世界の終わりという名の日に

風が吹いた。生暖かい。
一通り話し終えると先輩は、河川の向こう側の景色を見ていた。その表情は、憂いを表していた。
正直な話、先輩のこんな一面を見るのは初めてだった。
そのせいで今、私の隣にいる先輩が全くの別人のように見えてしまう。
今まで、そんな事考えてもいなかった。
確かに、この世界は悲しみばかりだ。
今、こうして先輩といる間にも、どこかでは人が傷つけられ、泣いているのかもしれない。
でも私は、そんな事を何とも思っていなかった。只の他人事で済ましていた。
でも先輩は違っていた。
赤の他人事なのにまるでそれが、自分の事のように悲しんでいる。
この人は、そんなふうに世界を今まで見てきたんだ。
悲しい出来事が起きる度に、先輩は何度嘆き、悲しみ、涙を流していたのだろうか。

「もし、俺が神様だったら、こんな世界は創らなかったよ。」

そう彼は寂しげに呟いた。

「じゃあ、どんな世界を創りたかったんですか?」

「そうだな。やっぱりこんな冷たい世界じゃなくて、もっと温かみのある世界だな。」

「温かみのある世界ですか?」

「そうだ。人が人を傷つけることが無くて誰も悲しまない、人と人が笑い合って生きていける世界。それなんだよ。」

先輩は空を見上げる。

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