[携帯モード] [URL送信]

 
  ――終末

 幾重の旅をした。わたしは常に彼らと共にあった。
 幾重の死を見た。世界は常に滅びと共にあった。
 幾重の町が崩れた。彼らは人々の跡を巡った。
 幾重の記憶を辿った。けれども何も思い出せなかった。
 わたしは何も知らなかった。わたしは何かを知りたかった。
 わたしは郷を知らなかった。わたしは郷を探していた。
 わたしは死を恐れなかった。だから、死んでしまった。
 わたしは旅をしていた。わたしは旅を続けたかった。
 わたしは諦めたくなかった。何を? それだけが、どうしてもわからなかった。



▲  ▼