10 幸せの永久化(黒さま)
「みつけた」

僕がそういうと君は顔を上げて「見つかっちゃった」なんて、はにかみながらこっちを見る。
君を見つける事は、もはや僕の特技に近いんだ。
何処へ隠れていても、僕は君を見つけられる。
どんなに時が流れても、君を探すのは僕の役目なんだ。
たとえ、どんな事が起きたとしても…。
君は何かある度に……すぐにいなくなる。

嫌な事

辛い事

泣きたい事

喚きたい事

心が痛いと感じると、いつの間にかその場を飛び出している。
心に正直な君だけど、その気持ちを身体では正直に表現したくないから。
その気持ちを吐き出す場所を探して、歯を食いしばり走っていなくなる。
僕はそんな君の性格を知っているから。
一人で泣いているのを知っているから。
走って君を追いかけるんだ。

でも、君はとても足が速いから僕はすぐに君を見失う。
だけど、見えるんだ。
君の心の泣き声が、転々と地面に転がっているのが…。
君は思いのままに走るから、辿り着く場所はいつもバラバラ。
けど僕には聞こえるんだ。
君の心の叫び声が助けを求めているのを…。
まるで君と僕の間に、糸でもあるかのように。
スルスルと何の迷いもなく君の元へ辿り着く。
君はいつも小さくうずくまって声を殺して泣いているんだ…。
ある時は…桜の木の下で髪に花びらを付けながら。
ある時は…雨の公園のベンチでずぶ濡れになったまま。
ある時は…森の草村の中で枯れ葉をたんまりかぶって。
声を殺して泣き続けているんだ。
そんな君に僕は呆れながらも、意地悪く笑って。

「みつけた」

って言ってあげるんだ。
すると君は、驚いたように体を跳ね上がらせるけれど、ゆっくり顔を上げて「見つかっちゃった」ってはにかみながらこっちを見る。
真っ赤に泣き腫らした目と鼻が、僕の心にチクリと刺さり痛くて思わず泣きたくなる。
だけど、君の方がもっと痛いから。
泣くのを堪えて抱きしめるんだ。
僕が代わってあげられたら……。
僕が君になれたら、よかったのに。
だけど、君はそんな僕の心の声が聞こえるのかいつも最後はこう言うんだ。

「ありがとう」

って…。



(僕も君も、こうしている時が…一番幸せなんだ)


あきゅろす。
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