見上げた空のパラドックス
手記4
世界を形作るのが認識だとして。
そのうえで、彼女は「見ること」について天才だった。
いつも境界線にいたんだよ、と彼は語る。
彼女は、自他、生死、物質と精神、その境をまっすぐに
立って微笑んでいる。
青い目で、幸不幸も等しく透かし見て、
すべてを何かひとつの尊いものにしてしまう。
でも死にたがりなんだ。彼奴は。それも極度の。
幸せそうに絶望を語っては死に焦がれる。
そういう奴だ。
そして俺だけが彼女を殺せるんだ。
逆もまた然り。
だから約束した。いつかは忘れたけど昔に。
「殺して。」
死ぬときは一緒だって。
俺はそれが嫌でずっと。
いや、ずっとじゃあないか。
彼奴を探していることすらたびたび忘れたんだ。
何度も忘れて、忘れているうちはすごく暇で、
終末をふらふら歩いて、必ずまた思い出す。
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