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(元就)




「名前、我は…」


言えぬ。

照れなにやら、
嫌な感情が溢れでる。



『なに?元就?』



あどけない笑顔と昔から変わらない大きな黒い目。
幼なじみであり、妻の名前が小首を傾げて聞き返す

毎日毎日、
我の部屋ではこんな場面が繰り返される。




名前と出会って早12年。

名前と婚姻を結んで未だ1月。



未だ伝えていないこの想い。

武具店を営み、家柄的にもそこそこ裕福だった名前には、政略結婚だと思われているであろう。



愛してるだの、好きだの、

そんな言葉を、我は囁けぬ。


“我の妻に成らねば、貴様の家の者を殺すぞ”



こんな言葉でしか、我は名前を傍に呼べなかった


こんな残虐的な言葉でしか、
名前を隣に置くことが出来なかった。



我は…

「……
最低、だな…」



そうボソリと呟くと、
傍に居た名前が此方を向く。


この純粋な娘に、
我は何て酷い申し付けをしたのだろう。

きっと我が恐ろしくて、身内の者を守る為に嫁に来たのだろう。



幼き時からの仲だったものを…



名前の視線を感じながら、ゆっくりと言葉を発する



「名前。
辛いのなら、もう家に帰ってもよい。」



“その変わり、二度と我の前に姿を現すな。”


そう言葉を付け足す。

本当は、愛してるから。
本当は、狂おしいぐらいに愛しているから。



「逃げるなら今のうちぞ。」


振り向きはしない。

次名前を見れば、


また、引き留めてしまうから



『元就。』

「…」

『ね、元就。』


名前の凛とした声が響く。
顔だけではなく、身体ごと此方を向いたのが畳を擦る音で分かる


「早く行け、
でないと我は…!!

っ…」



“我は…、”


いつも言えないこの先の言葉。



『“我は…”
なに?

いつも、元就は其処から黙るよね。』



言える訳がない。

言える訳が無いのだ。




“愛してる”

“傍に居ろ”




“そなたは、我を






どう思っておるのだ…?”








「我は…。」


『ほら、そこで止まる。

言いたくないんでしょ?
言わなくて良いよ。』


「……」


『分かるから、元就の言いたい事。
大丈夫、私は離れない…

元就の冷たい言葉は、

…えと…
…変な愛情の裏返しみたいな…?でしょ?』



“だって私、幼なじみだよ?
元就の事なら何だって知ってるよ?”


そう言って寄り添い、我の手をそっと取る名前
そんなこやつの頬に我は手を添える


「名前…」


『正直な元就なんて、
私、やだもん…

言葉なんて私はいい。
いらないよ、

でも、それでも元就がそういう言葉を言いたいなら…私は待つから。
どんなに遅くても待つから。

そしたら、一生に一回くらいなら元就だって言えるでしょ?』



そう言って微笑む名前。



“一生に一回”

そなたは、一生、
我の隣に居てくれると言うのか…?


こんな我の隣に…



名前。

こんなにも名前を愛しいと思ったのは初めて


こんなにも切なくなったのも初めてで


涙が出そうになり、
情けない顔を見られたくなくて
自分の顔を隠すように

初めて、名前を抱き締めた。



「済まぬ…名前…我の傍に居てくれるか…?」


『謝らないで、

うん。
私はずっと、居るよ…。』




ずっと、


ずっと、




この命が、尽きるまで。理解者
(想いの言葉を、ゆっくりゆっくり
少しずつ囁こう。)












―――――――*
わぁぁ…!!
なんだコレ…!!
一発目からやっちゃった感満載ですねこれ…!!
す、すみません!!
私が今まで短編で書いてきた元就さまはほぼギャグやら変態やらだったので、
真面目なしんみりしたのが書きたかったんです…

見事に沈没しましたが…(汗
これからも日々精進ですっ!!

名前様、ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました!!









6/2 山田 弥生.


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あきゅろす。
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