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―Tell me a reason.―
Usual junior high school student.
成実にとって一つ上の従兄弟は自慢であり、憧れであり、大好きな存在だった。

Usual junior high school student.
―普通の中学生

政宗が4歳で発病した時、両親に連れられて伊達本家に見舞いに来たのが二人が出会うきっかけだった。
が、3歳の自分がそのとき何をし、どう感じたのかなど覚えていない。
普通の会社員でちょっと間抜けな所がある父と、おっとりしていながらなかなかに毒舌(それが一番始末の悪い)な母から、その時しでかした事をさんざん聞かされただけだ。
政宗の病気が感染する恐れのあるものだから病室には入れてもらえず、雨樋を伝って(病室は2階だ)窓から覗き見ていた、ベッドの上の政宗を。
そんな風に。
―――何を考えてそんな事をしたのかは、全くの謎だ。
父が梯子を持って来て無事に成実を雨樋から下ろした。そして泣きもせずケロッとして幼児が言い放ったのは、「カッコいい!」だったとか。
ベッドに寝ているだけの政宗の何処をどう見たらそんな感想が飛び出して来るのかも、今の成実自身には理解不能だ。我ながら、面白いガキんちょだったと思う。
その後、帰るのをぐずった成実が泣き疲れて眠ったのを見計らって、こっそり連れ帰った両親だったが、家に帰ったらぐずる所かヒステリーを起こし泣き喚く騒ぎになったとか。そんな我が子に困り果て、両親は最終的には輝宗に相談した。
「それなら、しばらく成実を預からせてくれませんか」
そうして、幼い従兄弟達の生活は始まった。



「伊達くん…あの…私、私と付き合ってくれませんか?!」
耳まで真っ赤にしたクラスメイトの女子から上ずった声でそう告白された政宗は、少々首を捻った。
何だろうなこの儀式は。
「…悪ぃ、別の奴と付き合ってるから俺」
特に悪いとは思っていないが、慣用句としてそう告げると「うっそ…」と絶句する女子。「誰と?!」とまで食い下がられるとは思っても見なかった少年はさすがに動揺を示したが「お前の知らない奴」とだけ応えて早々にその場を立ち去った。
「さ〜すがぁ〜、まさむーモテルゥ」
物陰から出てきた成実が、さくさくと歩く政宗の後に続いた。
「………」政宗はただ黙って肩を竦めて見せた。
成実はわかっている。
「普通」の女子が期待しているような甘い関係、楽しい時間などとは無縁だと政宗自身割り切っている事を。ついでに先刻のが嘘ではなく、本当だと言う事も。ただ、同年代の子供達が考える「付き合ってる」と言う形からは、ちょっとズレているのだけれど。
まあ同性の成実から見ても、整った顔立ちをしている政宗だ。更に冷淡そうに見えてその実細やかな気遣いも出来る彼は、それは魅力的だったろう。男女の区別なくその配慮を実に自然にこなす彼は、非常にモテた。相手の名前も知らないでナチュラルにやってるなどとは露知らず。
だが、人の注目を集めるのと同じように嫉妬も大いに集める事となった。伊達の苗字に恐れを抱く頭のある者はともかく、大人の裏社会などには目もくれない無謀そのものの連中は、彼ら(成実もだ)を袋にしようとあの手この手と仕掛けて来た。その度に政宗が機転を利かせて切り抜けたものだ。
「あぁもお!早く小十郎の奴、ボクシング教えてくんないかなぁ!!」
逃げるのに惨めな思いを抱いている成実は、その度にそう喚いた。一方政宗は、別に勝てなくてもいいと思っていた。
あんな小事、関ずらうだけ無駄だと。それに、小十郎がボクシングに強いからって喧嘩に使えるかどうかなんてわからない。―――成実には言わないけれど。
校舎裏から学校を出た二人は、駅の方向へ向かう道をダラダラと歩いた。
「な、政道が芦名ン家に養子に行くって聞いたか?」
成実は家人らから情報を拾って来るのが得意だった。身近にいる従兄弟がそうだから、政宗は特にアンテナを張ったりしない。
「ふーん」と思った通り、政宗の反応は淡白だ。
芦名は古くからある東北の名家だ。最上家に見劣りしない家柄を選んだと言う事だろう。出来れば普通の家が良かったが、決められるのは大人の特権だ。子供は何一つ選べない。だが、初めて政宗たちの前で己の思いを吐露した政道を見る限り、何処へ行っても上手くやって行けるだろう。
とりあえず、放課後のちょっとしたイベントを終えた二人は、駅周辺の繁華街をぶらぶらすることにした。


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