男は数珠つなぎの彼らを少し移動させて部屋の隅、何かを掛けるフックに政宗の手錠の鎖を巻き付けた。
「You may observer it. If you want to look.(見ていたければ、見学してても良いぞ)」
何と言っているのかは分からない。だが、運命共同体の彼らにそこから逃げ出せる筈もなかった。
男は片手で政宗にナイフを押し宛ながら、もう片方の手で政宗のGパンのベルトを解きに掛かった。
文七郎らが息を呑む。
下着とともにGパンを引きずり落とし、無造作にそれを掴む。
―――なんだ、これは…。
事態の展開に思考回路が追いつかず、真っ白に固まった政宗の顔を見ながら、男のニヤニヤ笑いが深まる。
周囲にいる少年らに見せつけるようにそれを差し出してみたりする。
視界がフラッシュしたような怒りが政宗を満たした。
足を振り上げ男を蹴ろうとしたら、ナイフを持った手で横っ面を張られた。それでも懲りずに何度も何度も蹴りつけていると、苛立った男の手が政宗の太腿に容赦なくナイフを突き立てた。
大して力は込められていないが、傷口からはどくどくと血が流れ出した。
「…Give it up. there is not the come to help you.(諦めろ、助けは来ない)」
低く恫喝を呟いて、男はついでとばかりにもう一度平手打ちをくれた。
刺激にも関わらず濡れて来ない陰茎に舌打ちを一つ零し、男はそれへ自分の唾を吐きかけた。その得も言われぬ不快感。
切羽詰まって、と言うなら文七郎も佐馬助も孫兵衛も同じだった。こんな現場を目の当たりにして、何も出来ない事の悔しさ。目の前で同じ日本人が撃たれて鮮血を散らしたと言う恐怖。陰険な男の冷酷な仕打ちはしかし、彼らがかつて経験した事のない程淫靡で熱く、また邪悪そのもの。
そんな事共が少年らの思考を停止させてしまったかのように見えた。
「……い、いい加減にしろよ!」
文七郎が眼を反らしたまま叫んだ。
男は無視。
「こっ…の、変態野郎…!!」
掴み掛かろうとしたのへ、男の右手が一閃した。
「っつう!!!!!」
炎のように咲いた激痛に見やれば、手首から手の甲に掛けてぱっくりと傷口が開いていた。見る間に血が玉を結び、それが繋がりしとどに流れた。
「I may please you later, too. Wait quietly.(後でお前たちにも楽しませてやる。おとなしくしていろ)」血塗られたナイフを政宗の頬にペタペタ押し付けつつ男は言った。
その間にも政宗は追い上げられ、それを押しやろうと身を捩らせた。
痛みと、疼きと、怒りとで行き場を失った感情を乗せて、熱い息が繰り返される。更にもっともっとと男の手が忙しなく政宗のそれを扱き上げる。先走りに塗れ、ぐちゃぐちゃと立てる卑猥な音が耳朶を打つ。
声を殺す為に噛み締めていた唇がぶつ、と切れて口の中に血の味が広がった。
やがて、政宗が吐き出した精を男は指に絡めて、少年の体を壁に向けてひっくり返した。
本当の恐怖が政宗の体を強張らせる。
「やめろっっ」
誰が叫んだか分からなかったが、高校生らが三人とも男に取り縋った。
「このヤロウ…ッ、このヤロウッ!」
「わあああぁぁあああぁっ!!」
「ぶっ殺してやるっ!」
男にどんなに殴られても、ナイフで脅されても、彼らは引かなかった。
騒ぎを聞きつけて他の男たちがようやくやって来た。
その男は犯罪者のように連行されて行ったが、政宗たちに対して気遣うそぶりは一欠片も見せなかった。