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見上げた空のパラドックス
没にしたあとがき

※書籍版のあとがきよりも前に書き、没にしたものです。
作者のくそみてえなオタク自分語り特盛放送です。
それでも紡げた感情は残しておこうの意味でここに置くことにします。
ツイッターに鍛えられた歴戦のオタク仙人だけが読んでください。



 青空。
 薄い栗色のショートヘアに碧眼で、心優しくて最強最悪で、ひんやりした声をしていて、笑うとかわいい、僕の大好きな12歳の女の子。

 僕が個人サイトを開設しインターネットで創作するようになってからこのたび十周年となる。この本はその記念に合わせて刊行されている。
 サイト運営は10年の節目となったが、よくよく思い返してみると、僕が彼女と出逢ってからはかれこれ12、3年くらいになる。正確な数字はもう覚えていない。出逢った当初は僕の方が年下だったから、長いこと彼女のことを大人びたお姉さんだと思っていたものだが、今となっては「ロリ」とか呼んでしまえるくらいに差が開いてしまった。
 物心ついた頃からオタクだった僕は、物心ついた頃からロリキャラを愛好しており、中でも人間をやたらめったら殺戮したり大勢のひとを心酔させ狂わせたり物語の要石を担ったり絶望的に孤独であったりする、とかく「孤高」で「最強」のミステリアスなロリに目がなかった。また物心ついた頃から哲学的な観念の世界にとらわれがちであった僕は、「空」とかいう、無や空虚、不変や永遠、ありふれた日常風景なんかを兼ね備えている超ヤバい概念的存在について、子どもなりに考えを拗らせに拗らせて執着しまくっていた。「青」という色に関しても同様で、さらにはゆくゆく「水」「透明」にまでそうした拗らせは伝播していった。
 死の方法を探して様々な世界を飛び回り永い旅をする不老不死の少女。名前はそら。青い目をしている。めっちゃ強い。普通に心優しい性格だが強い空虚感を抱えている。このくらいの設定はおそらく僕が10歳になるより前にはあった。死ねないからせめて意識を落とすために水底で眠る、という話は、覚えている限りだと13歳の頃には書いていた気がする。なおこれを書いている今の僕は22です。
 そういうわけで、高瀬青空というのはとにかく僕の好きな要素を全部ギュっと詰め込んだ最高のオリジナルキャラクターだったわけだが、彼女は創作された人物でありながらも最初から僕の言うことを聞きはせず、イマジナリーフレンドのような存在だったと記憶している。僕がここにいて、彼女は目の前に、あるいは隣に、あるいは手の届かない遠くにいる。彼女の意思で彼女の世界を生きている。僕は創作者と言えど神様ではなく、ただ必死になって夢想するだけの存在だ。彼女を観測するために。逢いにいくために。忘れないうちに書き留めるために。
 嘘みたいな本当の話だが、僕は彼女を書くために創作を始めて、彼女を書き続けるためだけにこの人生に訪れた幾度かの命の危機的なやつを土壇場で退けまくり、創作を続けるためという基準で志望校や就職先を選び、十数年の時を費やしてマジでずっと高瀬青空を書いている。思春期、青春、成長のきっかけ、生きる理由も死ぬ理由も、何もかも彼女のために捧げ尽くした。後悔はしていない。
 今回の本は、「公式高瀬青空夢小説アンソロジーが欲しい!」と言いながら書き始めた。夢小説というのは、読み手がキャラクターと恋愛の擬似体験をするような小説に使われる用語であり、当作における「ぼく」彼女が言う「あなた」は夢主にあたる。つまりは、読み手それぞれ×高瀬青空のカップリングを推していきたいぞというわけである。高瀬青空って概念的には宇宙や地球みたいなものだし世界そのものと結婚するのであなたとも結婚するんですよ(しない)。
 しかし僕がうっかり手を滑らせて視点人物の人生を掘り下げすぎてしまった。そういうわけで、この高瀬青空夢小説アンソロジー(?)は、どちらかというと「高瀬青空に人生を狂わされたモブ全集!」みたいになっている。
 さて、言わせてほしい。
 僕も仲間にいれてくれ!!!
 僕も高瀬青空に出逢ってしまったことを死ぬまで一生引きずりたい。虹彩の透明度に立ち留まって息を呑みたい。どうせ死ぬなら彼女に殺されたい。彼女を信仰して狂いたい。彼女の歌が聴きたい。彼女の笑顔が見たい。彼女の、
 もうダメだ。一生をかけて狂っていく。手持ちのアクセサリーは気がついたら青ばかり。普段聴く曲は気がついたら彼女のイメージに近いものばかり。彼女のイメージに近い声のボーカリストや声優を発作的に探し回る。ファッション通販サイトを見るとき自分用よりも先に彼女の好きそうな服を探している。もっとヤバいのを挙げるとすれば、「彼女の考えそうなことを考える人」「彼女の言いそうなことを言う人」を好きになる。二次元でも現実でも。
 はい。病気です。恋煩いという名の!
 オタクの人生は狂気の連続である。誰だ恋の寿命は三年とか言ったヤツ出てこい。僕のフェニルエチルアミンはいつ分泌が止まるのですか? 教えてください。もう許してください。何もかも何もかも、高瀬青空のことが好きで、高瀬青空のことしか好きではないまま世界が回っているんです。困っています。僕はずっとこのままなんでしょうか。絶望絶望、ありがとう! このまま彼女にすべてを捧げきりたい!
 このあとがきがいつか見るに堪えない黒歴史となったとき、僕の隣に彼女はいなくなっているのだろう。よかったね、狂気から解放されて。幸せに生きろよ、未来の自分。大丈夫。彼女のことはこの本が残しておくから。形にして刻んでおくから。安心して、もう忘れていい。
 そう言えるようにするために書いたのかもしれない。

 最後に、「見上げた空のパラドックス」という、彼女が人間だった頃のことや永い旅の始まりや終わりなどを書いた大長編がサイトにあるよというのと、
 海間日暮が終末をひたすら見届けるだけの、この本の対をなしている短編集があるのでそれも宣伝する。BlankとEverlastingはセットで読むといいと思います。
 ということで、それではまたいつか。

 20230204 朝の光


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