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もしもし、俺は無視ですか
お昼休み、友達とお弁当をつつきながらひたすら彼氏について語り合う。「可愛い」とか「かっこいい」とかありきたりではあるが、幸福を象徴するには十分だ。

今日も、と話しを続ける友人。友人の彼氏は、あのテニス部の人気急上昇な丸井ブン太なのである。聞いた時は本当に驚いて、奇妙な声が出てしまったのを覚えている。そんな私の彼氏も、テニス部で「コート上の詐欺師」といわれる人気沸騰中な仁王雅治なのだ。それを打ち明けた時の友人の顔は、酷かった。(つまり、お互い様。)
フ、と思い出し笑いを零してしまったら、チョップが上から下った。誰だよ、と見上げると
「そこは笑うとこじゃないだろぃ」
と犯人は、話しの中心人物である、友人の彼氏の丸井だった。私と丸井は以前から交友関係にあり、ファンも口を出さない。悪友みたいなものだ。丸井の方が友人に一目惚れだったとか。(さしてテニス部に興味が無かった友人が、付き合うことになったのはまた違うお話。)
「ねぇ、ケータイ鳴ってるよ?」
誰の?と顔を見ると友人がでぶんたといちゃいちゃしながら、七色に光る私のケータイの着信ランプを指差した。
………!!このランプは!一応、二人に「ごめん」と謝り電話に出る。
「もしもし、」
もしもし、俺は無視ですか?
ぐす、と鼻を鳴らす音がケータイからとやけにリアルに聞こえた。
「え、」
と後ろに振り向くと、教室のドアからひょっこり顔を出して赤い目と鼻になりながらこちらを見ている仁王がいた。

「早くおいでよ」
と、私が仁王の涙をカーディガンの袖でごしごし拭いて
「痛…、いたいぜよ…」
手を引いて私の席へ連れていく。仁王は初め、嫌だ嫌だと首を振っていたが、懲りたのか長いカーディガンの裾を口にあておとなしく着いて来る。
「ぐすっ」
「…仁王キモ」

丸井の本音が思わず漏れた。友人は、仁王って凄いヘタレなんだなあ…と呟いていた。私が、椅子に座ると仁王は何を思ったのか引っ付いてきた。クーラーが効いている教室であっても、引っ付かれるとさすがに暑い。
「…仁王キモ」
丸井の本音がまた零れた。ぎゅうぎゅうと仁王が抱き着きながら、
「もう無視はせんでね」

と言った。
(着信が5回もきていた。)(全部仁王からで、少しうれしくなった。)

にお∞



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