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 あはは、やだなぁ。変な勘違いしないで。ただの事故だよ。
 本をね、落っことしちゃって……慌てて取ろうとしたら、そのまま……。うん。すごく大切なものだったから。
 ……え? いじめがあった? なに言ってんのもう。勝手に被害妄想しないでよ。死ぬほど苦しいことなんて、私には何もなかったよ。そりゃ、嫌いな子はいたけどさぁ。

『嘘! 嘘吐き!』

 頁を捲る音が、真っ白な病室に響く。
 そうだ、本当に……、わたしには何もなかったのだろうか。
 すべてが嘘だったのだとしたら、私を救えなかったあの物語は、どこへ消えたのだろう。

『さんざん調べて回ってみたが、消えた者達の行方は、未だにはっきりしていない。俺の身体にもいい加減がたが来ている。このまま、すべてが闇のまま、終わってしまうのだろうか。まあ、それでも構いはしないが。』

『ただ――』

『今となっては、彼女の語ったすべてが真実だったことを、信じてもいい気がした。』



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