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無題(沖田自傷)

知っているよ、

その笑顔の裏の暗闇を。

人を傷つけた分、

自分すらも傷つけてしまう痛みを。

痛みを分けて、

抱きしめてあげるから。




「・・・・・いるんだろう」

「入って・・・・・こないで・・・・・」


何に怯えているんだろう。
怖いことなんて何も無いのに。
お前は悪い事なんて何もして無いのに。
悪いのは俺だよ、
こうなるって何処かで分かってた筈だ。


「・・・・・手当て、させろよ」

「私、どこも怪我してないです」


でも、
やめろよそんな嘘。
頼ってくれたっていいだろう。


「・・・・・ご苦労」

「・・・・・入らないで、って言ったのに」


真っ暗な部屋の隅で、総司は涙にぬれた瞳を向けた。
手には赤黒くなった短刀を握り、左腕は肘まで真っ赤に血に塗れ、畳には血が飛び散っていた。


「・・・・・傷が残っちまうぞ」

「残らないでどうするんですか・・・・・」


私が今日だって斬った人の痛みはこんなものじゃないんですよ、こんなの何ともない程の痛みなんです、私が斬ったからあの人たちの過去も未来も消えちゃったんですよ、ああ、私も、私だって消えたいよ・・・・・


「・・・・・総司」


傍まで寄って、彼の額を自分の肩に付くようにゆるく抱いてやる。


「ひ、じかたさ・・・・・」

「俺の、せいだろ?」

「・・・・・痛い、痛いよ・・・・・」

「待ってろ、手当てをすぐ・・・・・」


薬箱の中から酒と軟膏を取り出そうとすると総司は珍しくもう少しだけ、なんて普段と変わらなく言いながらぽたぽたと涙を落としていた。


「・・・・・ごめん」

「良いんです。私、こうじゃなきゃ生きていけない」


例え自分を傷つけようと、刀を使って人を斬らなければ自分は生きていけない。
貴方のためか、刀しかないのか、人を斬る快感にも似た感情に囚われた狂喜か、


「・・・・・斬らなきゃ、生きていけないもの」




fin..


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