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―記念文倉庫―
10
おまけ

一旦は自分の部屋に戻った政宗だったが、気分が落ち着かなくて今度は成実の部屋へ行った。
彼は電気を消して既に眠っていて、無遠慮に政宗が明かりを付けても眼を覚まさない。
「おい、成!」と肩を揺さぶってみるが、半ば夢心地で手を払われただけだ。ムカついたので鼻をつまんでやると、ぐがががが、と苦しげに呻いた。
なのに、それでも起きない。
ふう、と息を吐いて成実の寝顔を見つめる。
良く眠っている。あどけない、無邪気な寝顔だ。起きていても余り変わりがない。
今はこのもやもやした気持ちをぶちまけたかったのだが、それは叶わなそうだ。
―――家族、だからだよな、きっと…。
小十郎はああ言ったが、どちらかと言うと挨拶より家族の愛情表現のキスに近いものか、と思っていた。いや、思い込もうとしていた。
だって小十郎のそれには嫌らしさが一つもなかったし、礼を言った直後のあれはタイミング的に見ても親愛の情だ。何より、男同士と言うのが有り得ないだろう。
政宗は、能天気に心地よい寝息を立てる成実を睨んだ。睨んだままその顔面を両手で掴む。いや顔と言うより、耳だ。そいつを引っ掴んで痛い程引っ張ってやった。
「んん―――?」
と唸った所へ、何かが唇を塞いだ。
「んんんんんんんん…?!!!!!」
ばちっと目が覚めた成実が口を塞がれたまま悲鳴を上げた。焦点が合わない程近くで、政宗の眼帯をしてない眼が睨めつけている。
手を離してやると、布団をはね除けて後ずさった。
―――これが普通の反応…だよな…。
それを確かめたら満足したのか、政宗は難しい顔をしたまま成実の部屋を出て行った。訳の分からない成実は壁に背を張り付けて、それを見送る。
―――寝込み襲われた?!俺ってやっぱり魅力的?!!!
何処か勘違いした成実は、自分が実験台にさせられたなどとは夢にも思わない。

―――やっぱり変、だよな…。
もう一度自分の部屋のベッドにごろりと横になった政宗は、まんじりともせず考える。
変、なのは小十郎だけでなく自分もだ。そんな事、分かってる。

でも、

変、ではあるが

厭、ではなかった。




20100926 Special thanks!

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あきゅろす。
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