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お試し期間



「テンゾウっ!」

「はいはい、どうしたんだい?」

「何もなーいよ、えへへ」

はあ、と溜め息が漏れる。
いつもいつも名前を呼んでは特に用事もなく。
振り回されるこっちの身にもなってほしいもんだ。

「テンゾウは任務?」

「いや、今日は非番だよ」

「じゃああーそぼっ」

また溜め息が零れる。

さっきから異様に絡んでくるこの子は、3年ほど前に暗部で何度かチームを組んだ事があるくらい。
特に気に入られる要素もないし一体何なんだろう。

「刹那は任務じゃないのかい?」

「んーもう終わったから暇なの」

「そう、お疲れ様、じゃあね」

「えー!ちょっと待ってよ!一緒に居酒屋でも如何ですか!!」

「んー」

どうしようかなあ。
確かにする事は忍具を手入れする事しかないけれど。

「まあいいよ、行こうか」

「わーい!テンゾウだいすきー」

はあ。3度目の溜め息。
どうしてそんな軽々しくすきとか言えるのかな?
そんな彼女に最近は惹かれつつもあったんだけど。
流石に毎日の様に好きだだのご飯行こうだの誘ってくるもんだから、それなりには関係は良好なんじゃないか。


「「かんぱーい」」

ぷはあ、生き返る〜とかおっさんか。
ペースもかなり早い。大丈夫なんだろうか。

「ねえ、ところでさ聞きたいんだけど?」

「なにをー?」
首を傾げながら僕に問う。

「なんで僕に付きまとってるの?」
それが今一番気になるところ。

「なんでって、そりゃあ...」

「そりゃあ?なんだい?」

するといきなり持ってたジョッキを一気に飲み干した。

「.....だから。」

「え?」

「す、すきだから...」

「ほ、ほんとに?」

吃驚し過ぎて声が裏返る。恥ずかしい。
しかし見てくれも良いし人付き合いもいい。
モテない訳がない。
なのにどうして僕?

「暗部の任務で何回か一緒になったでしょ、その時一目惚れしたんだよ、ね。えへへ」

「じゃあお試し期間付きで付き合おう。お互い苦じゃなければそのまま付き合っていこうよ」

なんと言う提案。

「ほんと?頑張っちゃおう!」

そしてまたグラスを手に取り飲み干す。

「飲みすぎだよ。送ってくからもう帰ろう」

そう言ってそそくさと会計を済ませて智帆の方に振り返ると寝息をたてながら気持ちよさそうに寝てる。

仕方無いか、おぶって帰るかな。



しかし困った事にこの子の家を知らない事に気付いた。
まあ恋人(仮)同士なら僕の部屋でいいか。
そして目的地まで足を運んだ。

ベッドに彼女を寝かして自分はソファで寝る。
紳士ぶった、つもり。

「テンゾウ〜こっちおいで〜えへへ」

完全な酔っ払い。

「何もしないから〜こっちこっち!」

それはきっと僕のセリフ。

まあいいか、なんて思いつつ彼女が寝ている自分のベッドに潜る。
すると後ろからぎゅーってされてそこからは理性との戦い。

「テンゾウだいすきだよー」

「はいはい、僕も好きだよ」

「なんか冷たーい、罰としてちゅーして」

この子は全く。


はいはい、と言って刹那の方に向く。
ベッドこんな狭かったっけって思う程顔が近い。

刹那の頬に手を当ててゆっくり唇を当てる。

刹那は満足そうにだいすきって言ってて。


これじゃあ、お試し期間は要らないかな。
僕も好きって気持ちがわかった気がした。


「おやすみ、刹那」

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