冷たい優しさ
嗚呼、それでも君はどこまでも純粋で美しく穢れを知らなくて

この身が多くの罪を孕んでいた事を知っても

この世界が死よりも残酷だと知っても



それでも、彼女は静かに頬を染めて笑い


決してこの身を責めようとはしない。









その時、少女の苦しみを知った。


その時、少女の悲しみを知った。


誰からも愛されることなく生まれ、そして死にゆく。


全てを失った彼女にこの手を伸べたのは、偶然か、気まぐれか、それとも必然か。


目を見た瞬間にその存在に魅了された


それさえ、運命と位置付けるべきなのか


運命など、信じはしないけれど。











本来ならば触れることさえ許されぬであろうその存在


黒く、そして赤く染まったこの手


もしかしたら、彼女のあまりに白い存在に


少しでもこの手の色を薄く染めて欲しかったのかも知れない。


現に、このおぞましい黒と赤の世界に居てさえ彼女は


羨むほど、そして意識を通わせるのも躊躇われるくらいにその白さを失わないままで


それは決して己にはない


深い闇の底で繋がれるほどの罪を犯してきた己には。









彼女をこの世界に招いたとき、この身にまた一つ罪が増えたことを悟った。


あの白いベッドの上でこの世を去った方がどれだけ彼女にとって幸せだったのか


それが解らないほど愚かではないつもりだ。


彼女はあの時生きたい、と願ったか?


否、死んでも構わない、と思っていた筈


それでも鎖につながれた犬を引くように彼女の意識を呼んだ己は


いま彼女がその身に多くを背負ってこの世界で戦うように


彼女への多くの贖罪をこの背に負う。








エゴだった。


それは間違う事無き真実


けれどそれを後悔はしていない、きっとそれさえ罪なのだろう。


そしてそんな己が彼女を愛しく思うことすら罪


罰も咎も、受ける覚悟はできている。


それを受ければ、彼女を愛し続けられるというのならそれこそ喜んで。


それなのに君はこの身を責めようとはしない


いっそのことそうしてくれれば良いというのに。


それが君の、優しさだという事は解っているのだけれど。









 
 
 
 



―――冷  た  い  


  し  さ    


 
 
 
 














君が愛しい、と思う


それを聞けば君はきっと頬を赤くして戸惑うだろう


その純粋さが、己を締め付ける。





君の優し過ぎる優しさ


それはこの身にとって例えば氷のように冷たくて、輝くほど美しい


「クローム、」


抱き締めることすら叶わない


君のその姿を見ることも



「 T i   a m o 」



それが己に対する罰だと気付いたのは




何時のことだったのだろう、か。



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