一瞬小さく口を開け少し驚いた表情を見せると、何処か戸惑うような素振りを見せながらもゆっくりと右手を少年の手の方へと伸ばした。










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