よそ様の二次創作。
F・S×見あパラ 2
 私が最初に話しかけた人と共になにやら基地らしいところへお邪魔してから、数時間。誰か女性に質素な服を貸してもらって、戦争の発端なんかを聞きながらあまり美味しくないご飯を食べた。
 とても簡単に言うとここは政府軍で敵は反乱軍なのだそうだ。増えすぎた人口を削ろうという政策が発端らしく、なんともわかりやすい構図である。あるよねそういうの、反乱とか戦争とか人口爆発とか、私も何回か目にしてきたものだ。
 私たちはなんだか偉そうな人のもとへ出向いてこう尋ねた。
「私は戦いに興味はありませんが、宿は頂けるようですので言われれば働きますよ。どんなことでも構いません、やってみましょう。というわけで何をどうすると貴女方に都合が良いでしょうか? それとも、お邪魔でしたら出ていきましょうか」
 以前のように湖底に沈んで意識のないまま一年みたいなことは今は気分でないので、ぶっちゃけるとなにか暇潰しがしたかったのだ。ついでに、ゲームも進めなくてはならない。
 その中で、多分無理だろうけれど……死ねたらいいな、と、私は起こる確率のない夢をまた見る。まったくもって、ゲーム抜きでも早く終わらないだろうか。こんな旅は。
 私の提案に対して相手方の反応はというと、どうやら戦力になりそうなので次の作戦で試しに戦ってみてほしい旨の回答が返ってきた。そういえば人殺しをたくさんするような生活は久々だな、なんて思いながら了承し、ああそれと、と付け加える。
「この国の人々は、大概どちらかの軍にいるんですよね?」
 この質問に返ってきたのは肯定である。よし、そうであるならばこの軍に関わるのも人探しには悪くないかな。すぐ見つからなくても支障はないから、のんびり付き合っていってみようか。
 ──いつもどおり、私の旅というこのゲームのルールは二つだ。どの世界でも、オリジナルでなくてもいいので“彼”を探すこと。そうすればいつかオリジナルに辿り着く筈だから。そして、いつかオリジナルを見つけ出したら、二人で殺しあうこと。それでこの旅は幕を閉じるのだから、ゲームクリアは私の心願なのだ。
 さぁ、ひとまずの取り決めはなされた。作戦はレジスタンスの無力化で、ちょうど決行は明日なんだそうな。



 そうして翌日。
「……少し大きいですね」
 敵味方の判別がしやすいようにと軍服を貸してもらったのだが、やはりというべきかサイズがなかった。動きやすさにおいてサイズは大事だと思うのだけれど、一番小さいサイズでも合わないのだから致し方なく我慢することにする。袖と裾は折ればいいよね。
 あと、汚したくないが手放したくもないため、リボンは内ポケットに突っ込んでおいた。私の故郷と思い人の形見であり、この長ったらしいゲームの証であり、せっかく今まで何万回と一緒に死に損ねてきた唯一のアイテムなのだ。非常に大切なものである。左手首に巻いていないのも久々だから、少し変な感じだ。
「高瀬さん、行くぞ」
 手首に手を当てて感慨にふけっていたら声をかけられたので、私も即座にかけ返す。10個よりか年下だろうにさん付けされたのは、怖がってるってことなのかな。私はまだ正式に味方ではないからね。
「はい。よろしくお願いしますね、皆さん」
 もうすぐ作戦が始まる。
 だから、今まで幾度となくしてきた無価値で無意味で無駄な願掛けをしようか。──どうか、どうか、死ねますように。



 はたして、私を一人で行動させてもいいのだろうか、政府軍の人たちは? もしかしたら寝返るかもしれないって考えてもおかしくなさそうなものだけれど。……いや、そこも含めて試されているのかもしれない。
 こそこそ。隠れながら歩いて現場へ向かい、到着したら仲間と合流しろとのことだったので私は特に問題もなく遂行した……けれども。部屋一つ、敵全員の無力化を任されたそこには、一人しかいなかった。正確に言うと、一人しか生きていなかった。
 ああ、と私は悟る。この様子だとおそらく私も勝てそうにない。私はただ殺しに慣れているだけで、長けているわけではないのだ。体力は普通の中学生だったころとなんら変わっていないためあとは慣れとテクニックで補うしかない私は、本当に強い人には敵わない。
 私は隠れずにその人の前に立ち、ナイフを抜くことすらなく尋ねる。
「少々お尋ねします。貴方は、海間日暮という人を知っていませんか」
「知らないね」
 吐き捨てるようでもあり単調で抑揚のない回答。
「そうですか、失礼しました。では戦いましょう」
 情報がないならもう興味はないけれど、逃げられそうにもないので、私はナイフを二本抜いて両手に握り込む。
 遅かったみたいだ。その人は既にこちらの懐に入り込んでいた。うん、やっぱり勝つのは難しいだろう。思いながら彼へ刃を向けつつ慌ててバックステップ。まぁ、慌てる必要もあまりないから、気持ちとしてはのんびりだ。刃が脇腹を掠める。
 ようし、逃げてみようか! 相手にナイフを投げつつ離れるように駆け出した。綺麗にかわされるのもわかっているから、なんとなく勿体ない。おっと、やっぱり走りも勝てはしないようだ。即座に追い付かれてしまった。でも、刺されるのは嫌だ。
 キィン。高い音が耳をつんざき、両の刃に手応えが伝わる。両手で受け止めたのは失敗だったな。隙ができてしまう。もちろん、その人が隙を見逃してくれるわけもなかった。
「……っ」
 冷たく鋭い切っ先が、私の胸の中へずぶりと沈み込んでくる。
 痛みはない。
 ああ、どうして。
 この凄まじい異物感と気持ち悪さは、もう何千回でも何万回でも味わってきたのに。慣れているのに、飽きているのに。
 また死ねなかった。この絶望感だけは、いつでも決してとめどを知らないのだ。





2015年4月6日

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